第52話 アカネ、納得する
ナミはG区画の家の玄関先でマラツンとアカネに眷属の説明をすると、2人は納得するように言った。
「そっか! この柴犬はおやつだけでいいんだ!」
「了解っす! じゃ、おトイレも要らないっすね」
するとナミは2人に尋ねた。
「ぉ名前きめた?」
それを聞いたアカネは少し考えると柴犬をギュッつと抱きしめながら言った。
「茶太郎! 毛が茶色だから茶太郎はどう?」
わんわんわん!!
茶太郎と呼ばれた柴犬は嬉しそうに鳴いた。
しかしマラツンはウーンと悩み続けていた。
するとそれを見たナミはマラツンに言った。
「寅次郎」
「え?」
「そのこのなまぇ。寅次郎はどぅ?」
「あ、いいっすね! キジトラっすし。じゃあ寅次郎にします!」
こうしてマラツンとアカネの眷属の名前は決まったのだった。
◆
その頃、現実世界ではマユとメイが美術の授業に四苦八苦していた。
メイは筆を片手に校庭の木々を描こうとしていたが、筆が進まずに悩んでいた。
「ちょ、マユ……、絵の具で風景描くのって、まじムズくない?」
一緒にいたマユも何とか筆を進ませながら答えた。
「う、うん……。でもナミは一瞬で終わらせて合格もらってたし、わたしたちも頑張らないと」
「そ、そうだよね。でもわたし、こんなん描いてないで早くポンちゃんと遊びたいんだけど……」
「だよね。でも今日の登校日のメインは全クラス一斉の校内写生大会だから、描きあげないと単位危ないし頑張らないと……」
「うわー、そうだった。わたし単位やばいもんなー。がんばるかー」
メイはしぶしぶ校庭の木を描き始めた。
◆
その頃めぐは、いつもよりも早くログインして、マガイルー魔法学校の「魔法属性変更受付」に来ていた。
めぐは受付に行くと女性の係員に話しかけた。
「すみません、属性変更したいのですが」
「あ、はい。では、あなたの戦闘履歴を見させてくださいね」
「はい、おねがいします」
ブゥゥゥン
係員は両手を動かして何かを確認すると、笑顔になってめぐに言った。
「まぁ、ホワイト・ドラゴンを2体も! もちろん合格です!」
「あ、ありがとうございます!」
「では、次の属性は何にいたしましょうか」
「はい、土の魔法でお願いします!」
「あ、はい大地ですね」
「え、あ」
「あ、いえいえ、土で結構ですよ。みなさん通称で呼びますものね」
「あ、はい。ははは」
「じゃあ手の平を出してくださいね」
「はい」
めぐが係員に手を出すと、係員は人差し指でめぐの手の平に大地の魔法陣を描いた。
ブゥゥウウウン……
シュゥゥゥウウウ
魔法陣は光を放つと、静かにめぐの手の中に吸い込まれていった。
「はい、終了です」
「ありがとうございます!」
「次回は最後の属性『氷』になりますね。氷の属性に変更するには最高魔法を任意で発動できる杖の獲得と、S級モンスター3体、A級モンスター2体くらいの討伐が目安ですので頑張ってくださいね」
「はい、ありがとうございます!」
こうして、めぐは魔法の属性を大地に変更して魔法学校を後にした。
◆
めぐはピンデチ近くの荒野地帯へやってくると、土の魔法を試してみた。
めぐは素早く詠唱すると、土壁を連続で作り、魔法の石の礫と岩の塊を放った。
ゴゴゴゴゴゴ……
ヒュヒュヒュヒュヒュ!
ビュン! ビュン! ビュン! ビュン!
「おぉ~、土の魔法って凄いかも! 岩の塊もすごいけど、土の壁で防御もできるんだ! これって、わたしの盾スキルと合わせたら、すっごくマユを守れるかも」
するとめぐは土壁を立て続けに10枚横に並べて出現させ、さらに10枚を2重に重ねるように出現させた。
ゴゴゴゴゴゴ……
「うわっ! これってチョットした砦だよね……。土の魔法って凄いなぁ……、ってMPもう無くなってる。ははは」
めぐは魔法回復薬を出現させて飲み干すと、満面の笑顔でGに区画の家へと転移していった。
◆
めぐはG区画の家に転移してきて玄関を開けると、大熊笹はソファで昼寝をしていて、大広間ではアカネが茶太郎と遊んでいた。
それを見ためぐは嬉しそうに茶太郎の所へ走りながらアカネに言った。
「かわいいー! この柴犬ちゃん、アカネの?」
「うん! 茶太郎って名付けたんだ!」
めぐはそれを聞くと茶太郎の頭を撫でながら茶太郎に言った。
「あははは! 茶太郎くん、かわいいねー!」
茶太郎はめぐに撫でられると、めぐを見つめながら嬉しそうに尻尾を振った。
するとアカネがめぐに尋ねた。
「そういえば、スキルってゲットできた?」
それを聞いためぐはスッと立ち上がってポーズを決めると、ホワイト・ドラゴンの片手剣と盾を装備してみせた。
それを見たアカネは目を丸くしながら言った。
「え! それってホワイト・ドラゴンの装備だよな! やばっ、めぐ凄いじゃんか!!」
「ふっふっふー。とうとうわたしもホワイト・ドラゴンの装備を手に入れました! それに盾スキル全部と俊足ゲットしたよ」
「おおー! めぐ、スゲーじゃんか!」
「へへへ。でも、ゆぅさんとマユのお陰なんだけどね。ははは」
「でもスゲーよ! ホワイト・ドラゴンの装備だよ!?」
「正直言うと、自分でも驚いてるんだけどね。……って、黒ちゃんさん、居ないよね? いつもこの時間には居るのに」
「あ、黒ちゃんは大司教のクエストに行ってるよ」
「え? 黒ちゃんさん、大司教になるの? モーニングスターが使えれば良いから司教でいいって言ってたって」
「なんか、モーニングスターでも最高魔法は出せなくは無いってゴーストさんから聞いたみたいでさ」
「へぇぇ。それで大司教に」
「モーニングスターは短すぎて攻撃魔法が上手く発動できないから防御魔法しかできないって言われてるみたいなんだけど、力ずくで振り回せば発動するんじゃないかって言われたんだって」
「力ずくで振り回せば発動するんだったら、黒ちゃんさんなら発動しそうだよね」
「ははは! だよな! 黒ちゃんは脳筋だからな」
◆
その頃、黒ちゃんはゴーストとペアを組んで一瞬で大司教になるためのバトルロイヤルを制し、マガイルー魔法学校の試験にも合格して最高魔法のウィンドブッチャーを獲得していた。
しかし、イークラトの森でガックリと膝を突いていた。
「やはり、モーニングスターではウィンドブッチャーは大きくならぬか……。力一杯振り抜いても、せいぜい10個くらいの弱い真空波しか生まれぬ……。木すら倒せん……」
するとその時、黒ちゃんはピンと閃いた。
「……ならば、モーニングスターを高速に回転させて砂塵を巻き上げ、それを投げつければ例え10個ほどの真空波でも……」
黒ちゃんはウィンドブッチャーのリキャスト時間を確認すると、すでに満タンになっていて今すぐウィンドブッチャーが使える状態になっていた。
「よし。試してみよう」
黒ちゃんは高速にモーニングスターを振り始めた。




