第33話 ひろし、雪山へ向かう
しばらくして、G区画の家ではスキルを解放するためのサブクエストにみんなで行こうという事になり、そこには、おばあさんたちスマイル道具店の転移魔法まで解放したメンバーと、ナミ一家、アーボンたちも同席していた。
イリューシュはホワイトボードを使ってみんなに次のサブクエストの説明をしていた。
「スキルを解放するためのサブクエストは雪山が舞台です。そこで、雪男前という人型のモンスターを倒すのですが、攻略メンバーの数が多いほど雪男前の数も多くなります」
それを聞いたみんなは少し不安そうな表情を見せると、イリューシュは笑顔で説明を続けた。
「ですが私たちも援護しますし、ベンドレさんやルルさん、それにアーボンさんたちや美咲さんも加わって頂けるとの事ですので、問題ないと思います」
「「おぉおーー」」
みんながイリューシュの言葉を聞いて笑顔になると、イリューシュはホワイトボードに雪山までの道筋を描いて説明した。
「雪山の入口まではモービルで移動できますので、ベイリゲンの分かれ道からモービルで移動します。ですが、入口からは徒歩になります」
するとイリューシュは日本伝統の防寒具の蓑と雪上を歩くためのカンジキをみんなに送信して話を続けた。
「当日はこの装備で雪山を登ります。そして雪男前を討伐した後、そのままメインクエストも進めたいと思います」
「「「ええっ!?」」」
その場にいたみんながイリューシュの言葉に驚くと、イリューシュはホワイトボードを一度消して新しく絵を描きながら説明した。
「雪男前を討伐するとスキルを習得できるようになるのですが、そのまま雪山の火口からルシフェルの魔城へ移動します」
すると黒ちゃんがみんなに言った。
「みなさん、ご心配無く。魔城には転移ポイントが複数ありまして、途中帰還したり、一度到達した転移ポイントから再開することがるのです。しかし、このような救済処置があるというのは、難易度が高いという事でして……」
黒ちゃんがそこまで言うと、イリューシュが説明を続けた。
「黒ちゃんさんの言う通り、転移ポイントがあるほどのお城ですので、この魔城のルシフェルがメインクエストのラスボスになります」
「「「えええっ!?」」」
その場にいたみんなが驚くと、黒ちゃんが笑顔で言った。
「ゆっくり日数をかけて攻略することも可能ですし、我らが最大限サポートいたします。ですので、みなさん一緒にラスボスを討伐しましょう!」
こうしておじいさんたちのラスボス攻略が始まったのだった。
◆
おばあさんたちは夕方前にスマイル道具店を黒猫とドラちゃんに任せると、ベイリゲンの分かれ道まで転移した。
そして先に来ていたおじいさんたちと合流すると、おじいさん、マユ、アーボン、ベンドレ、マラツンのモービルと、美咲と黒ちゃんのバイクに分乗して、意気揚々と雪山へと向った。
黒ちゃんのバイクの後ろに乗っていたアカネは嬉しそうに黒ちゃんに言った。
「なぁ黒ちゃん! なんか、みんなで遠足みたいで楽しいな!」
「はっはっは! そうだな。前を走る美咲さんと和代さんも笑顔だし、ひろしさんの荷台のメンバーもあんなに笑って楽しそうにしている」
「ほんと、このメンバーと友だちになって良かったよ! もちろん、黒ちゃんもな!」
「おっ……、おう……。わ、わたしもアカネと出会えて……、良かった……、ぞ」
「サンキュー黒ちゃん……、って、おいおい! 黒ちゃん、首真っ赤だぞ!? 大丈夫か!?」
「お、おう! 大丈夫だ! いや、あれだ、ほら、今日は強い雪男前と戦えるからな! 気分が高揚してしまってな!」
「え、まじで!? 雪男前ってそんな強いの?」
「え? おう。雪男前はあらゆるスキルを使って攻撃してくるモンスターだ。まだスキルを習得していないアカネたちは苦戦するかもしれん」
「へぇぇ。ってか、雪男前ってなんだよ。男前の雪男?」
「うむ、その通りだ」
「まじで!? うわぁ……、運営もギャグが好きなやつが居るんだなぁ」
「そうだな……。しかし、雪男前は相手に合わせて全ての武器を使う。なかなか手ごわいぞ」
「そっか。まぁギャグみたいな敵にやられたくないしね。気をつけるよ」
「おう。私もアカネたちを助ける。実はイリューシュさんが武器種ごとにグループ分けを考えてくれているのだ」
「え、そうなの?」
「うむ。大熊笹先生、ひろしさん、茂雄さん、アカネのグループは私がサポートする。騎士の哲夫さん、マユさん、サソリくん、マムシくんのグループはアーボンさんと美咲さんが」
「って事は、魔法を使うめぐと洋子さんと、あとメイさんもかな? は、ルルさんとか?」
「おお、その通りだ! そして召喚チームの和代さんとマラツンくんはベンドレさんがサポートし、ナミさんはイリューシュさんと一緒に他の高難易度モンスターに挑戦する」
「えっ? ナミさんは雪男前を倒さないの?」
「うむ……。ここだけの話しなのだが、ナミさんはもう倒しているらしいのだ」
「え、まじで?」
「ナミさんはイリューシュさんから弓の指導を受けていて、その流れで倒したそうだ。そして今日もイリューシュさんと一緒にスノードラゴンを討伐するとか」
「ナミさん、すごいなぁ。スノードラゴンなんて名前だけで強そうじゃんね」
「うむ。精密射撃で喉元にある逆鱗にダメージを与え続けなければならない高難易度モンスターだ。しかし倒せば、ドラゴンステップという弓使いのスキルが手に入る」
「へぇぇ。それってイリューシュさんが真剣に戦う時に使ってる、ステップしながら矢をつがえるやつ?」
「おお、よく知ってるなアカネ。あのスキルがあれば、弓使いは連続で矢を放てるのだ」
「なんかスキルって凄いね。ってか、あたしはどんなスキルが手に入るの?」
「アカネにピッタリなのは『剛力』だな。イークラトのサイクロプスの素材で手に入るスキルだ。一時的に腕力を3倍にするスキルで、無職にはピッタリだぞ」
「まじか!! そのスキルをゲットしたらデカい敵も投げ飛ばせるとか?」
「うむ。サンドイーターでも投げ飛ばせるかもな」
「うおお! それヤバいな!! ってか、そんな凄いスキルなのに今までそんなプレイヤーとか見たこと無かったなぁ」
「ううむ……、無職特化のスキルだからな。このゲームで無職を選択するプレイヤーはレアすぎる」
「あ、そっか。確かにウチに無職が多すぎるだけで、他では見たことないや」
「うむ。私も大熊笹先生とひろしさん、そしてアカネ以外に無職のプレイヤーに会った事はない……」
こうして黒ちゃんとアカネが話しているうちに一行は雪山へと到着した。




