第51話 アカネ、肋骨で投げる
朝5時、なんとアカネは朝練前に1人でルシフェルの魔城に来ていた。
「やっぱ、ゲットしたスキルを試すならラスボスのとこだよな!」
アカネは意気揚々と入口の転移ポイントから魔城のダンジョンに入ると、フラフラと3体のスケルトンのアンデッドがアカネに近づいてきた。
アカネはそう言うと、スキルの「気合」と「剛力」を発動してみた。
「まぁ、アンデッドが相手ならスキル叫んでも問題ないよな。おっし! 気合! 剛力!」
アカネがスキルを発動すると、みるみる力が湧いてくるのが感じ取れた。
「おっ! おおっ!」
アカネは少し嬉しそうに笑みをこぼすと、一気にアンデッドたちに走り込んだ。
◆
アカネはアンデッドたちをスキルで倒すとリキャストするまで転移ポイント近くで待機する事を繰り返し、結局第1階層のアンデッドを全て倒してしまった。
「確かに強かったけど、スキル使えばヤバいってほどでも無かったな。道着の襟の代わりに肋骨も掴みやすかったし。けど、もう全部倒しちゃったのかなぁ」
するとアカネは第1階層を隅々まで見て回りながら第1階層の宝箱を次々と開けていった。
「なんだよぉ。宝箱から出てくるのって武器や防具ばっかりじゃんか」
アカネは一応宝箱の武器をアイテム欄に仕舞ったが、納得いかないように呟いた。
「もうさぁ。このゲームは無職に優しくないんだよなぁ。なんかこう、無職が喜ぶようなアイテムとか出てこないのかなぁ」
するとその時、アカネの後ろから鼻息をフンフンする音が聞こえた。
「ん?」
アカネはその音に振り返ると、嬉しそうに尻尾をブンブン振っている柴犬がいた。
◆
アカネは朝練のために、いつものようにGに区画の家の道場にやって来ると、大熊笹が笑顔でアカネに言った。
「はっはっは! アカネさん、可愛いお友だちができましたなぁ」
するとアカネはハフハフしてる柴犬を抱えあげて大熊笹に言った。
「いやぁ、熊じぃ。なんかよく分からないんだけど、このコ、あたしの眷属なんだって。ははは」
「おぉお! アカネさんに眷属が!」
アカネは抱え上げた柴犬の頭を撫でると、柴犬は手足をバタバタしてアカネから飛び降りた。
そして道場を縦横無尽に走り出すと、大熊笹も嬉しそうに柴犬を追いかけた。
するとアカネが柴犬を捕まえてギュッと抱きしめると嬉しそうにお腹をワャワシャした。
「ははは! ここは道場だから走っちゃだめだよ。畳が傷んじゃうからね!」
すると柴犬は嬉しそうに尻尾を振ってアカネの顔を舐めると、大人しくアカネの横にお座りした。
そして柴犬は褒めてと言わんばかりにアカネを見上げると、アカネはそれを察して柴犬をワシャワシャした。
「お前はいいコだねー! 言ってることが解ったの?」
すると柴犬はハフハフしながらアカネを見つめてお座りを続けた。
◆
その頃、魔城の最下層に居るルシフェルは側近から柴犬が眷属になった事の報告を受けていた。
「ルシフェル様。なんと、あの柴犬も眷属になってしまいました」
「そうか。最近は良いことが続……、いや、悪いことが続くな。して、次の四天王は用意しているのだろうな?」
「はっ。次の四天王候補は……、そこそこ遊んでもらえたインコです。そのインコは主人にそこそこ可愛がられ、それなりに良い生涯を終えました」
「ふむ。それでは四天王にはなれぬな」
「し、しかしルシフェル様! 今まで四天王を欠いたことは御座いません! ここは無理にでもインコを……」
「それはならぬ! 悲しみの力こそが悪の所業を生み出すのだ! 新しい四天王候補が見つかるまでは、上層の四天王を廃止し、中層以下の3大悪魔で構成する『悪魔三傑』としてこの魔城を守るのだ!」
「はっ、ははぁ!!」
「分かったのならば、行け!」
「はっ!」
側近が逃げるようにドアを閉めて居なくなると、突然大粒の涙を流しながら声をあげた。
「ああああー! 良かったよぉぉー! 柴犬くんと全力で遊んでくれた君! 本当にありがとー!! 君を心の底から感謝するー!!」
ルシフェルはそう言って泣きながら満面の笑顔になった。
◆
その日の午前中、なんとG区画の家にキジトラの猫をかかえたマラツンがやってきていた。
コンコン
「おはようございます! ナミ一家のマラツンっす!」
ガチャ
するとアカネが玄関を開けて挨拶をした。
「あ、こんちゃっす! どうしたの?」
「あ、ええと、おれ初めて眷属できたんっすけど、エサとか、おトイレとかってどうするのか分からなくって、こっちの家の方なら知ってるかなって思って……」
「え、それこそナミさんに聞いたほうが良いんじゃないの?」
「あ、それが、今日は登校日みたいで、お昼まで来ないんですよ。えっと、それまで待ってても良かったんすけど、猫の事になると気になっちゃって」
「あぁ、そっか。ナミさん今日登校日なんだね。ってか、あたしもさっき眷属が出来てさ、実はあたしが知りたいくらいなんだよね。ははは」
その会話を聞いていた大熊笹は疑問に思ってアカネに尋ねた。
「アカネさん。たしかナミさんは高校生でしたな。最近の高校はお昼までなのですか?」
「うん。今は夏だから学校は朝6時から午前10時までだよ」
「ええっ? そうなのですか?」
「なんか昔は午後まで勉強してたんだってね。でも今は夏のお昼は毎日40度超えるから、涼しいうちに学校で勉強するんだって。それに授業の半分くらいはオンラインだしね」
「ほぉぉ、なるほど」
「だから現実世界だと柔道の練習は夜涼しくなってからだよ」
「いやぁ、世の中暑くなってしまいましたなぁ」
アカネと大熊笹がそんな事を話していると、なんとそこへナミが現れた。
「こんにちわ」
「あ、こんにちはっす!」
「ナミさん、こんちゃー」
「こんにちは、ナミさん」
するとナミはキジトラの猫に気づいてマラツンに尋ねた。
「猫、どうしたの?」
「あ、実はその事でナミさんに聞きたいことがあったんすよ! この猫ちゃん、眷属になってくれたみたいで……。でもナミさん、学校は……」
「さぃごの2時間は美術だったから、10っぷんで水彩画かぃて、先生にゎたしてかぇってきた」
「さ……、さすがナミさんっす」
するとアカネが柴犬を抱きかかえてナミに尋ねた。
「ナミさん、あたしも眷属できてさ。ナミさんに眷属のこと聞きたいんだよね」
こうしてナミは眷属について2人に教えることになった。




