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第49話 ひろし、400

「グオォォオオオオ!!!」


 サイクロプスが黒ちゃんの所へ走り込んでくると、黒ちゃんはモーニングスターを装備した。


 そして黒い大司教の美しいローブに装備が変更されると、モーニングスターをクルクルと回しながら軽やかに舞った。


 フワッ……


 その時、黒ちゃんの頭の中にはショパンのピアノ曲「幻想即興曲」が流れた。


 黒ちゃんは低く回転しながらサイクロプスを翻弄するように舞い続けると、サイクロプスはどこに攻撃して良いか分からずに大きな木槌を振り回した。


 ブンブンブンブン!!


 しかし黒ちゃんは美しく舞って全ての攻撃をかわすと大熊笹やアカネ、そしておじいさんの位置を確認して、素早くサイクロプスの背後から足を叩きつけた。


「おおぉぉおおりゃぁああ!!」

 ドゴン!!


「グオォォオオオオ!」

 ドシャァアアア!


 サイクロプスは黒ちゃんの攻撃を受けて思わず転倒すると、それを見た大熊笹とアカネは慌てて業炎の壺を投げつけた。


「今ですな!!」

「だね!!」


 シュッ、ボワッ!

 シュッ、ボワッ!


「グオォォ!」


 大熊笹とアカネが業炎の壺を投げつけると、サイクロプスはHPを減らしながらも起き上がり、大熊笹とアカネに襲いかかろうとした。


 それを見たおじいさんは慌ててスキルを発動した。


「あ、これはまずいです! ご! 剛力!!」


 おじいさんが剛力スキルを発動すると、おじいさんの体にぐんぐんと力が湧いてくるのを感じた。


「おぉ、これは……」


 おじいさんは手に出現させていた火薬玉を握りしめて投球フォームに入ると、渾身の力を込めて火薬玉をサイクロプスへと投げつけた。


 チュン……

 バゴォォオオオオオオ!!!


 なんと、おじいさんの火薬玉は時速400kmを超えてサイクロプスに直撃し、大爆発を起こして一撃でサイクロプスを消滅させた。


「おおっ!」

「うわっ!」


 その光景を間近で見た大熊笹とアカネが驚きの声をあげると、おじいさんは驚きのあまり、小さく声を漏らした。


「こ……、これは……」


 そしてその様子を見ていた黒ちゃんも驚きのあまり声を漏らしていた。


「ひろしさんの火薬玉、もはや消える魔球だったな……。いったい、どのくらいのダメージが出ていたのだろうか……」


 こうして黒ちゃんのサポートの元、おじいさん、大熊笹、アカネは必要なだけのサイクロプスの素材を集め、全員が3つ全てのスキルを獲得したのだった。


 ◆


 おじいさんたちはG区画の家に帰ってくると、アカネはソファに横になりながら金剛体スキルの解説を読んでいた。


 ーーーーーーーーーー

 金剛体とは、敵の致命的な攻撃を1度だけ無効にするスキル。リキャスト7日間。

 ーーーーーーーーーーー


「ふぅん。って事は敵がどんなに強い攻撃してきても1回は助かるんだな。でもさすがにリキャストは7日間かぁ。ここぞって時に使う感じだな」


 アカネは感心したように呟くと、気になっていた事を黒ちゃんに尋ねた。


「なぁ黒ちゃん、今まで戦ったプレイヤーもスキル使う人が居たはずだよね? でもスキル名を叫んでる人って、あんま見たこと無いんだけど」


「それなんだが、スキルの発動は1度発動した感覚を覚えれば、イメージするだけで発動できるようになるのだ。攻撃前にスキル名を叫んでは、敵に攻撃がバレてしまうからな」


「ははは、たしかに! じゃあさぁ、今までもあたしが気づかなかっただけで結構みんなスキル使ってたりしたんだな」


「そうだな。イリューシュさんは『精密射撃』や『ドラゴンステップ』、ベンドレさんは『居合抜刀』や『兜割り』、美咲さんは『俊足』をよく使っているようだ。私も剣に炎を纏わせたときは『属性攻撃強化』を使っていろぞ」


「そっか、知らなかったなぁ~」


 すると大広間に居ためぐがやって来てアカネに聞いた。


「ねぇアカネ。スキル、ゲットできた?」


「もちろん! 3つ全部ゲットしたよ!」


「え? 3つしかないの?」


「なんか無職って3つしか無いんだって。ってか、めぐはいくつあるの?」


「わたしは片手剣だから、斬撃6、盾技6、属性4の16個だよ」


「うわ、片手剣って16個もあるの? すごいなぁ。で、めぐは何個習得できたの?」


「まだ1個も。でもイリューシュさんの紹介でスマイル道具店のマユさんと一緒に、お師匠さんのゆぅさんが手伝ってくれるって言ってくださってさ。今からちょっと楽しみなんだよね」


