第38話 ひろし、友人が増える
夕方前、おじいさんは孫のつむぎからのメッセージを受けて急いでピンデチふれあい苑の奥にある一軒家にやってきていた。
「待たせたね、つむぎちゃん」
「ひろじいちゃん、来てもらってごめんね。未成年者には権限が付与できなくて、大谷さんが、ひろじいちゃんに権限を付与してくれたから……」
「いやいやいや、いいんだよ。それにしても立派な家だね。ははは」
おじいさんはそう言うと家の近くにあった端末を操作して、つむぎたちを家に入れるようにした。
すると、その様子を見ていたサヤおばあちゃんたちがゾロゾロとやって来て、サヤおばあちゃんがつむぎに尋ねた。
「この家、もしかしてつむぎちゃんの家なのかしら?」
すると、つむぎは少し恥ずかしそうに答えた。
「……うん。大谷さんから頂いて」
「まぁ! すごいわね!」
サヤおばあちゃんが手を叩いて喜ぶと、数人のおじいちゃんたちがガレージに停めてあるトラクターを見て口々に言っていた。
「おいおいおい、トラクターやないかい。こらぁ上等なモンやで」
「んだな。アタッチメントもあんな」
「耕し用のロータリーに畝立て、草刈りにシーダー(種まき)まで」
「ああ、奥には収穫機まであるなぁ」
おじいちゃんたちが話していると、近くにいたミッチがおじいちゃんたちに尋ねた。
「みなさん、トラクターの使い方が分かるんですか?」
「そらな」
「乗ってだからな」
「もちろん」
「はい」
「ええっ!?」
「あんだけあれば、種まきから収穫まで、何でもできるで」
「そ、そうなんですか?」
ミッチの会話を聞いていたつむぎはピンと思いついておじいさんに言った。
「ひろじいちゃん、みなさんにも家に入れる権限を付与してくれない?」
「ああ、もちろんだよ。……ええと、みなさまは……」
「あっ!」
つむぎはおじいさんをご高齢者のみなさんに紹介し忘れていた事に気がつくと、大きく両手を挙げて言った。
「あの! みなさん、ご紹介が遅れてしまいました! こちらは、ひろじいちゃんです。わたしのおじいちゃんなんです」
するとおじいさんは笑顔で頭を下げて言った。
「みなさん初めまして。つむぎの祖父のひろしです。よろしくお願いします」
おじいさんが頭を下げると、ご高齢者のみなさんも笑顔で頭を下げながら答えた。
「よろしゅう頼んます」
「ああ、どうも」
「初めまして」
「つむぎちゃんのねぇ」
すると今度は、つむぎはご高齢者のみなさんを紹介した。
「ひろじいちゃん、こちらのみなさんは畑を手伝ってくれたの! みなさん、とっても農業に詳しくて助かったんだ!」
それを聞いたおじいさんは深々と頭を下げながら、ご高齢者のみなさんに言った。
「それはそれは、つむぎちゃんたちが大変お世話になりました。ありがとうございます」
するとその言葉を聞いたサヤおばあちゃんがおじいさんに言った。
「ひろしさん、頭をあげてください。あたしたちは好きでやらしてもらってるっていうか、お節介してるっていうか。うふふふふ」
「いえいえいえ、農業に詳しい方がいらっしゃれば、つむぎちゃんたちも嬉しいかと」
「いいのよ、いいのよ。これからもお節介させてもらうわ」
「いやぁ、申し訳ありません。よろしくお願いします。もし、この世界の事で困りごとなどがありましたら何でもお知らせください。この世界には少しだけ詳しいのでお手伝いしますので」
おじいさんがそこまで言うと、つむぎが嬉しそうにサヤおばあちゃんに言った。
「ひろじいちゃんは凄いんだよ! 認定英雄でね、ホワイト・ドラゴンも倒しちゃったの!」
「ホワイト・ドラゴン……?」
サヤおばあちゃんが「?」になっていると、横で聞いていた1人のおじいちゃんが驚愕しながら声をあげた。
「認定英雄!? ホワイト・ドラゴン!? 本当ですか!?」
それを聞いたおじいさんは照れながら答えた。
「いえいえいえ、私はチームとして参加していただけでして……、ほどんどは強いお友だちに助けていただいて……」
「いやいやいや、ホワイト・ドラゴンとパーティで戦い抜くだなんて、相当な手練れですよ! それに認定英雄はあのグレートリセット騒動を鎮圧した立役者に贈られる称号!」
「いやぁ……、ええと、わたしはただ皆さんと一緒に必死に戦っていたというか……」
「ち、ちなみに! メインクエストはどの辺りまで!?」
「ええと……、最後のボスの城にたどり着いたところです」
「なななっ!! なんとあのルシフェルの魔城に!?」
「あ、いえいえ、まだ入口にたどり着いたばかりでして……」
「まさかピンデチにそのようなお方が!!」
それを聞いていたサヤおばあちゃんは、驚いているおじいちゃんに尋ねた。
「清さん、ひろしさんはそんなに凄いのかい? 清さんだって、あたしたちの中じゃ一番強くて船まで乗れるじゃないの」
清と呼ばれたおじいちゃんはアワアワしながら答えた。
「私なんか比べ物にならないくらいのお方だ! この方は間違いなく転移魔法が使える!」
「ええっ! 転移魔法が?」
その声にご高齢者のみなさんが一斉におじいさんを見ると、おじいさんは頭を掻きながら恥ずかしそうに頭を下げた。
◆
―― 夕方すぎ ――
なんとおじいさんは、ピンデチふれあい苑のご高齢者のみなさんと一緒に船に乗ってGの区画の海岸へと帰ってきていた。
「ひろしさん! さすがです!」
「おどろいたで! めっちゃ強かったで!」
「んだな」
「驚いたわ!」
おじいさんは、ご高齢者のみなさんのリクエストでメインクエスト第2章のクリアまでをお手伝いしていたのだった。
おじいさんは照れくさそうに笑うと、少し下を向きながら答えた。
「いえいえいえ……。わたしは大したことはありません。お友だちに助けて頂いて強くして頂いただけですので……」
こうしておじいさんは、ピンデチふれあい苑のご高齢者のみなさんと仲良くなったのだった。




