第57話 ひろし、BBQ
ランスの騎士が警戒しながらランスを構えていると、なんとめぐが土壁を2枚並べて出現させた。
そして、黒ちゃんとめぐがその後ろに隠れてシャッフルすると、黒ちゃんが土壁の裏からランスの騎士に言った。
「どちらか、好きな土壁を突撃スキルで破壊してくれ。その裏には私かめぐさんが居る。それが君の相手だ」
するとそれを聞いたランスの騎士は神妙に質問をした。
「……という事は、土壁の向こうの相手と1対1で戦わせてもらえるという事と解釈して良いのかな?」
「うむ。2対1の戦いではこちらが有利すぎる。今日は模擬戦なうえに、めぐさんがランスの盾スキルを勉強をしたいと言っている。協力して頂けるとありがたい」
それを聞いたランスの騎士は笑顔になって答えた。
「そういう事であれば喜んで」
しかしランスの騎士は目の前の2枚の土壁を見ると、思わず小さく呟いた。
「いや……、とは言え撲殺紳士が相手なら瞬殺されるだろう……。ならば魔法剣士の女の子なら、この残りHPでもまだ勝算が……」
ランスの騎士はそこまで言うと、目の前の土壁がテレビのバラエティ番組に出てくる2択の発泡スチロールの壁のように見えてきて声を漏らした。
「これって完全にテレビで良くある、飛び込んだらどっちかが泥水で、どっちかが正解のアレだよね……。泥水が撲殺紳士で、正解が魔法剣士の女の子……。うくくく……」
ランスの騎士は眼球を揺らしながら迷ったが、腹を決めて左の土壁に突撃した。
「でやぁあ! 左の土壁だぁぁああああ!!」
ドゴォォンン!
しかし、ランスの騎士の前には全身に闘気を纏ってモーニングスターを地面の近くでグルグルしている黒ちゃんがいた。
「はぁぁぁあああ……」
「きゃぁぁぁああああ!!」
◆
その頃、アカネは男性の騎士と女性の騎士と座って話していた。
と、いうのも、男性の騎士と女性の騎士も、アスレチックエリアではどう頑張ってもアカネに一撃も与えられないのに、アカネが俊足スキルも使ってないと分かったからだった。
さらにアカネは男性の騎士と女性の騎士を足払いしたり、池から突き出している丸太の上で投げ技を繰り出したりして、男性の騎士と女性の騎士は完全に降参していた。
男性の騎士はボイスチャットを繋ぐと、砦を防衛している魔法使いに連絡した。
「今回の模擬戦は降伏しまーす」
すると女性の魔法使いは笑いながら答えた。
「はは、ごめんなさい。すでにイリューシュさんとひろしさんに砦は一瞬で占拠されちゃった。水晶はまだ破壊されてないみたい」
「あ、了解です。じゃあ、こちらで降伏しまーす」
男性の騎士はそう言うと手で何かを操作して、降伏した。
◆
その後、模擬戦があまりにも早く終わってしまったので、おじいさんたちとイークラトのメンバーは終了時間まで池のほとりで一緒にバーベキューすることにした。
男性の騎士は目をキラキラさせると、嬉しそうにイリューシュに言った。
「イリューシュさん、今日の模擬戦は最高でした! 負けても嬉しいくらいサッパリ負けました。ははは」
「ふふふ、私も楽しめました」
「僕たちさっき話してたんですけど、チームの家をピンデチに移そうかって話していて」
「あら、せっかくイークラトにお宅をお持ちになっているのにですか?」
「はい! イリューシュさんがピンデチに住んでいる意味が分かりました。この世界は案外、攻撃力とか防御力が全てじゃない世界なんじゃないかと思いまして。もしかしたらピンデチには何かあるんじゃないかって」
「そうかもしれませんね。人の幸せは敵に勝つことばかりじゃありませんものね」
「はい。そちらのアカネさんも戦ったのに笑顔で談笑してくれましたし、黒ちゃんさんもランスのあいつは倒さずに、盾のスキルを発動してもらえないかと頭を下げてくださったみたいで……」
