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第30話 ひろし、種を蒔く

 こうしてマラツンたちはナミのサポートで順調にメインクエストを進めてゆき、最終的に転移魔法を手に入れることができた。


 マラツンたちはナミの前で土下座すると嬉しそうにナミ言った。


「ナミさん! いえ、ナミ様!!」

「お力添え、大変感謝いたします」

「ナミ様は、僕らのご主人様です」

「今後とも宜しくお願い致します」


「みんなゎ手下。ゎたしが絶対に面倒をみる。みんな、幸せに暮らしてほしぃ」


「「ナミさまぁああ!!!」」


 マラツンたちは涙を流しながら額を地面に擦り付けると、ナミは優しくマラツンたちの肩を優しくポンポンと叩いて回った。


 ◆


 翌日、ナミはアーボンの家にやって来た。


「アーボン。ゎたし、アーボンの仲間、取っちゃった?」


 しかしアーボンは満面の笑顔で答えた。


「いやいやいや、あいつらホントに嬉しそうだったから、そのままナミさんの手下にしてやってもらえると嬉しいなぁ、ってタケチとハデスとも話してたんだよ。ははは」


「アーボン、なかなかゃる。きらぃじゃなぃ」


「あ、ああ、ははは。そ、それは、ありがとうございます……」


「じゃぁ、この家の2階を使ってぃい?」


「えっ! この家の2階を!?」


「ぅん。この家の2階をナミ一家いっかの拠点にしたぃ」


「……ナミ、一家いっか……」


「ぅん。アーボンのぉ友だちが、ゎたしの手下。けど、アーボンのお友だちゎアーボンのぉ友だち。だから、夜寝る前にずっと考えてた」


「たしかに……、それならマラツンたちも気兼ね無く」


「ぅん。だから、ナミ一家いっかはアーボンの家の2階に住む」


「そうしてもらえるとマラツンたちも喜ぶよ! では、そのとおりに!」


 こうしてナミ一家の拠点はアーボンの家の2階になることになった。


 ◆


 その頃おじいさんはG区画の家の畑で、孫のつむぎたちが野菜を育てる研究をしているのを手伝っていた。


「つむぎちゃん、じゃあ、この掘った土のところへ臭い排せつ物を置いていくよ」


「うん、おねがい!」


 つむぎはそう答えると、アパタイト鉱石から作った肥料と貝殻を粉にしたものを撒いていった。


 そしてその上からChocoが手に入れたあたたか石(常に45度ほどの熱を放つ石でお風呂などに利用される)を等間隔で並べると、ミッチが上から土を被せていった。


 その様子を家の中から見ていたイリューシュは感心したように呟いた。


「今までこの世界で種から野菜を作ろうとした人もいたけれど、全員が失敗してしまったものね……。でも、つむぎさんはこの世界の土がきれいすぎる事に気づいて土作りから始めるだなんて……」


 するとその時、なんと専務の大谷がG区画の庭に現れ、窓越しに家の中に居るイリューシュに挨拶をした。


 それに気づいたイリューシュは大谷にボイスチャットを繋いで答えた。


「こんにちは、大谷さん。つむぎさんたちに会いに来たのですね。どうぞお入りください」


「はい、ありがとうございます。では、失礼します」


 大谷は庭に入ると、つむぎたちのところへ向った。


 ◆


 大谷はおじいさんとつむぎたちと挨拶を交わすと、臭い排せつ物などを混ぜて数日置いておいたという土をすくい取り、上級権限モードで土の状態を調べ始めた。


 すると満面の笑顔になって声をあげた。


「す! 素晴らしい!! これは間違いなく『臭い排せつ物』の腐敗臭を表現するために仕組んでおいた、微生物のように振る舞うデータだ!! しっかり土の中でデータが自己複製している!!」


 大谷はそう言って喜ぶと、なんとすくった土を口に放り込んだ。


「あっ!」

「大谷さん!!」

「それ、中に……」

「きゃっ!!」


 しかし大谷は口元を歪ませるようにジワリと笑うと、クククと笑いながら声を漏らした。


「初めて味わう味だ……。この世界の砂から木の皮に至るまですべての物質を味わってきたが、初めての味……。これは間違いない……」


 その時つむぎは(え……!? 大谷さんってそんなモノを食べていたの……?)と少し心配になりつつも、大谷に尋ねた。


「ど、どうでしたか、大谷さん」


 すると大谷はピカピカの笑顔でつむぎに答えた。


「つむぎさん、しっかりと微生物が繁殖していますよ!」


「えっ、本当ですか!? やった!!」


 その様子を見ていたおじいさんも大谷にお礼をしようとしたが、その時大谷は焦点の合わない目で不気味な笑顔を浮かべながら何かを呟いていた。


「ふははははは……。やはり、私の作り出したこの世界は完璧なプログラムだったのだ……。そうだろう? だって微生物だって繁殖してしまうのだから……。今まで植物は時間設定で変化させてきたが、今後は現実世界と同じように……。ふはははは……」


 おじいさんは、なんだか大谷が不気味に嬉しそうにしていたので、ちょっと声をかけるのは止めておこうと思った。


 するとその時、おじいさんはふと思い出してつむぎに尋ねた。


「そうだ、つむぎちゃん。このあいだガチャで『ネバネバの樹の種』というのが出たのだけれど、育て方を知っているかなぁ」


 するとつむぎはウンウンと頷いておじいさんに答えた。


「うん、それは簡単に育つよ。小さな鉢に種を埋めれば、次の日には小さい木になって実がなるの」


「あぁ、なるほど。それなら、わたしでも出来そうだ。ははは」


「でも、その実はネバネバしすぎてて食べられないんだけど、モンスターとかに投げ当てると動きが止められるんだって。もしかしたら、ひろじいちゃんにピッタリの実かも!」


「おぉ、それは良さそうだなぁ。できれば、モンスターさんたちも傷つけたくないからなぁ。ははは」


 するとその会話を聞いていた大谷が突然振り向いておじいさんに言った。


「ひ、ひろしさん! それはもしや、植物の種では……?」


「あ、ええと、はい」


「もしよろしければ、つむぎさんたちが作った素晴らしい土に植えていただくことは出来ませんでしょうか……。もし今までのデータ仕様で作成された種をこの土に植えたらどうなるのか興味がありまして」


「ええ、それは構いませんが……」


 こうして大谷は家主のイリューシュにも許可を取り、おじいさんのネバネバの樹の種をつむぎたちが作った土に蒔くことにした。


 ◆


 翌日の朝。


 庭のロッキングチェアで眠っていた茂雄が朝日で目を覚ますと、とんでもない事が起きている事に驚いた。


「こ……、これは……。一晩で大きな樹が……」


 そう、なんと、おじいさんのネバネバの樹の種は一晩で立派で大きな木になっていた。



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