第47話 マラツン、挑む
メイとナミとマユはポンちゃんを連れてG区画の海岸に行く途中、メイはナミに気になっていた事を聞いた。
「ナミ、えっとさ、ポンちゃんって何食べるの?」
「ぅぅん。眷属はテイムしたコたちと違って食べなくても大丈夫」
「えっ!? そうなの?」
「ぅん。だってドラちゃんも猫ちゃんも、食べてないでしょ?」
「……? あ、確かにそうかも! でもお菓子とか食べてない?」
「ぅん。でもそれはオマケ」
「おまけ?」
「ぅん。ゎたしのウサちゃんに聞いた。眷属は食べなくても寿命まで死なないんだって。でも眷属は誰かに倒されちゃぅと、記憶が消えちゃぅから、きをつけて」
「え? そうなの? じゃぁ、わたしかポンちゃんをシッカリ守らないと」
「ぅん。でも眷属も、主人のぉもいやりで強くなるみたぃ」
「そ、そっか。でも現実世界でもワンちゃんとか猫ちゃんに愛情注いてたら、懐いてくれるもんね」
「ぅん。だから、ポンちゃんはメイが優しくしてくれたから信頼してる。きっと強くなる」
「……え? ほんとに?」
「ぅん。ポンちゃんはメイが大好き」
するとメイはポンちゃんの頭を優しく撫でて、おでこをポンちゃんのおでこに当てながら言った。
「ポンちゃーん、ほんとに、わたしが好きなのー?」
するとポンちゃんは尻尾を振りながらメイの頬を舐めて嬉しそうにした。
「はふはふはふ!! わんわん!!」
ポンちゃんはメイにギュッと抱きしめられると、嬉しそうにメイを見つめた。
◆
その頃、ナミ一家のメンバーになったマラツンたちは、なんと4人で魔城の入口に来ていた。
マラツンはレッドドラゴンの装備を手で撫でながらみんなに言った。
「おれらも、ナミさんたちのお陰で憧れのレッドドラゴンの装備を着て、夢にまで見た魔城まで来ることができたな……。うっ……、ううっ……」
マラツンはそこまで言うと思わず涙ぐんだが、大きく深呼吸をして話を続けた。
「はぁ〜、ふぅ〜。……今日この魔城に来た理由は分かっているな!?」
「はい、事前に調査して」
「ナミさんにご迷惑を!」
「かけないためです!!」
「そう、その通りだ!! 我らはナミ一家! ボスのナミさんが魔城攻略のサポートしてくれると言っていただいたが、手下のおれたちが足を引っ張るわけにはいかない!!」
「「はいっ!!」」
「いいか! 言っておくが、戦闘は避けるんだ! 敵に会ったらコソコソしろ! おれらはレッドドラゴンの装備とはいえ、ハイレベルな敵との戦闘経験が無さすぎる!」
「「はいっ! コソコソします!」」
「よしっ! では今日は第1階層を隅々まで探索するぞ!」
「「おおー!!」」
マラツンたちは気合をいれて入口の転移ポイントから魔城に入ると、すぐ目の前に一匹のキジトラの猫がいた。
それを見たサソリは首をかしげながらマラツンに言った。
「先輩。猫っすね」
「……ああ。キジトラの猫だな」
しかしマラツンがそう言った瞬間、
シャァァアァアアアア!
ズバッ!!
なんとその猫はサソリに飛びかかり、サソリのHPを一気に奪った。
「うわわわ! HPが半分以下に!!」
それを聞いたマラツンは驚きながら慌ててベヒーモスを召喚してサソリに言った。
「サソリ! とりあえず回復薬飲め! ここはおれのベヒーモスで時間稼ぎを……」
しかしマラツンがそう言った時にはマラツンの目の前にメッセージが表示されていた。
「ベヒーモスの残りHPが10%を切りました。ベヒーモスを帰還させます」
「ええええっっ!!!」
マラツンが慌てていると、キジトラの猫は牙をむき出しにしながらジワジワと距離を詰めてきた。
その様子を見たマラツンは後輩たちに言った。
「だ、だめだ、この魔城はまずい! あの猫には勝てねぇ! 転移ポイントまで逃げるぞ!」
しかしそれを聞いたマムシがマラツンに言った。
「先輩、あの攻撃力と機動力じゃ転移ポイントまで逃げ切れるとは思えません!」
「じゃ、じゃあどうすれば……」
するとそれを聞いていたツックンがマラツンに言った。
「な、なにかエサになりそうなものを投げて、気を引いているうちに逃げるのは!」
マラツンはそれを聞くと目を輝かせて答えた。
「そ、それだ! ちょうどコーシャタで買ったケンタッキー・フライトチキンがある!」
マラツンはケンタッキー・フライトチキンを手に出現させると、キジトラの猫の動きが止まった。
マラツンはそれを見て急いでチキンの表面を剥ぎ取りながら呟いた。
「キール(胸肉)なら猫にもぴったりだ。だが、味の濃い外側は猫に食べさせられねぇからな」
マラツンはそう言いながら肉の中身を取り出してほぐしていると、それを見ていたサソリが焦りながらマラツンに言った。
「せ、先輩! 何やってるんですか! 急がないと……」
しかしマラツンは肉をほぐしながら答えた。
「このチキンの外側は猫にはしょっぱすぎるからな! おれは猫好きだから、たとえ敵でもそこは譲れねぇ! それに骨なんか入ってたら大変だ!」
マラツンはそういうと、丁寧にほぐした胸肉をキジトラの猫へ投げつけた。
するとキジトラの猫は穏やかな表情になり、胸肉をクンクンと嗅ぐと、パクっと一口食べた。
それを見たマラツンは後輩たちに言った。
「上手くいった! 逃げるぞ!!」
「「はいっ!!」」
マラツンたちが転移ポイントに猛ダッシュをすると、マラツンの目の前にメッセージが表示された。
「サブクエスト『商店街のアイドル』をクリアしました。キジトラが眷属になりました。このキジトラは特定の主人を持ちたいと思いながらも、コーシャタ商店街のアイドル地域猫として生涯を終えました」
「眷属!? このおれに眷属が……?」
そのメッセージを見たマラツンは突然立ち止まると、ツーっと涙を流して振り返った。
すると視線の先には美しい姿でお座りしているキジトラの猫がいた。
その姿を見たマラツンは涙を拭きながらキジトラの猫に歩み寄っていった。
「そうか。お前は、主人が欲しかったんだな……。じゃあ安心してくれよ。こんなおれで申し訳ないけど、おれが主人になるからさ」
マラツンがそう言ってキジトラの猫に近づいていくと、後輩たちは驚いてマラツンに言った。
「マラツンさん!」
「危ないっすよ!」
「逃げましょう!」
「大丈夫だ、ちょっと待っていてくれ」
マラツンはそう言ってキジトラの猫を抱えあげると、キジトラの猫はゴロゴロと喉を鳴らした。
そしてマラツンは優しくキジトラの猫を撫でると、嬉しそうに笑顔を漏らしてキジトラの猫を抱きしめながら言った。
「こんなヘタレな主人でごめんな。でも一生お前を甘やかしてやるからな。へへ……。お前こそ、おれに愛想つかすなよ」
マラツンがそう言うとキジトラの猫はマラツンの頬をやさしく舐めた。




