第40話 アーボン、からまれる
清が洞窟を抜けてマガイルーに足を踏み入れると、なんとアーボンとハデス、そしてタケチが迎えてくれた。
「清さんおめでとう!」
「さすがです、清殿!」
「やりましたね清さん」
「アーボンさん、ハデスさん、タケチさん!」
清が驚いているとアーボンはクリアのお祝いに、持っていた「岩の魔法の杖」を「捨てる」を選択して地面に置いた。
それを見た清は驚きながらアーボンに言った。
「こ、これは岩の魔法の杖!」
「お祝いって事で。清さん、土魔法だから岩の杖だったら強化されるじゃん? 『捨てる』を選択して置いたんで所有権が無いからゲットしてください。岩の杖は鍛冶屋が解放されてないプレイヤーの最強レベルなんで」
「そ、それはそうなのですが、岩の杖は強敵が集まるエストンレルトの洞窟群でしか……」
「えっと……。この間、後輩たちとエストンレルトの洞窟に行ってて、ドロップの岩の武器とか防具とか集まりすぎちゃって……。だから受け取ってくれると助かります。おれら使えないんで。ははは」
「そ、そうでしたか! それでは、ありがたく頂戴します!」
アーボンがそう言うと清は嬉しそうに岩の魔法の杖を拾い上げて手に持ってみた。
◆
清とアーボンたちはモービルでマガイルーの町までやって来ると、町に入ってマガイルーの魔法アイテムショップに入った。
すると清はそこにある沢山の魔法アイテムに目を輝かせながら思わず声を漏らした。
「土魔法を強化する土偶の首飾りに、ランダムにMPを消費しないで魔法が使える聖女の腕輪……、それに岩攻撃の個数を増やせるモアイの指輪まで……!」
それを聞いたアーボンは嬉しそうにタケチに言った。
「清さん、嬉しそうだな」
「はい、そのようですね」
清は店の隅々まで見て回ると、アゴに手を当てて考え込んだ。
「ふむむ……。全てのアイテムが魅力的ですが、価格的に買えるとすれば1つだけ……。やはりここはモアイの指輪か……。いや、聖女の腕輪も捨てがたい……」
すると困っている清の様子を見ていたアーボンが清に話しかけた。
「清さん、どうしたんです?」
「あ、いや、ははは。どれを買おうか迷ってしまいまして。さすがに高額ですので……」
「どれで迷ってるんですか?」
「実は、土偶の首飾りと聖女の腕輪、それにモアイの指輪と迷っていまして……。あとは、いざと言う時のために毒消しと麻痺止めも買っておこうかと……」
アーボンは清の言葉を聞くと、それぞれの金額を見渡しながら清にプクナを送信した。
「清さん、全部で8000プクナくらいなんで、良かったら全部買っちゃってください」
アーボンから8000プクナを贈られた清は慌ててながら答えた。
「いえいえいえ、アーボンさん! さすがにこれは頂けません! 今お返ししますから!」
しかしアーボンは笑顔で答えた。
「実は、おれら魔法使いと初めて組むんで楽しみなんですよ。とくに土の魔法使いは防御と攻撃ができるじゃないですか。ウチは近接と攻撃魔法のハデスしか居ないんで、清さんが居てくれると助かるはずなんですよ」
「いや……、しかし……、私くらいの魔法防御力で作る土壁など、アーボンさんレベルのプレイヤーが攻撃すれば一撃で……」
「それ! それなんですよ清さん! おれはゲームが下手なんで、敵を少しでも足止めできれば勝算があるんです。だから、敵が土壁で足止め出来ると助かるんですよ!」
「そ、そうなのでしょうか……、ですが、そう言って頂けると……」
「なんで、今回は全部買っちゃってください! 清さんはウチの貴重な戦力なんですから!」
アーボンがそう言って笑顔になると、清は満面の笑顔になって少しだけ涙ぐみながらアーボンに頭を下げた。
◆
清とアーボンたちはマガイルーで買い物を終えると、スマイル道具店へのお土産に魔法陣せんべいを大量に購入した。
そしてモービルでシャームの港へ向っていると、なんと沢山のモービルが並走してきた。
それを見たアーボンは並走しているモービルのプレイヤーたちを見て、みんなに言った。
「みんな、ごめん……。あいつらだ。マガイルーで見つかっちまったみたいだな」
それを聞いた清はアーボンに尋ねた。
「アーボンさん。あの車の方たちは敵なのでしょうか」
「いやぁ、すいません。あいつらは、おれが調子に乗ってた時に金で雇ってたヤツらで。おれが急に雇うのを止めちゃったから、恨まれてて……。ははは」
アーボンがそう言うと、並走していたモービルたちはアーボンのモービルの前に出て道を塞いた。
するとアーボンはモービルを止めて清に言った。
「清さん、『ピン飛びの羽』を送信したんで、戦闘になる前にピンデチに戻ってください」
しかし清は岩の杖を手に出現させると、真剣な表情でアーボンに言った。
「アーボンさん。私はアーボンさんたちと戦います」
「い、いや清さん。あいつら、結構強いんで……」
「アーボンさん。それほど強い敵との戦いならば、こんな老いぼれの1人が即死したところで何の影響もありません。ぜひ体験させて頂けませんか? アーボンさんたちのレベルの戦いを!」
「でも、倒されたら痛い思いを……」
「そのくらい、勉強代と考えても安いものです! 私は……、私はアーボンさんのパーティの一員として、1秒でも一緒に戦いたいのです!!」
清の言葉を聞いた、アーボン、タケチ、ハデスは感動して清に答えた。
「戦いましょう、清さん!」
「一緒に頑張りましょう!」
「清殿、感動いたしました」
こうして、アーボンたちはモービルの敵たちと全員で戦うことになった。
◆
アーボンたちはモービルから降りるとタケチを先頭にひし形の陣形を整えて、清はモービルを背に最後列で岩の杖を構えた。
すると敵のリーダー的存在のようなプレイヤーがアーボンに声をあげた。
「おい、アーボン! お前が急に契約を切ったせいで、こっちは迷惑してんだよ! 憂さ晴らしさせてもらうからな!」
それを聞いたアーボンは特大剣を手に出現させながら答えた。
「ってか、最後の契約分はキッチリ払ったし、契約は一ヶ月ごとだったろ?」
「う、うるさい! なにしろ、お前ががムカつくんだよ! 死ね!!」
敵のリーダー的存在のようなプレイヤーがそう言うと、50人ほどの近接武器プレイヤーたちが一斉に襲いかかってきた。




