第32話 アーボン、オトリね
翌日、おじいさんとナミ、マラツンたちとアーボン、ハデスそしてタケチはイークラトの港に降り立っていた。
アーボンは手足と首をブラブラとさせて準備運動をすると、ナミに言った。
「ナミちゃん。とりあえず、レッドドラゴンをたくさん集めたいんだよな。で、集まったらマラツンたちにある程度攻撃させてからハデスの毒の雨で一網打尽って感じでやればいいか?」
「ぅん、そのつもり。だからアーボン連れてきた。アーボン、挑発の盾もってるってきぃた」
「お、おう。まぁな」
「アーボンは硬ぃ。だからオトリね」
「ん? ……えっ!? オト……?」
「もう一度言ぅ。アーボンは硬ぃ。それは尊敬する。すごぃ。だからオトリね」
「……そ、そうだな。まぁ、そうなるよな。……おっし、任せとけ! マラツンたちはおれらが強くしてやらねぇとな!」
アーボンは思わず笑うと、挑発の盾を装備して1人で走り出した。
するとナミはおじいさんとタケチに言った。
「ひろしさん。タケチ。ゎたしたちゎ地上からくるサイクロプスをたぉしてマラツンたちを援護したぃ。ぉ願いしてもぃい?」
「あ、はい! サイコロ……、プス……と戦いましょう!」
「はい! サイクロプスなら、ぼくが近接でダメージを稼ぎます!」
「ぁりがとぅ。ゎたしが弓のスキルでサイクロプスを足どめする。ひろしさんゎ火薬玉をなげて」
「わかりました!」
「はい!」
こうしてイークラトでの戦いが始まった。
◆
その頃ピンデチふれあい苑の裏でつむぎたちが畑仕事をしていると、ピンデチふれあい苑からその様子を窓越しに見ていたご高齢者のプレイヤーたちは口々に言った。
「あんなに若い子たちが畑をねぇ」
「大変なのに頑張っているわね!」
「はっはっは、あの子は大丈夫か」
「あぁ、耕運機がフラフラしとる」
「そげ言うなら、助けちゃれば?」
「だな。若い子が頑張ってるべ?」
「お、おぉ。確がにそうだよなぁ」
「いっちょ、手伝ってやっかね!」
「おめさん手伝うかね? あぁ?」
「あなたも手伝いたいんでしょ?」
こうして、ピンデチふれあい苑にいた農家だったご高齢者たちは、笑顔になりながら畑へと出ていった。
◆
その頃、おじいさんたちは無事にレッドドラゴンとサイクロプスの素材を集めて、イークラトの街にあるお土産物屋で楽しくおしゃべりをしていた。
「アーボンさん、まじ神っす!!」
「いやぁ、タンクしてただけだよ」
「ひろしさん、火薬玉すごかった。尊敬した」
「いえいえナミさんのお力があってこそです」
「タケチもすごかった。タケチぁなどれなぃ」
「え? そんな、いえいえいえ……、ははは」
「やった! まさかドラゴン大福が!」
「ああ! とうとう買える日が来た!」
「嬉しいなぁ……。まさかおれたちが」
するとその時、おじいさんの後ろから声がした。
「イークラトに来たばかりの……」
「雑魚がキャッキャ騒ぎやがって」
「迷惑なんだよ。ほんとによぉ!」
その言葉に気づいたおじいさんは即座に振り返って頭を下げると、声の主に謝った。
「あぁ、これはこれは申し訳ありません。わたしたちにとっての強敵が倒せましたので気分が高揚しておりました。失礼を致しました」
おじいさんが頭を下げると、突然聞き覚えのある声がした。
「ひろしさん。何かあったのですか?」
おじいさんが振り向くと、なんとベンドレが立っていた。
「あぁ、ベンドレさん! いやぁ、わたしたちが、この方たちにご迷惑を……」
「ご迷惑ですか?」
「はい、先ほど強い敵をたおしまして、思わず大きい声で話してしまいまして……。ははは」
「いえ、ここはお土産物屋です。大きい声で話しても問題ないはずですし、そのような方々は多いはずですが、おかしいですねぇ……」
ベンドレがそう言ってイークラトのプレイヤーたちを睨みつけると、プレイヤーたちは恐怖に震えながら声を漏らした。
「ベッ! ベベベベンド、レぇぇ!」
「なぁっ! なんでここに居るぅ!」
「やべぇ! 転移して逃げろっ!!」
イークラトのプレイヤーたちはその場から居なくなった。
ベンドレはふぅと息をつくと、おじいさんに言った。
「ひろしさん、すみません。イークラトはメインクエストを終えてから来るような街なので、少し、なんと言いますか……、調子に乗っている輩もおりまして……」
「あぁ、なるほど。そうでしたか……」
「ですので、もし今後イークラトへ討伐に来られる際は、私にご連絡を頂ければお供致しますので……」
するとそれを聞いていたナミがベンドレに頭を下げながら言った。
「ベンドレさん、面倒なところ、たすかった。さっきまでレッドドラゴンの素材ぁつめてた。それと、ひろしさんはサイクロプスの素材がぃっぱぃ取れた」
それを聞いたベンドレは笑顔になると、ナミに感心しながら答えた。
「おおっ!! さすがナミさんですね。サイクロプスの素材から得られるスキル『剛力』の準備ですね」
「ぅん。剛力スキルを使うための素材は集まった」
「さすがです、ナミさん!! 剛力スキルは……、まさに、ひろしさんのためにあるようなスキルですね!」
「そぅ。ずっと狙ってた」
「スキル無しでも火薬玉であの破壊力……。もし、剛力スキルが加わったら、もしかしたら……、この世界で最強になってしまうかもしれません……」
「だとぉもぅ。それに、ひろしさんはネバネバの実も大量に手にぃれた」
「そっ! それは本当ですか!?」
「ぅん、ほんと」
ベンドレはナミの言葉に驚きを隠せなかった。
◆
その頃、つむぎたちは畑仕事を一休みしてピンデチふれあい苑のご高齢者たちと一緒に畑でおしゃべりをしていた。
「若いのに、偉いなぁ」
「え、いえ、好きでやってるので」
「大変でしょう? これからも手伝うわ」
「あ! ありがとうございます!」
「それにしても、畑ができるんだな」
「はい。特別に作って貰いました」
するとその時、なんと専務の大谷が大量のおにぎりとお新香を持ってつむぎたちの元へとやってきた。
「皆様、こちらのつむぎさんたちのためにお手伝い頂きましてありがとうございました。皆様、少し休憩と致しましょう! 是非、こちらをどうぞ!」
大谷はそう言って、ご高齢者のプレイヤーたちにおにぎりとお新香を配り始めると、つむぎたちも大谷の手伝いを始めた。




