第50話 茂雄、炸裂
目にも止まらぬ速さで茂雄の懐に飛び込んだタマシリに、リングの外では歓声があがった。
「「おおっ!!」」
しかし飛び込んでくるタマシリを見た茂雄は、考えがあってタマシリの攻撃をまともに食らった。
ドガッ!!
「っ!」
茂雄はタマシリのボディブローをまともに受けて吹き飛び、コーナーまで吹き飛ぶと素早く立ち上がってファイティングポーズをとった。
その時タマシリは茂雄が意図的に攻撃を受けて反転スキルで攻撃力を増加している事に気づき、冷や汗を流しながらファイティングポーズをとった。
しかし、リングの外のアカネとめぐはタマシリが茂雄を吹き飛ばした事におどろいていた。
「やば! 茂じぃが吹っ飛んだ!」
「やっぱタマシリさん、すごいんだね」
しかしイリューシュと黒ちゃんは冷静に話していた。
「きっと茂雄さんは……」
「反転スキルを試すのですね」
黒ちゃんがそう言った瞬間、茂雄は俊足スキルで飛び出した。
キュッ!
茂雄はその速さに一瞬とまどったが素早く順応して体勢を整えた。
そして伝家の宝刀の右フックを繰り出そうとしたが、なんと俊足を活かしてもう1ステップ、直角に移動するようにステップした。
キュキュッ!
タマシリはその行動に完全に翻弄され、右フックを警戒するあまりボディがガラ空きになっていた。
そして、
ズバンッ!!
「うっ」
そこへ茂雄の左ボディが捻り上げるように炸裂すると、なんとその一撃で急所を正確に抉られたタマシリは消滅してコーナーにリスポーンした。
それを見たアカネとめぐは目を丸くして驚いていた。
「やばっ! あれ、やばっ!!」
「だよね! やっぱり体に技術のある人がスキル使うと凄いね!」
そしてイリューシュと黒ちゃんも驚きながら声を漏らしていた。
「さすが茂雄さんですね……。もうあの動きはドラゴンズ・ボールですものね……」
「はい……。勝てる気がしません……」
すると茂雄はタマシリの近くまで行って笑顔で頭を下げながらお礼をした。
「タマシリさん、サンキューです。スキル、アンダースタンド」
「No、シゲオサン。ワタシモ、ベンキョウ。デモ……、めっちゃコワかったで」
タマシリがネットで覚えたカタコトの関西弁を使うと、茂雄とリングの外にいるみんなは、お茶目なタマシリに笑った。
◆
その夜、めぐはスマイル道具店のマユと、マユの師匠のゆぅと一緒に素材集めを終えていた。
マユは斬撃のスキル「俊足」「気合」「溜め」「スライディング斬り上げ」「居合抜刀」「駆け上がり脳天割り」を全て習得し、めぐは盾技スキルをすべてと「俊足」を習得していた。
その道中、マユとめぐはラーインの連絡先を交換するほど、すっかり仲良くなって片手剣の話しで盛り上がっていた。
「え? マユさん、ほんと凄いね! 爆炎タートルの亀剣なの?」
「うん。……あ、えっとさ。もう『さん』とかいいよね。マユって呼んで」
「いいの? はは、じゃあマユで!」
「うん! じゃあ、めぐね!」
「もちろんだよ!」
「そういえば、めぐの装備って何使ってるの?」
「あ、ええと、わたしのはレッドドラゴンなんだ。……って言っても、イリュシュさんとかに手伝って貰ったんだけどね。はは」
すると、それを聞いていたゆぅが、信じられない事をマユとめぐに言った。
「じゃぁ……、一緒にホワイトドラゴンを倒そう……。片手剣の素材だったら……、きっと、1回倒せば……、たりるから……」
「「ええっ!!!???」」
「ふたりは……、矛と盾。きっと、一緒に戦えば……、とっても強ぃ……」
こうしてマユとめぐはホワイトドラゴンと戦うことになった。
◆
ゆぅは、イークラトの街の入口近くで安全を確保しながら、マユとめぐにスキルを使わせてスキルの使い方を慣れさせようとしていた。
ゆぅは、マユとめぐの前に立つと攻撃力の弱い鉄の片手剣を装備して言った。
「じゃぁ、ぃきます。スキルを使いながら……、本気で……、かかって来て、ください」
「はい!」
「はい!」
「では、ぃきますね!」
ブンッ!
