第41話 清、機転を利かす
敵のプレイヤーたちが一斉に襲いかかってくると、タケチが飛び出して次々と敵のプレイヤーたちにダメージを与えていった。
そして後に続くようにハデスも走り込み、紫に輝く鎌で敵プレイヤーたちを圧倒していった。
タケチはハデスに並ぶと少し笑いながらハデスに言った。
「ハデス……。敵は全員が毒を無効にする防具を着ているね」
「はい。全体攻撃のできる私の毒の雨を警戒しているようです」
「ふふっ、それに僕の片手剣とは相性の悪い重装備ばかり」
「ですね。敵は闇属性の対策もしているようです。しかし」
「うん。面白くなってきたね」
「はい」
タケチとハデスはそう言うと、敵のプレイヤーたちに斬り込んだ。
◆
その頃、横から回り込んできた敵のプレイヤーたちはアーボンに向かって一直線に突っ込んできた。
それを見た清は岩の杖を掲げて詠唱し、一気に5枚の土壁を作り出して敵プレイヤーたちを阻んだ。
ゴゴゴゴゴゴゴ!
「ちっ、土壁か! 邪魔だ!!」
ドゴン!!
しかし敵のプレイヤーは剣を薙ぎ払って土壁を叩き崩すと、その瞬間、
ドスッ!
「えっ……?」
アーボンが敵のプレイヤーを突き刺してHPをゼロにしていた。
「く……、くそう……、さすがはアーボン……、頭おかしい攻撃力じゃねぇか……」
シュゥゥゥウウ……
敵のプレイヤーは消滅したが、次の瞬間、他の敵のプレイヤーたちが一斉にアーボンに襲いかかってきた。
「うわわわわ!」
アーボンは慌てて剣を振り回したが、それを見た清は土の魔法の小呪文を唱えて、石の礫を飛ばし、正確に敵プレイヤーたちの顔に当てていった。
ドドッ! ドッ! ドドドッ!
「うわっ!」
「うっ!!」
「なんだ!」
敵のプレイヤーたちが一瞬怯むと、その隙を見逃さなかったアーボンは次々とトドメを刺していった。
「清さん、ナイス!!!」
ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ!
「ギャッ!」
「うわっ!」
「やべっ!」
「ちょっ!」
「まじか!」
アーボンは次々と敵のプレイヤーたちを消滅させていったが、横からランスのスキル「突撃」を使って敵のプレイヤーがアーボンに突進してきた。
「突撃スキルは土壁じゃ防げねぇ!! 死ねぇぇぇええ!!」
しかし清は冷静に距離を目測すると、なんと土壁を5枚、ランスのプレイヤーのすぐ前から時間差で出現させた。
ゴゴゴゴゴゴ!!
「なにぃ!!」
その土壁は階段のように地面からせり上がり、しかしランスのプレイヤーは突撃の勢いは止められずに階段を駆け上った。
「うわぁぁああああ!!!」
階段を駆け上ったプレイヤーは勢いよく空中へと飛び出すと、アーボンは野球のフライ球をキャッチするかのように剣を上に向けてランスのプレイヤーの落下を待った。
「オーライ! オーライ! おし!」
ドスッ!
落ちてきたランスのプレイヤーは落下してアーボンの剣に刺さると、悔しそうに消滅していった。
「く……、くそぅ……」
「ふぅぅ……。こっちは片付いたか……」
アーボンはそう言ってタケチとハデスのほうを確認すると、タケチとハデスも敵のプレイヤーたちを全滅させていて、笑顔でアーボンに頷いた。
◆
アーボンたちは敵のプレイヤーたちを一掃し、船に乗ってG区画の海岸へと向かっていた。
アーボンは船の上で満面の笑顔になりながら清の活躍をタケチとハデスに話していた。
「でさ、なんていっても最後の5枚の土壁がヤバくてな! 5枚の土壁が時間差で地面から現れて階段みたいになってさ、敵のランスが止まれなくて、その階段を駆け上がったんだよ!」
「ええっ!」
「おお!!」
「そしてらランスのやつ、そのまま空中に飛び出しちゃってさ! あとは、おれが剣でトドメを刺したんだよ! すげえだろ、清さんの土魔法!!」
「凄いですね!」
「素晴らしい!」
タケチとハデスが手をたたきながら清を称賛すると、清は照れながらも嬉しそうに声を漏らした。
「い、いえ、私はただ必死だっただけでして……。ははは」
するとアーボンが嬉しそうに清に言った。
「そこで思いついたんだけどさ。清さん、ぜひウチのチームのリーダーになってくれないかなぁ。おれたちがどう逆立ちしたってあんな戦法なんか思いつかないし、石の礫も正確で、おれが立ち回りやすいように近い敵から当ててくれてた」
「ええっ!? いえ、あの……、その……」
「それに、おれらが戦ってる時も、タケチを後ろから刺そうとしたヤツに石の礫当ててくれてたよね」
「あ……、ええと、はい……」
「それに、隠れてた敵が弓でハデスを狙った時も土壁で防いでくれたし。あの矢は光属性でヤバかったんですよ」
「……さすがはアーボンさん。見ていたのですね」
それを聞いたタケチとハデスは驚きを隠せずに表情に出した。
するとアーボンは笑顔で清に言った。
「あの戦いは清さんが居なかったらヤバかったんですよ。それに清さん、ぜんぜんビビってなかったし」
「あ、ははは。それは年の功といいますか……」
「タケチもハデスも強いけど、おれも含めて全体を見ることは苦手で……。清さんみたいに全体を見れる指揮官が居たらウチらはもっと強くなるんじゃないかと思って。ははは」
「い、いえ、そんな……。私のような駆け出しのような者がそのような……」
「清さん……。一撃は弱いけど機動力のあるタケチ、強力な闇属性が扱えるけど対策をされると弱いハデス、一撃で敵を倒せるけど剣が当たらないおれ」
「え、ええと……、それは」
「清さんだったら、おれたちをどう使ってくれるかなって思ってさ」
「……」
清は考え込んで静かになってしまうと、アーボンは清の手を取りながら言った。
「とりあえず、お試しって事でリーダーになってくれないかなぁ。お試しだったらダメでも気兼ね無く出来るでしょ?」
「そ……、そういう事でしたら……」
「じゃ、決まりで!! タケチもハデスも良いよな!?」
「はい!」
「御意!」
こうして清はアーボンたちのチームのリーダーになったのだった。
◆
清はアーボンの家の前でアーボンたちと別かれると、坂を登ってピンデチふれあい苑へと向かった。
その途中、清は笑みをこぼしながら空を見上げ、思わず声を漏らした。
「あんなに格上の皆さんが、こんなにも弱い老人ゲーマーをリーダーにしてくださるだなんて……。でも明日から頑張らなくては。お試しとはいえ、指揮官としてお役に立ちたいですからな。ははは」
清はアーボンたちの特性と戦闘の相性をあれこれ考えながら嬉しそうにピンデチふれあい苑へと向かった。




