第46話 ルシフェル、再び慈悲をかける
カマキリを倒したポンちゃんは嬉しそうにメイに駆け寄ってきた。
「わんわんわん!!」
それを見たメイはしゃがんで笑顔になると、両手を広げながらポンちゃんを迎えた。
「ポンちゃん、すごいねぇー!! びっくりしたよー!」
するとポンちゃんは嬉しそうにメイに飛び込むと、突然、メイの首に噛みついた。
カプッ
アーボンはポンちゃんがメイに噛みついたのを見ると慌てて剣を抜いた。
「やばいメイちゃん! その犬、やっぱり悪魔四天王だ! 眷属のふりしてたんだ!」
しかしメイはポンちゃんの頭を撫でながら優しくポンちゃんに言った。
「ははは。ダメでしょー、ポンちゃん。急に噛んだりして、どうしたのー?」
するとその時、メイの目の前にメッセージが現れた。
「あなたの優しい行いによって、悪魔四天王ポメラニアンのリミットが解除されました。悪魔四天王ポメラニアンが吸収したHPとMPを回収するできるようになりました」
「え? HPとMPを回収……?」
メイはそう呟くと、なんと少し減っていたメイのHPとMPがグングンと回復していった。
「え、やば! わたしのHPとMP、どんどん回復してくんだけど!」
そしてメイのHPとMPが満タンになると、ポンちゃんは嬉しそうに尻尾を振りながらメイの顔を舐めた。
「わんわん!」
「あははは、いいコだねー、ポンちゃーん! HPとMP回復してくれんだねー! ありがとねー!」
メイがポンちゃんの頭を撫でて喜んでいると、それを見ていたアーボンは驚きながら声を漏らした。
「おいおいおい! その犬が吸収したHPとMPを回復に回せるのか? そりゃ完全にチートだろ……。メイちゃん、ヤバい犬を手に入れたなぁ」
こうしてアーボンとメイは無事に堕天の杖を手に入れて、スマイル道具店へと帰っていった。
◆
アーボンとメイはスマイル道具店に帰ってくると、店番をしていたマユとナミがポンちゃんを見つけてカンターから飛び出し、メイに抱っこされているポンちゃんの頭を撫でた。
「ははは、可愛い」
「ぃぃこ、ぃぃこ」
するとメイが嬉しそうにナミとマユに言った。
「可愛いでしょ! そのコは、ポンちゃんって名前にしたの!」
「はは、ポンちゃん!」
「ぅん。ポンちゃん!」
アーボンはみんながポンちゃんを抱えあげて遊んでいる姿を見て、念のために、みんなに言った。
「その犬、そんな感じだけど、元々は悪魔四天王でさぁ……」
アーボンがそこまで言うと、ナミが眼光鋭くアーボンに言った。
「その……、ぃぬ?」
それに驚いたアーボンは驚愕しながら答えた。
「えっ!? ナ、ナミちゃん……、何かヤバい事、言った?」
「アーボン、『その犬……』はダメ。このコはポンちゃん」
「あっ! あぁっ! そ、そういう事でしたか! ごめんなさいナミちゃん! ポンちゃん!」
アーボンは直角に頭を下げると、ナミは諭すように言った。
「わんちゃんも、立派な家族。アーボンは反省するべき」
「はっ! ははぁ!!」
アーボンはナミにひれ伏してナミが言っている事を理解し、過去、自分が雇ったプレイヤーたちをペット以下に扱っていた事を深く反省したのだった。
◆
メイはマユとナミがスマイル道具店の勤務時間を終えると、マユとナミと一緒にポンちゃんを遊ばせにG区画の海岸に向かっていた。
しかし、ポンちゃんは立ち止まってしまった。
それに気づいたメイはポンちゃんに言った。
「どうしたのポンちゃん?」
しかしナミは鋭い洞察力でメイに言った。
「ポンちゃんは、疲れちゃった」
それを聞いたメイはピンと来てナミに言った。
「あ、そっか! ポンちゃん、わたしたちが一歩進むのに、何歩も歩かなきゃいけないもんね」
「ぅん。ポンちゃんは足が長くなぃから、たくさん歩かなきゃだめ」
「そっか、そうだよね!」
するとメイはポンちゃんを抱きかかえてナミと一緒に歩き始めた。
「ポンちゃん、ごめんねー。大変だったねー」
メイはポンちゃんの頭を撫でると、ポンちゃんは嬉しそうに尻尾を振った。
するとナミは思いついて、メイに風呂敷を送信した。
「メイ、これつかって」
「え? なに? 風呂敷?」
「ぅん。出現させて」
「うん、分かった」
メイはナミから送信された風呂敷を出現されると、ナミはそれを受け取ってスルスルとポンちゃんがスッポリ入る抱っこ紐を作り上げた。
そして、ポンちゃんを風呂敷に優しく入れると、それをメイの肩からかけた。
メイの胸の前で風呂敷に包まれたポンちゃんは嬉しそうにメイに鳴いた。
「わんわんわん!」
メイは可愛く吠えるポンちゃんの頭を優しく撫でると、嬉しそうにナミに言った。
「ありがとうナミ! なんか、子供をだっこしてるみたいで嬉しい!」
「メイ、とっても似合ってる。ポンちゃんも嬉しそぅ」
「ほんと? ほんとにありがとうね、ナミ!」
メイはそう言うと、ポンちゃんをギュッと抱きしめた。
◆
その頃、堕天使ルシフェルは魔城の最下層で四天王が眷属になった事の報告を受けていた。
「ルシフェル様。四天王のポメラニアンがプレイヤーの眷属になりました」
それを聞いたルシフェルは表情も変えずに答えた。
「そうか。次の四天王は用意できているのだろうな?」
「はっ! 次の四天王は地域ネコのキジトラです。彼は特定の主人を持ちたいと思いながらも、コーシャタ商店街のアイドルとして生涯を終えました」
「そうか、素質には問題ないようだな。あとは、このルシフェルに任せよ。そのネコに慈悲をかけてやろう」
「はっ! では失礼致します!」
報告を受けたルシフェルは、報告をしにきた側近がドアを閉めて居なくなると、突然大粒の涙を流しながら声をあげた。
「あぁぁあ! 良かった! 良かったよぉ!! ポメラニアンちゃん、大変だったもんな! 主人になってくれるプレイヤーに巡り会えたんだねー!!」
ルシフェルは両手の袖で涙を拭うと、少し冷静になりながら声を漏らした。
「本当に良かったよ……。ポメラニアンちゃんは1時間も一緒に遊んでくれるプレイヤーにしか眷属になれないんだもの。本当に心配だったよ!」
するとその時、ルシフェルの目の前にメインサーバーからのメッセージが現れた。
『次の四天王キジトラは、レッド・ドラゴンを上回る爪攻撃と噛みつき攻撃。そして、眷属にするには鶏肉を与える事。記憶に残る焼き鳥屋の店主が与えた鶏肉に由来する』
「……あぁ。また、その様な無理難題を……。一体だれが襲いかかってくるネコに鶏肉を差し出すのか……」
ルシフェルは大きくため息をつくと、ガックリと頭を下げて途方に暮れた。




