第39話 ひろし、清と話す
G区画の海岸に戻ってきたおじいさんは、ピンデチふれあい苑のご高齢者のみなさんに手を振って別れ、G区画の家へと帰ろうとすると清がおじいさんに話しかけてきた。
「ひろしさん、どうか私にその強さの秘訣を教えて頂けませんか!」
「あ、え、いえ、ええと……。わたしはただ、助けて頂いているだけでして……」
おじいさんが困っていると、清は直角に頭を下げながらおじいさんに言った。
「私はファムコンの魔物村の頃からゲームばかりやっていて、ゲームには自信がありました。しかし歳を重ねるにつれ反射神経や判断力が落ち、敵に倒されてばかりで……」
するとおじいさんは同情するように答えた。
「ははは、そうですね。我々くらいになると、思ってもすぐには体は動きませんから。ははは」
「はい、おっしゃる通りで……。私は土の魔法使いで、このゲームの事も攻略本で完全に理解しているのですが、戦闘となると判断が鈍ってしまって……」
「そうでしたか……。ですが、メインクエストの第2章をクリアしただなんて素晴らしいと思います、清さん」
「いやいやいや……。さんざん逃げ回るボスのゴンゴビを何度も逃がしながら、なんとかかんとか……。ですが、そう言って頂けると救われます。ははは」
するとその時、偶然G区画を訪ねようとしていたアーボンが通りかかっておじいさんに挨拶をした。
「あ! こんばんは、ひろしさん」
「あ、アーボンさん。こんばんは」
「えっと、そちらの方はお友だちですか?」
それを聞いたおじいさんは笑顔で答えた。
「はい、こちらの方はピンデチふれあい苑にいらっしゃる方で清さんです。孫のつむぎを助けて頂いていて」
おじいさんがそう言うと、清はアーボンに直角に頭を下げながら言った。
「は! 初めまして! 清です! そ、そのチェストプレートは伝説のオロチの装備ではありませんか!?」
それを聞いたアーボンは頭を下げて照れながら答えた。
「いやぁ、ははは、ダサかったですかね? 確かにオロチの装備なんですけど、もう古いっていうか……。でも個人的にはデザインが好きで着てて……。ははは」
「いやいやいや! 最高に格好良いです!」
「え、ほんとに!? 清さん、なんか趣味が合うかも!」
「そ、そう言って頂けると嬉しいです! ち、ちなみにオロチを倒したアーボンさんの攻撃力はどのくらいなのでしょうか……」
「攻撃力? 6万ちょっとだけど」
それを聞いた清は驚愕しながら言った。
「ろっ!! 六万!!!」
◆
夜、清は規格外の攻撃力を持つアーボンに興味を持ち、アーボンの家でアーボンたちの話を聞いていた。
そして清はアーボンとハデス、そしてタケチの武勇伝を聞きながら嬉しそうに手を叩いていた。
「すばらしいです、アーボンさん、ハデスさん、タケチさん! 参考になります!」
「いやいや、清さん。っても、ハデスが居なきゃ勝てなかった相手だったけど。なぁハデス?」
「いえ、タケチ様のサポートがあってこそです」
「え? あ、ははは。そ、そうかな……」
その言葉を聞いた清は感動してアーボンたちに言った。
「アーボンさんのお気遣いに、アーボンさんを慕うハデスさんにタケチさん! その言葉から、みなさんのお優しさが伝わってきます! すばらしい!」
「え、あ、いやぁ、清さん。はははは」
「清殿……、しかしお見通しのようで」
「いやぁ、ははは。僕なんか全然……」
「アーボンさん、ハデスさん、タケチさん。これは大変失礼で無理なお願いと思って聞いて頂きたいのですが、私を……、私をアーボンさんのパーティに加えて頂けませんか? 当然無理を承知で……」
「あ、いいですよ」
アーボンが即答すると、清は驚き仰け反って声をあげた。
「ええっ!? い!! 良いのですかぁ!?」
するとアーボンは清を気遣うように答えた。
「最近、仲間がナミさんの『ナミ一家』にお世話になってて3人だけになっちゃったんですよ。清さん、一緒に楽しくやりましょう」
「いえ、アーボンさん……。私は攻撃力が390しかない老人です! 足手まといになるかもしれませんが良いのでしょうか……」
「え!? ピンデチで390!? それ相当強いですよ! けど、おれもゲーム下手なんで、あんまりお役に立てないかもしれないんですけど、メインクエストをクリアするくらいまでは手伝えると思うんで」
「メッ!! メインクエストのクリアですか!!」
「え? あ、はい。でも、そのくらいしか……」
ガシッ!!
清はアーボンの手を強く握ると、頭を下げて言った。
「ど! どうか宜しくお願い致しますアーボンさん! 私は強くなってピンデチふれあい苑の方々のお役に立ちたいのです!」
するとそれを聞いたアーボンは慌てて頭を下げながら答えた。
「そ、その心意気、さすがです。こちらこそお願いします清さん! 楽しくやりましょう!」
こうして清はアーボンのチームに加わることになった。
◆
翌日、清は魔法の聖地マガイルーへ抜けるためのワニを倒しに1人で洞窟に入っていた。
清はアーボンからアドバイスをもらって手渡された毒の粉と業炎の壺を確認すると、うんと頷いてワニへ走り込んだ。
「まずは、毒の粉!!」
清は毒の粉をワニへ投げつけると、ワニの頭上には「毒」の表示が現れた。
「そして、業炎の壺! さらに毒の粉!」
そこへ清は業炎の壺と毒の粉を投げつけると、ワニは狂ったように清に襲いかかってきた。
清は土の魔法で土壁を作り出して防御すると、攻略サイトで得た情報を元に、逃げ回るように土壁を作りながらワニの動きを制御していった。
「土壁を作って右に3ステップ……。土壁を作って右に3ステップ……。ワニが攻撃に迷ったらアイテム攻撃……。土壁を作って右に3ステップ……。土壁を作って右に3ステップ……。MP回復……」
ワニは隙を狙って清に攻撃を仕掛けようと試みたが、清は冷静に土壁を作り出してワニの動きを制御し続け、業炎の壺と毒の粉を投げ続けた。
「格上のボスを攻略するためならば、何百回でも同じ作業をし続ける! 私はそうやって数多の死にゲー(すぐ死ぬゲーム)を攻略してきた! 年老いたゲーマーの意地を見せましょう!」
清はそう言って土壁で逃げ回りながら業炎の壺と毒の粉を投げ続けると、とうとうワニは毒のダメージと業炎の壺のダメージで消滅していった。
シュゥゥゥウウ……
ゴゴゴゴゴゴ!
すると洞窟の奥が開いて、マガイルーへの道が開けた。
「あ……、あぁ……。これが夢にまで見たマガイルー……。全ての魔法使いの聖地……」
清は涙を流しながら洞窟の外を見つめると笑顔になり、洞窟を抜けてマガイルーへと足を踏み入れた。