パァン!
ゆぅはめぐに攻撃をすると、めぐはプラチナ・パリィのスキルでゆぅの攻撃をパリィ(盾で敵の攻撃を跳ね返す技術)した。
すると、ゆぅは俊足スキルを使って突然マユに襲いかかった。
しかしそれを見ためぐは、マユを守るために俊足スキルで同時に動くと、スキルのシールドアッパーを発動させてゆぅを狙った。
ズザッ!!
めぐのシールドアッパーを見たゆぅは、舞を踊るように空へ逃れると、めぐは悔しそうに声を漏らした。
「やっぱり、ダメか!」
しかし、めぐは諦めずに「不動の盾」を発動して、少しだけ笑みを見せながらマユに言った。
「マユ! わたしを踏み台にしてスキルを発動して! 跳べるよね!」
それを聞いたマユは即座に理解して、俊足で走り出した。
「わかった! まかせて!」
そして、めぐを踏み台にしてスキルの「駆け上がり脳天割り」を発動すると、一瞬にしてゆぅの頭上へと飛び出した。
その様子を見たゆぅは嬉しくなって笑みをこぼすと、小さく呟いた。
「ぅん……。すばらしい……。ほんとうに……。でも」
ゆぅはそう言うと、左腕の小さな盾を構えて頭上から迫るマユに備えた。
そして、
「やぁあああ!」
パァン!!
ゆぅはマユの「駆け上がり脳天割り」を軽々とパリィで弾き返すと、なんとめぐの盾に着地してステップし、そのまま落下していくマユを狙ってステップしていった。
しかし、めぐはまだ使用時間が残っていた「俊足」と「シールドバッシュ」を同時に発動すると、ゆぅの背後から盾で迫り、ゆぅを盾で吹き飛ばすことに成功した。
ドガン!!
「ふふ……」
吹き飛ばされたゆぅは、片手で側転しながら距離を取ると、満面の笑顔になってマユとめぐに言った。
「マユさん……、めぐさん……。素晴らしぃ……、連携でした……」
「えっ!?!?」
「ええっっ!?」
「吹き飛ばされたなんて……。ははは」
ゆぅは嬉しそうに笑ったが、マユとめぐは少し困惑していた。
◆
そして夜が明ける頃、マユとめぐはゆぅの力を借りながら攻守連携してホワイトドラゴンを2体倒し、マユとめぐは夢にまで見たホワイトドラゴンの片手剣と盾を手に入れたのだった。
マユとめぐはベイリゲンの鍛冶屋の前で両手を握って握手をしながら笑顔で語り合っていた。
「マユ! きょうは本当にありがとうね。ほんとに頼もしかったし楽しかった!」
「ううん! めぐが居なかったら脳天割りとか無理だったし! それに魔法も!」
「あ、ははは。わたし、元々魔法使いだったからさ」
「わたし驚いたよ! めぐ、魔法剣士だったんだね」
「ってもさぁ、なんちゃって魔法剣士なんだけどね」
「でも、火の魔法でホワイトドラゴンを翻弄したし」
「あれは何て言うか、たまたまっていうか。ははは」
「でも凄いよ! ほんと尊敬って感じだったよ!!」
マユとめぐはお互いの実力を認めて笑顔で話していると、ゆぅが申し訳なさそうに2人に言った。
「ぁのぅ……。ご……、ごめんなさぃ……。でも……、もぅ、朝の5時で……」
それを聞いたマユとめぐは驚いた。
「えっ! やばっ!」
「ご、ごめんなさい」
こうしてマユとめぐは、ゆぅのサポートで必要なスキルを解放し、ホワイトドラゴンの片手剣と盾も手に入れたのだった。




