第36話 ひろし、魔城を訪れる
ナミにテイムされたスノードラゴンはG区画の家の庭に転送された。
スノードラゴンは庭にいた先住のララガのお母さんとララ助に敬意を表わすと、頭を下げてララガ母子に挨拶をした。
「私はナミ様にテイムされたスノードラゴン。宜しくお願いしたい」
するとララガのお母さんは警戒しながら爪を出して答えた。
「はじめまして。私はララガ。まさか種族の最上位、ドラゴン族が来るとは驚いたわ。こちらこそ宜しくお願いします。こちらの子は、私の子供ララ助。どうぞお見知りおきを」
「こんにちはララ助くん。私はスノードラゴン。よろしく」
「うん! よろしくね、スノードラゴンのお姉ちゃん!」
ララ助が嬉しそうに答えると、スノードラゴンは優しくララ助の頭を撫でた。
「ララ助くん、歓迎してくれてありがとう。うれしいわ」
そしてスノードラゴンはララ助を抱えると片膝をついてララガのお母さんに頭を下げた。
それに驚いたララガのお母さんは思わずスノードラゴンに言った。
「スノードラゴン様、格上の種族のあなたが、どうかそのような事をお止めください」
「いえ、私は皆様の後輩。私は支配階級とも言える厄介なドラゴン族ゆえララガ族には歓迎されないと思いました。しかしララ助くんは歓迎してくれた」
するとララ助は尻尾をパタパタと振りながら笑顔で言った。
「だって、お姉ちゃん優しそうだったんだもん! えへへ」
こうして、ナミがテイムしたモンスターたちは最強レベルになったのだった。
◆
その頃、雪山を制したおじいさんたちは雪山の火口から堕天使ルシフェルの待つ地獄の魔城へと向っていた。
そして地獄の魔城の入り口にたどり着くと、イリューシュが青く光る石碑に手を当てながらみんなに言った。
「今日は16時になってしまいましたので、こちらの転移ポイントで一時帰還しましょう。そしてまた、みなさんのご都合をあわせて地獄の魔城を攻略しようと思います。いかがでしょうか」
イリューシュの提案に全員ウンウンと頷いて承諾した。
◆
ナミは帰還してG区画の家の庭にやって来ると、庭の桜の木の下に小さく座っているスノードラゴンを見つけて駆け寄った。
「ドラゴンさん、ララガたちと話した?」
「ええ。ララガ母子はとても寛大でした。それに白蛇さんも優しく接してくれました。私は謙虚であらねばと思ったわ」
「なら良かった。ドラゴンさんなら上手くやれるとぉもった」
「ナミ様……」
「えぇと……。じゃぁ、スノたんね」
「スノたん……?」
「ぅん。ドラゴンさんの新しぃ名前」
それを聞いたスノードラゴンは笑顔になって答えた。
「ありがとう、ナミ様。今日から私はスノたんです」
こうしてスノードラゴンは名前をもらい、G区画の家の一員になったのだった。
◆
その頃、おじいさんとおばあさんは現実世界の家の居間で楽しそうに話していた。
「いやぁ、まさか最後のボスさんと戦うなんてなぁ」
「ええ。でも、きっとあのお城は強い敵がたくさん居るんでしょうね」
「そうだなぁ。わたしたちは足手まといにならないように気をつけないとなぁ」
「そうね。いつも、みなさんが強いから助けて頂いているけれど、わたしたちも少しは力になれたら良いですね」
「あぁ。でも、こんな年寄り夫婦にみなさんは良くしてくれる。頑張らないとな」
「ええ、そうですね。うふふふ」
こうして、おじいさんとおばあさんは楽しくおしゃべりをすると、仲良く夕飯を作って食べ、夜は更けていった。
◆
翌日、ナミにテイムされている白たんとスノたんはスマイル道具店の仕事を手伝っていた。
スノたんはドラゴンの姿でシロたんを乗せて砂漠地帯までやって来ると、ゆっくりと着地して人間の姿に戻った。
白たんはボーっと砂漠を見つめながらスノたんに言った。
「えぇと……。私たち……、砂漠キノコを? 集めるのよね」
「そうね。私たちにすれば簡単な仕事ね」
「うん。それなら、早く集めて店に帰ろう」
「ええ」
するとその瞬間、砂漠地帯に生息するサンドワームが現れて、2人を威嚇した。
キシャァァアアアア!!
それを見たスノたんはシロたんに尋ねた。
「倒したほうが良いかしら」
「えっと、ナミ様が安全地帯のピンデチにいるから、テイムされた私たちが戦闘状態になったら、強制的に家に戻されちゃう」
「そうなのね」
2人は何事もなかったかのように砂漠キノコを集め始めた。
その様子を見たサンドワームは激昂してスノたんを狙い、口を開けて突撃した。
キシャァァアアアア!!
しかしサンドワームはスノたんの直前まで顔を近づけると、突然体を硬直させた。
それを見たスノたんはサンドワームに言った。
「私をドラゴン族と知っての狼藉か?」
その言葉を聞いたサンドワームはあまりの恐怖に失神した。
ドサァァアア……
その様子を見ていた白たんは無表情でスノたんに言った。
「いいなぁ。やっぱりドラゴン族は凄いな」
しかしスノたんは砂漠キノコを探しながら答えた。
「いえ。私はプレイヤーに倒されるために生まれたようなもの。私を倒せばドラゴンステップと素材を手に入れられる。それに倒されても復活してまた倒される」
それを聞いた白たんは少し涙ぐみながら答えた。
「わかる。私なんか、プレイヤーの過去をぼじくり出して嫌われるような役回りだった。辛かった」
「そう……。ですが、私たちは心優しいナミさんに救われた。この御恩には報いましょう」
「うん。ナミ様は美味しいチキンくれるし」
「ふふっ。そうなのね」
「それよりも、その背中に背負ってる金色の盾って王の盾よね? それどうしたの? ナミ様のタンクになるの?」
「たしかに、王の盾は魔力を注げば強力に敵視を集めることができる。タンクとなれと言う事と解釈できるかもしれない」
「そっか。いいなぁ。スノたんは強いからナミ様から認められたんだね」
「い、いや。これは、ただの推測に過ぎない。だが、もしナミ様に認められたのならば……、素直に嬉しいと思う」
「だよね。でも、スノたんは強そうだし戦闘も得意なんでしょ?」
「ええ。戦闘は生まれた時からプログラムされている。自分でも自覚が無いが相当高度な攻撃ができるようだ」
「そっか。……それより、砂漠キノコは集まった? 私、もう10個集めたけど」
するとそれを聞いたスノたんはアワアワしながら答えた。
「ご、ごめんなさい! 私はまだ1つも!!」
「じゃあ、私は休んでるから10個集めてね」
「は、はい!!」
スノたんは慌てて砂漠キノコを探し始めた。




