第48話 ひろし、スキルを獲得する
マラツンたちは入口の転移ポイントで魔城から離脱し、キジトラの猫を連れてナミ一家の拠点へと戻ると、マラツンは猫を膝の上に乗せて撫でながら後輩たちに言った。
「いや……、あの……、なんだ……。魔城で最初に出会ったこの猫があの攻撃力だ……。あの魔城、相当やばいんじゃないか……?」
「そうっすね……。怖いっす」
「もし眷属にならなかったら」
「完全に全滅していましたよ」
「そうだよな……。やっぱ、おれらってヘタレなんだな……」
「はいっす……」
「ですよね……」
「違いないっす」
「ちょっとレッドドラゴンの装備とか手に入れて強くなった気でいたけど、やっぱヘタレは謙虚に動かないとな……。ナミさんにもご迷惑がかかるし……」
「はい」
「ですね」
「そうすね」
マラツンたちは最初に出会ったキジトラの猫が堕天使ルシフェルによって生み出された悪魔四天王だったとは知らずに、ガッツリ自己肯定感を下げたのだった。
◆
その頃、魔城の最下層に居るルシフェルは側近からキジトラの猫が眷属になった事の報告を受けていた。
「ルシフェル様。あのキジトラの猫も眷属になってしまいました」
「そうか。しかし、あのような条件をクリアするとは中々の手練だな。して、次の四天王は用意しているのだろうな?」
「はっ。次の四天王候補は散歩をしてもらえなかった柴犬です。この柴犬は主人と一緒に駆け回りたかったのですが、なかなか散歩してもらえずに生涯を終えました」
「そうか、素質には問題ないようだな。あとは、このルシフェルに任せよ。その柴犬に慈悲をかけてやろう」
「はっ! では失礼致します!」
報告を受けたルシフェルは、報告をしにきた側近がドアを閉めて居なくなると、突然大粒の涙を流しながら声をあげた。
「ああああー! 良かったよぉぉー! だが、誰なんだ! 誰が襲いかかってくる獰猛な猫に鶏肉を与たんだ!! おれはお前が全く理解不能だが、お前を心の底から感謝するっ!!」
ルシフェルがそう言うと、ゲームのメインサーバーからのメッセージが目の前に表示された。
『次の四天王、柴犬は、レッド・ドラゴンを上回る爪攻撃と噛みつき攻撃。そして、眷属にするには柴犬が疲れて動けなくなるまでプレイヤーが一緒に走り回ること。散歩してもらえなかった悲しみに由来する』
「……あぁ。また今回も無理難題を……。一体だれが柴犬が疲れて動けなくなるまで一緒に走り回るのか……」
ルシフェルは大きくため息をつくと、ガックリと頭を下げて途方に暮れた。
◆
その頃、おじいさんと大熊笹、そしてアカネは黒ちゃんに連れられてイークラトの街の近くのフィールドに来ていた。
黒ちゃんはおじいさんたちにスキルの使い方を教えに来ていたのだった。
「みなさん、アイテム欄のアイコンの近くに『スキル』アイコンが出来ていると思うので押してみてください」
「ええと……、あ、はい! これですね」
「ほほう」
「あ、これか!」
おじいさんが「スキル」のアイコンを押すと、スキルツリーが表示された。
[気合]ーー[剛力]ーー[金剛体]
「黒ちゃんさん、ええと左から……、気合、剛力、金剛体の3つが表示されました。気合だけが明るくなっています」
それを聞いた黒ちゃんは少し驚きながら答えた。
「な、なんと! 無職はスキルが3つしかないのですね」
するとそれを聞いたアカネが黒ちゃんに言った。
「ってか、両手剣ってスキルいくつあるの?」
「うむ。両手剣は斬撃6つに属性4つの10個だ」
「うわ、けっこうあるんだなぁ」
「確か片手剣はもっと多いと聞いたぞ。それに例えば片手剣のスキルも、技術さえあれば両手剣で使うこともできる。ベンドレさんは両手剣で片手剣のスキル『居合抜刀』を決めるからな」
「へぇぇ、スキルも職業とか持つ武器で色々あるんだね」
アカネもそう言いながら「スキル」アイコンを押してみると、アカネの目の前にもスキルツリーが現れた。
すると黒ちゃんはおじいさんに言った。
「では、まずはサイクロプスの素材を持っている、ひろしさん。光っている気合を押してみてください」
「はい」
おじいさんが「気合」を押すと、説明文が現れた。
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気合とは、30秒間攻撃力と物理防御力、魔法防御力を25%引き上げるスキル。リキャスト180秒。
■習得する■
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それを見たおじいさんは「リキャスト」という言葉が分からず黒ちゃんに尋ねた。
「あの、りきゃすと180秒……、と書いてあるのですが、これは……?」
「あ、それは一度スキルを使った後に、再び使えるまでの秒数です。なので、気合スキルを使うと、その後3分は気合スキルが使えないという事になります」
「あぁ、なるほど!」
「ひろしさん、説明文の下に『習得する』と書いてありますか?」
「あ、はい」
「では、それを押してスキルを習得してください」
「わかりました」
おじいさんは「習得する」を押して「気合」を習得した。
すると「気合」アイコンは「習得済み」と判が押され、「剛力」のスキルアイコンが明るくなった。
それを見たおじいさんは黒ちゃんに言った。
「ありがとうございます。気合は習得済みになりました。つぎは「剛力」が明るくなっています」
「おお! という事は素材が足りているということですね。では同じように『剛力』も習得してしまいましょう」
「はい、やってみます」
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剛力とは、10秒間、体のあらゆる力を3倍に引き上げるスキル。リキャスト600秒。
■習得する■
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おじいさんは同じように操作して「剛力」スキルを習得した。
するとその時、アカネが黒ちゃんに言った。
「黒ちゃん、あれだよなサイクロプス!」
アカネがそう言って遠くの魔物を指差すと、それを見た黒ちゃんはモーニングスターを装備して答えた。
「おお、その通りだな。さすがアカネだ」
黒ちゃんはサイクロプスを確認すると、振り返って大熊笹とおじいさんに言った。
「サイクロプスが現れました。素材集めに移行しましょう。私がみなさん全員がスキルを全て手に入れるまでサポート致します」
「ありがとうございます」
「宜しくお願いします」
こうしてサイクロプスの討伐が始まった。
◆
黒ちゃんはサイクロプスに向って先頭を走りながら大熊笹とアカネに言った。
「大熊笹先生! アカネ! 作戦通り、業炎の壺の用意を!」
「わかりました!」
「おっけー!」
大熊笹とアカネは両手に業炎の壺を出現させた。
「ひろしさん! ひろしさんは剛力スキルを試してみましょう! 私がサイクロプスに先制攻撃して足止めした後、大熊笹先生とアカネが業炎の壺で攻撃しますので、そのあと剛力スキルで火薬玉を投げつけてください」
「あ、は、はい! しかし、スキルを使うには……」
「最初にスキルを使うには、スキル名を大きな声で言えば発動できます!」
「わ、わかりました! やってみます!」
ダダダダダダダダ……
その時、サイクロプスは走り込んでくる黒ちゃんたちに気づくと、大きな木槌を振り上げて黒ちゃんの元へと走り込んできた。




