第45話 メイ、わしゃわしゃする
ルシフェルの魔城のダンジョンを進むアーボンとメイは、順調に1階層のスケルトンを倒しながら2階層へと進むと、メイが少し不審に思ってアーボンに聞いた。
「ねぇ、アーボンさん。なんか、このダンジョンって他のプレイヤー居なくない?」
「え? ああ、そうだな。たしかこの魔城は一緒に入ったプレイヤーごとに魔城用のサーバーに割り振られるから、他のプレイヤーには会わない仕組みだぜ」
「え? んと? サバ?」
「そうだなぁ。例えば、もし今ナミちゃんがこの魔城に入っても、同じ魔城なんだけど会わないんだよ。無限に魔城のコピーが存在してて、だいたい同じ時間に一緒に入ったプレイヤー専用の魔城になるんだ」
「へぇぇ。じゃあ、この魔城はアーボンさんとわたし専用の魔城なの?」
「そうだね。時間がだいぶ経ったから、もう他の人は入ってこないはずだよ」
「あぁ〜、なんか分かったかも。とりあえず一緒に入った友だちは同じ魔城に居て……。じゃあさ、友だちと一緒にスタートしたかったら、先に進んでる友だちが居ても、同じ転移ポイントを選んでもらえばいいって事?」
「さっすがメイちゃん! 正解!!」
「え、やった!」
「この魔城の攻略はイリューシュさんや黒ちゃんさんがサポートしてくれると思うんだけど、イリューシュさんや黒ちゃんさんは同行するメンバーの転移ポイントに出現してくれるはずだよ」
「あぁ〜、めっちゃ理解した! ありがとねアーボンさん、めっちゃ解りやすかった」
「い、いやいや、ははは」
アーボンが嬉しそうに照れ笑いすると、メイがダンジョンの先に何か居ることに気づいてアーボンに言った。
「アーボンさん、なんか居る」
「ええっ?」
アーボンは目を凝らして前を見てみると、モコモコでふわふわのポメラニアンが、まん丸になってお座りしていた。
それを見たメイとアボーンは思わず声をあげた。
「やばっ! かわいい〜〜!!」
「やばいっ! 悪魔四天王だ!」
「「ええええっ!?」」
アーボンとメイはお互いに驚くと、アーボンはメイを守るように挑発の盾を構えた。
それを見たポメラニアンはパタパタと尻尾を振ると、メイは状況が理解できずにアーボンに聞いた。
「ちょっ、アーボンさん! あのポメラニアンって悪魔なの?」
「ああ。あいつは上層階を担当する四天王でさ、四天王は担当する階層を巡回してるんだよ」
しかしメイは嬉しそうに尻尾をパタパタ振っているポメラニアンを見ると、良く分からなくなってアーボンに言った。
「でも、めっちゃフレンドリーそうなんだけど……」
「ああ、おれも最初はそう思ったけど、近づくとメッチャしつこく戯れて来てさ、さすがに痺れを切らしてシッシッって突っぱねると、豹変して首に噛みついてくるんだよ。それで吸血してHPとMPをガンガン減らすんだぜ?」
「え、じゃあさ、シッシしなきゃ良いんじゃなくて? なんなら一緒に先に行けば良くない?」
「ええっ!?」
「ちょっと遊んできてもいい?」
「……お、おお。まぁ急ぐクエストでもないからな。おれは気にしないで好きなだけ遊んじゃって。その犬が疲れるまで遊んだらどうなるかも見てみたいし」
「ほんとに! じゃあ遠慮なく」
メイはそう言うと、アーボンの前に出てポメラニアンに近づいていった。
ポメラニアンは嬉しそうにメイに走っていくと、メイは優しく抱えあげてモフモフのポメラニアンに顔をうずめた。
「あははは! きみ、かわいいねー!!」
「くんくんくん、わんわん!」
ポメラニアンは嬉しそうにすると、手足をパタパタさせて下ろしてもらおうとした。
メイはその様子を見てポメラニアンを床に下ろすと、ポメラニアンは元気に走り回りながらメイと遊びたがった。
その様子を見ていたアーボンは思わず声を漏らした。
「そう……、そうなんだよな……。最初はあの犬と追いかけっことかするんだけど、そのうち疲れてシッシッってやっちゃうんだよ……」
しかしメイは嬉しそうにポメラニアンと追いかけっこをしながら、防御魔法陣で道を塞いだり、捕まえてお腹をワシャワシャしたりして遊び続けた。
◆
そして1時間後。
アーボンがウトウトしていると、メイが驚きながらアーボンに言った。
「ちょっ、アーボンさん! このポメちゃん、眷属になったって!」
それを聞いたアーボンは驚いて声をあげた。
「ええっ、まじか!? 悪魔四天王が!?」
「うん。えっと、なんだっけ……。なんか、ご主人様に遊んでもらえなかったポメちゃんがルシフェルの慈悲で四天王になったって書いてあったよ」
「……え? 堕天使のルシフェルに慈悲なんかあるのか?」
するとメイは抱きかかえたポメラニアンを優しく撫でながらアーボンに言った。
「でもその人って元は天使だったんでしょ? だったら本当は優しいんじゃないかな」
「……うーん。ラズボスが優しいか……? そんな事あるのかなぁ」
アーボンは釈然としなかったが、メイと眷属になったポメラニアンと一緒に第2階層を進んでいった。
◆
ポメラニアンは嬉しそうにメイの顔を見上げながら横を歩いて進んでいくと、その様子を見たアーボンがメイに尋ねた。
「メイちゃん。その犬、とりあえず眷属になってくれたから安全だけどさ、名前って付けてあげた?」
「え? あ、そっか。名前をつけてあげなきゃね。どうしよっかなぁ……」
メイは手をあごに当てながら考えると、ハッと閃いて言った。
「ポンちゃん! ポンちゃんはどうかな?」
「わんわん!」
ポンちゃんという言葉を聞いたポメラニアンは嬉しそうにメイに返事をした。
◆
その後、アーボンとメイは第2階層も無難に攻略し、ついに堕天の杖がある第3階層に辿り着いた。
そして、堕天の杖のある部屋の扉の前までやって来ると、アーボンがメイに言った。
「この部屋に杖があるんだけど、中にはちょっとしたボスが居てさ。雷魔法を放つ黒いカマキリなんだけど、とりあえずおれが挑発の盾で前に出るから、後ろから風魔法でよろしく」
「う、うん、わかった!」
「じゃあ、扉をあげるぞ」
「うん!」
アーボンが扉を開けると、なんとポンちゃんが一番乗りで部屋の中へと走っていった。
テテテテテテテテテ……
「あ、あの犬!」
「ポンちゃん!」
ポンちゃんは尻尾をパタパタと振りながら黒いカマキリに走り込むと、黒いカマキリはポンちゃんを倒そうと両手の鎌で攻撃してきた。
ジャキィン、ジャキィン!
しかしポンちゃんは嬉しそうに鎌の攻撃をよけながらカマキリの体を駆け上がると、一瞬だけ目を赤く輝かせてカマキリの首に噛みついた。
カプッ。
チュウゥ……、チュウゥ……、チュウゥ……。
ポンちゃんはカマキリのHPとMPを吸い取り始めた。
ポンちゃんに噛みつかれたカマキリはポンちゃんを振り払おうと大きく体を揺すったが、その動きは次第に鈍くなり、最終的にカマキリは消滅していった。




