第35話 ひろし、使ってみた
その頃、ナミはスノードラゴンと対峙していた。
イリューシュは少し離れて見守りながらも、思わず声を漏らした。
「ナミさんなら大丈夫なはず……。がんばって……」
ナミは自分の身長の10倍はあろうかというスノードラゴンを見上げると、優しく話しかけた。
「ドラゴンさん。ゎたしはドラゴンステップがほしぃから逆鱗がほしぃだけ。だから戦ぅけど、殺したくはなぃ」
それを聞いたスノードラゴンは温和に答えた。
「ほぅ。しかし、私のウロコを使えばホワイトドラゴンに匹敵するほどの防具を作る事ができる。そして私の角を鍛冶屋に渡せば、レアな武器が作れるのだぞ?」
「ぅん、知ってる。けど、ぃらない。それに逆鱗もらっても再生するってきぃた。だからモンスターでも殺したくなぃ」
「そうであるか。……ならば私の逆鱗、奪ってみよ!!」
スノードラゴンはそう言うと、羽を大きく羽ばたかせて雪を巻き上げ、ナミの視界を奪った。
その様子を見ていたイリューシュは驚きながら声を漏らした。
「スノードラゴンがこんな攻撃を!?」
しかしその時、ナミの頭の上に乗っていたアルマジロが声を出した。
「きゅうぅ、きゅ、きゅぅうう!」
それを聞いたナミはアルマジロに返事をして弓を引いた。
「ゎかった、ありがとぅアルマジロちゃん」
そしてナミは矢を放つと、その矢は一直線に飛んでゆき、なんとスノードラゴンの逆鱗に刺さった。
「グォォオオ!!」
スノードラゴンは思わず声をあげると、ナミはその声から位置を測定して、新しく矢をつがえた。
◆
その頃、素手で戦うグループのおじいさんたちは、正体を現した雪男前と激闘を繰り広げていた。
雪男前は剛力スキルを発動して力ずくで殴りかかったが、茂雄はそれを美しく掻い潜って、渾身の右フックを炸裂させた。
ズバンッ!!
「うっ!!」
茂雄の右フックに雪男前が隙を見せると、その隙を見逃さず、大熊笹が豪快な一本背負いをお見舞いした。
「はい、よいしょ!」
ズドン!!
「ぐわっ!」
そしてそのまま腕ひしぎ十字固めに持ち込むと、隙を見て反対側の腕もアカネが腕ひしぎ十字固めに持ち込んだ。
「うぐぐぐ!!」
雪男前が逃げ場を失うと、おじいさんは雪男前の足にネバネバの実を2つ投げつけた。
バチッバチッ!!
するとネバネバの実は破裂して雪男前の両足を固定した。
それを見たおじいさんは感心するように言った。
「あぁ、本当につむぎちゃんの言った通りだ。ネバネバの実は粘着力で相手を固定できるんだなぁ」
雪男前が両手両足を固定されて動けなくなると、黒ちゃんは両手剣を出現させて着火剤で炎を纏わせ、雪男前に言った。
「終わりにしよう。皆にスキルを解放するのだ」
すると雪男前は突然笑って答えた。
「はっはっは! そうだな。降参だ!」
シュゥゥウウウ……
雪男前はそう言って消滅すると、おじいさんたちの目の前にメッセージが現れた。
「サブクエスト、雪山の男前をクリアしました。スキルの習得が可能になりました」
「「「おぉぉーーー!!」」」
おじいさんたちは驚きながらも喜んだ。
◆
その頃、騎士グループも魔法グループも召喚グループもサポートの助けを借りて雪男前を倒していた。
その中でも魔法グループはサポートのルルに感謝しながら勝利に酔いしれていた。
「ルルさん、本当に助かりました」
「ルルさん、めっちゃ強かった!」
「ルルさん、本当にありがとう!」
めぐとメイとおばあさんに感謝されたルルは、恥ずかしそうに笑みをこぼして答えた。