「へぇぇ。やっぱ片手剣のスキルって言ったらカッコいい攻撃とか?」


「ううん。わたしは盾技をコンプしたいんだよね。最初が『シールドバッシュ』で、次が『シールド・アッパー』、で『パリィ』、『グレート・パリィ』、『プラチナ・パリィ』って続いて、最後が『不動の盾』」


「ははは、やっぱめぐは防御なんだね」


「そりゃそうだよ。そもそも近くで戦うのが怖いから魔法使いになったんだもん。あ、でも斬撃スキルの『俊足』だけはゲットしたいかな。危なかったらスグ逃げられそうだし」


「ははは、確かに俊足ならソッコー逃げられそうだね!」


「でしょ! やっぱ安心って大事だよ」


「そうだよなー。さっき無職のスキル見てたら金剛体ってあってさ。1回だけ敵の攻撃を無効にできるんだって。なんかそれ読んだら、なんていうのかなぁ、安心感的な? なんかそういう感じはしたんだよね」


「でしょ! やっぱ守られるって安心だよ」


「だね。今ならチョットだけ、めぐの気持ちがわかるよ」


 めぐとアカネが話していると、なんとタマシリと茂雄がG区画の家にやって来た。


「Hi everyone! (こんにちは、みんな!)」

「ただいま戻りました」


「お、タマちゃん!」

「おかえりなさい!」


 タマシリと茂雄に気づいたG区画のメンバーたちは大広間にやって来て挨拶を交わすと、タマシリはイリューシュに笑顔で尋ねた。


「Iryushu, can I use the fighting ring in the garden? (イリューシュ、庭のリングを使っても良いかい?)」


「Of course, feel free to use it. (もちろんです。ご自由に使ってくださいね)」


「Thank you as always, Iryushu. (いつもありがとうイリューシュ)」


「No problem. Enjoy. (いえいえ。楽しんでくださいね)」


 イリューシュがそう言うと、タマシリと茂雄は庭のリングへと向った。


 するとアカネがイリューシュに尋ねた。


「イリューシュさん、タマちゃんなんて言ってたんすか?」


「庭のリングを使いたいみたいで……。もしかしたら茂雄さんがスキルを習得して、リングで試してみるのかしら」


 イリューシュがそう言うとアカネは目をキラキラとさせながら庭に飛び出していった。


「スキルをゲットした茂じぃとタマちゃんの戦いなんて見逃せないよ!」


 するとそれを聞いたみんなも嬉しそうに庭のリングへと向った。


 ◆


 タマシリと茂雄がリングにあがると、タマシリはスマホを手に出現させてスマホにタイ語で話した。


 そして笑顔でスマホを茂雄に向けると、タマシリの言葉は日本語に翻訳されて話された。


「茂雄さん、スキルの『俊足』『鉄壁』『気合』『反転』を試してみましょう」


 それを聞いた茂雄はタマシリに答えた。


「はい、やってみます。ええと……、『俊足』はステップの速さを加速、『鉄壁』は防御力を強化、『気合』は攻撃力と防御力も強化、『反転』は受けたダメージを攻撃力に変換する……、で良かったでしょうか」


 するとその時、イリューシュがリングの近くにやって来て茂雄の言葉をタマシリに翻訳して伝えた。


 するとタマシリは満面の笑顔になって親指を立てて答えた。


「Ok, ok! シゲオサン、ソノトオリ、デスネ!」


 するとタマシリは翻訳してもらうようにイリューシュに言った。


 イリューシュはタマシリの言葉を聞くと、それを茂雄に伝えた。


「茂雄さん、スキルを全て使ってみてくださいって言っています。体験したほうが早いみたいですね。スキルは、最初は大きな声でスキル名を言えば発動します」


「なるほど、分かりました。やってみます」


 茂雄はそう言うと、ファイティングポーズを取ってスキルを発動した。


「俊足、鉄壁、気合、反転!」


 すると茂雄は体に力が湧いてくるのを感じた。


「おぉ……」


 その様子を見たタマシリもファイティングポーズを取ると、茂雄に言った。


「ボクモ、スキル、ツカウ。イキマス!」


 タマシリはそう言うと、俊足のスキルを使って一瞬にして茂雄の懐に入り込んだ。

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