「ふふふ。こちらの皆さんは不思議と戦った方々と仲良くなってしまうんです。カワセミさんや翠さん、ベンドレさんにルルさん、それにアーボンさんやタケチさんも」
「それは凄いですね……。でもそれこそが人柄ですよね……。そうか……、強いからって……」
男性の騎士はイリューシュの言葉に考えさせられた。
◆
その頃、東の孤島のミナモトの一団は稲作を始めていた。
ヨリトミは専務の大谷が海岸の櫓に設置した海水浄化装置から出てくる水を口に含んで頷いていた。
「うん、全く塩分は感じない。完璧な淡水だ」
するとヨリトミは一団に指示を出した。
「この水は問題ない! 試しに作っておいた水路に流す! 水門を開け!」
ザザザザザザザ……
海水浄化装置からの水が水路を通って田んぼへと流れ出るのを確認すると、ヨリトミは一旦水を止めて、みんなに言った。
「皆のもの、水路の角度も田んぼの高さも問題ない! 成功だ!!」
「「わぁぁああああ!!!」」
ミナモトの一団が喜ぶと、ヨリトミも嬉しそうにみんなに言った。
「だがこれからが本番だ! 苗は育ったか!?」
すると1人の団員が跳び出してヨリトミに言った。
「はっ! 米どころ出身の団員を集め、大谷専務が設置したハウスで元気に育っています! しかし成長がはやく……」
それを聞いたヨリトミは満面の笑顔で一団に指示を出した。
「よし! 急いで田植えだ! 全員で電動田植え機の『苗のせ台』に苗をセットするんだ! 急げ、苗も20倍で成長するぞ!」
「「はいっ!!!」」
こうしてミナモトの一団の稲作は順調に進んでいったのだった。
◆
その頃ピンデチでは、H区画の土地で花を育てていたルルが一緒にいたベンドレに話していた
「ねぇ、ベンドレ。なんか、結局みんなが持ってきてくれる花のほうがレアな花が多くて、ここで育ててる花って、あんまり売れてないわよね」
「ふむ、そうだな。最近は元メンバーのみんなが競うようにレアな花や昆虫を持ってきてくれるからな」
「まぁ、みんなもお金になるから嬉しいんだろうけど……。この土地の意味って……」
「そ、そうだな……。せっかく花を育てるために購入したが……」
するとルルは少し考え込んでから、少しだけ恥ずかしそうにベンドレに言った。
「じゃ、じゃあさ。家建てない? ……わたしたちの」
「えっ!? 家を?」
ベンドレは予想もしていなかったルルの言葉に驚くと、ルルはプンプンしながらベンドレに言った。
「な、なによ! あたしたちの家を建てるのが嫌なの!?」
「いっ! いやいやいや!! 嬉しいに決まっている!!」
「じゃ、じゃあ、この土地の花を全部回収しなさいよね! 家を建てるんだから!」
「もちろんだ、任せてくれ! うおぉぉおお!!」
ベンドレは全力で花を集めてアイテム欄に仕舞っていった。
◆
ベンドレは全ての花を仕舞い終えると、土地の端にある端末を操作して、南フランスのプロバンス風のおしゃれな一軒家を選択した。
ボンッ!
ベンドレはルルに権限を与えると、家を見たルルは満面の笑顔になりながらベンドレに言った。
「ベンドレ、おしゃれな家じゃない! 気に入ったわ!」
「お、おお。それなら良かった」
ルルとベンドレは一緒に家に入ると、1階はリビングとキッチンが一体化した広い部屋が広がっていた。
ルルは嬉しそうに回転して踊りながらリビングに入ると、満面の笑顔でベンドレに言った。
「素敵じゃない! それにこんなに広いキッチンだったらベンドレが美味しいもの作ってくれるわよね!」
「ああ、任せてくれ。私は一人暮らしが長いから、料理は少しだけ自信がある」
「うふふ、さすがベンドレ! さすがね! じゃあ、2階も行ってみようよ!」
「そうだな」
ベンドレとルルは笑顔で2階にあがると、なんと予想もしなかった光景が広がった。
2階は広々とした寝室が1部屋だけある構造で、真ん中にキングサイズのベッドが1つだけ設置されていた。
「あ、えっと」
「お、おおぉ」
2人は硬直した。