「そ、そんなに感謝されたら恥ずかしいじゃないのよ。わたしは出来ることをしただけよ……」
しかし、おばあさんはルルの手を握りながら言った。
「ルルさん。わたしたちは最初に雪男前さんが良い人だって思ってしまったわ。だけど、ルルさんが目を覚ましてくれたから怯まずに戦えたわ」
それを聞いたルルは顔を赤くしながら答えた。
「そ……、そんなの……、だって、洋子さんやめぐちゃんにメイちゃんも……、本当に素直で正直に生きているんだもの。そこはさ……、さんざん汚い大人たちを見てきたアイドルのわたしが……、助けたいと……、思っちゃって」
ルルがそういった瞬間、おばあさんとめぐ、そしてメイは一斉にルルに抱きついて言った。
「うふふ。ありがとうルルさん」
「本当に、ありがとうルルさん」
「まじ感謝! ルルちゃん最高」
ルルはおばあさんたちに抱きつかれると、思わず笑顔になりながらも慌てて言った。
「って、てか、きょ、今日でスキルは使えるようになったけど、これからが大変なんだからね! 魔法使いとか神官系はスキルが少ないけど『HP・MP変換』とか『HP魔法ブースト』とかゲットしないと……」
ルルはそう言いながらもおばあさんたちの満面の笑顔を見ると、つられて満面の笑顔になって言った。
「でも、みんなの役に立てて良かったわ……。安心して。みんながスキルを全部ゲットできるまで手伝うから」
ルルの宣言に、おばあさんたちは笑顔で喜んだ。
◆
時を同じくして、ナミはスノードラゴンの逆鱗を落とし、スノードラゴンを屈服させていた。
スノードラゴンは逆鱗を失うと、ゆっくりと伏せてナミに言った。
「私の負けだ。逆鱗の奥を矢で射抜けば私は絶命する」
しかしナミは再びスノードラゴンに言った。
「ぅうん。ゎたしは逆鱗だけがほしぃ。だから、これでぉわり」
ナミはそう言うと、アイテム欄から大きな赤い布を出現させながら近くにいたイリューシュに言った。
「イリューシュさん、なにか、とっても丈夫な盾がほしぃ」
それを聞いたイリューシュはすべてを察して笑顔で答えた。
「ふふふ。ドラゴンさんの逆鱗が再生するまでの代わりにするんですね。ピッタリな盾がありますよ」
イリューシュはそう言うと、黄金に輝く盾を出現させてナミに渡した。
ナミはその盾を受け取ると、スノードラゴンに言った。
「この赤い布を首に巻きたぃから少し首をぁげて」
それを聞いたスノードラゴンは少し首をあげた。
そしてナミはスノードラゴンの首に大きな赤い布を巻くと、逆鱗があった場所に黄金の盾をあてがって、赤い布を蝶々結びで結ぼうとした」
「よぃしょ……、よぃしょ……」
それを見たイリューシュも一緒に手伝うと、スノードラゴンの首にはカワイイ赤い蝶ネクタイのような布が結ばれた。
それを見たナミは満面の笑顔でスノードラゴンに言った。
「ドラゴンさん、かわぃくなった。逆鱗取っちゃってごめんね。再生するまでコレで我慢して」
スノードラゴンはナミの言葉を聞くと優しく顔を近づけて言った。
「お主はテイマーだな。このスノードラゴン、お主にテイムしてもらえぬか。頼む……」
スノードラゴンはそう言うとみるみる小さくなってゆき、なんと首に赤い蝶ネクタイをして黄金の盾を背負った、白いドレスの女性に姿を変えた。
ナミとイリューシュは予想外の事で驚いたが、ナミはタクトを出現させながらスノードラゴンに言った。
「じゃぁ、今日からおともだちね」
ナミはそう言うと、スノードラゴンの額にタクトを当てた。




