第43話 ひろし、握手する
おじいさんたちが湖の上で紅茶を楽しんでいる頃、アカネと黒ちゃんは、アスレチックの近くにある池でカヌーの勝負をしていた。
「ぬおおおおおお!!」
「おりゃぁあああ!!」
黒ちゃんとアカネは必死の形相でカヌーを走らせると、大きく差をつけて黒ちゃんが先にゴールした。
黒ちゃんはカヌーを止めて振り返ると、遅れて到着してガッカリしているアカネに言った。
「アカネ。これはどう見ても私に有利な勝負だ。落ち込むな」
「えぇぇぇ。でも、どんな勝負でも負ければ悔しいじゃんか」
「はっはっは、さすがはアカネだ! だが、私はいつでもアカネを助けるつもりでいる。だからそれは、この体力をアカネが手に入れたのも同然という事だ」
「……う、うん?」
「簡単に言えば、私の力はアカネのための物だという事だ。お前が力で勝てないならば私が力で倒そう。お前が力で勝てないと思った時は私を使えば良い。そうだろう?」
それを聞いたアカネは少し顔を赤くしながら答えた。
「お、おぅ。なんだよ、今日は黒ちゃん、ちょっとだけカッコいいじゃんか」
「アカネは無職で武器が持てないから、どうしても力でゴリ押しされたり、巨大な相手となれば弱点も出る。そこは私が力でゴリ押し返してお前を守る。簡単な理屈だ」
黒ちゃんは少し照れながらそう言うと、アカネは満面の笑顔になって黒ちゃんに言った。
「ありがとう黒ちゃん! やっぱ、脳筋って最高だな! 黒ちゃんはそのまま何にも考えない脳筋を極めてくれよな!!」
アカネがそう言うと、黒ちゃんは褒められたのかディスられたのか分からなかったが、アカネが満面の笑顔で言っているので良しとした。
◆
その頃、アーボンたちの指揮官になった清も1人で森の島を偵察していた。
「なるほど……。あの湖は騒音で警告が出ると……。となれば、我らは誰1人として戦えない……。これはアーボンさんの交渉にお願いするしかありませんな」
清は視線を移してジップラインとアスレチック、そして近くの池を見るとウンウンと頷きながら呟いた。
「そしてアスレチックエリアは足場が心もとない……。しかしタケチさんであれば戦えるかもしれない……。そして我らと敵の砦の予定地は……」
清は目の前にブラウザを開いて攻略サイトを閲覧すると、納得するように頷いて声を漏らした。
「我らは湖のほとり、敵はアスレチック横の池のほとりになりそうですね」
清はAIを使ってデータを集約すると、池のほとりへと向った。
◆
清は池のほとりへと急ぐと、なんとそこで、おじいさんたちがバーベキューをしていた。
清はおじいさんに気づくと深々と頭を下げながらおじいさんたちに言った。
「あ、ひろしんさん! 先日ハーイムのクエストでお世話になりました清です! 覚えていらっしゃいますでしょうか!」
それを聞いたおじいさんは笑顔で答えた。
「これはこれは! もちろん覚えておりますとも!」
おじいさんと清はお互いに駆け寄って握手を交わすと、それを見ていたアカネがおじいさんに尋ねた。
「じぃちゃん、その人お友だち?」
「あ、はい。こちらは清さんです。一緒にハーイムのクエストに行きまして。つむぎちゃんもお世話になっているんです」
「あ、そうなんだ! 清さん、あたしアカネだよ。よろしくね!」
「ありがとうございます、アカネさん。こちらこそ宜しくお願いします!」
こうして清はおじいさんたちのメンバーと挨拶を交わすと、アーボンのチームに参加していることや、バトルイベントでゴーストと対戦することを話した。
するとイリューシュは少し気にかかって清に尋ねた。
「清さん、森の島のバトルイベントは5人での対戦ですが、今のアーボンさんのチームはナミさん一家にマラツンさんたちが移動して……」
「はい、そうなのです。現在チームは人数不足なのですが、アーボンさんが交渉してくださっていまして」
◆
その頃アーボン、タケチ、ハデスは、アーボンの家の2階にある「ナミ一家」の拠点に上がろうとしたナミに土下座をしていた。
「ぇ、なに?」
ナミが少し驚くとアーボンは床に頭を擦り付けながらナミに言った。
「ナミ様!! どうか、どうかこの虫けらのような私たちにお力をお貸しくださいませ!!」
「ぇ?」
「来週、森の島バトルイベントに参加するのですが、どうしても湖の戦いができる者がおりません!! どうか、弓のメンバーとして参加して頂けませんでしょうか!!」
「ぁ、それしってる。湖だと音がだせなぃ」
「はぃぃい!! その通りで御座います!! 我らはガサツでウルサイ戦いしか出来ませんので、どうか、どうか、ナミ様のお力をぉぉぉ!!!」
「ぅん、ぃいよ。午後はぁぃてる」
ナミが承諾すると、アーボンたちは満面の笑顔でナミに言った。
「ありがとうございますぅぅうう!!」
「お願いします、ナミさん!!」
「私のせいですみません」
ハデスが最後に謝ると、それを聞いたナミは不思議に思ってハデスに聞いた。
「ハデス、なんでぁやまるの?」
「はっ。今回のバトルの勝者アイテムが闇属性を吸収するアイテムでして、もし、そのアイテムをレベルが高いプレイヤーが使えば私は倒されてしまいます」
「そぅ。それは怖ぃね。アーボン、だからバトルに勝ってハデスを守りたぃの?」
「はぃぃいい!! こちらの事情で申し訳ございません!! ですが、あのアイテムは1つしか存在しない超レア・アイテムです!! ですので今回はどうしてもぉぉおお!!!」
それを聞いたナミは少しだけ笑みを漏らすとアーボンに言った。
「ゎかった。ゃるき出た。でもアーボン、ひとつ条件がぁる。タダで依頼ぅけたらナミ一家の威厳にかかわる」
「もちろんでございます!! ナミ一家の顔に泥を塗るなどありえません!! なんなりとお申し付けくださいませ!!」
◆
10分後、アーボン、タケチ、ハデスは、フンドシ姿で船の上にいた。
アーボンは両腕を組むと、タケチとハデスに言った。
「いいかー!! ここは座標442.90から451.27のエリアだ!! 分かっていると思うが、ここは本マグロの釣り場だぁ!!」
「「押忍!!!!」」
「ナミさんは本マグロをご所望だぁ!! 今回は最強の電動リールと最高級の釣り竿を用意した!! 本マグロを釣り上げるまで帰らないぞぉ!!」
「「押忍!!!!」」
「覚悟を決めろぉぉ!!!」
「「押忍!!!!」」
こうしてアーボンたちの戦いが幕を開けた。




