第29話 ナミ、手下にする
マラツンはナミの船の上でベヒーモスを召喚すると、海中にいる本マグロを選択してベヒーモスに言った。
「ベヒーモス、全力で雷撃だ!!」
ブモォォオオオオオ!
パァァアアアアンン!
ベヒーモスは海に向かって雷撃を放つと、その雷撃は広範囲に広がりながらも本マグロまで届いた。
しかし全力の雷撃の威力は凄まじく、なんと、本マグロから濡れた釣り糸を伝って、竿を持っていたアーボンたちにも電撃を食らわせた。
「うわわわわわあああ!!」
「ああああアーボン様!!」
「べべべべべべべべべべ!」
「ウブブブブブブブブブ!」
シュウウ……
シュウウ……
チーン……
電撃を食らったツックンとマムシはHPがゼロになってレググリにリスポーンした。
アーボンとハデスは無事だったが、2人は釣り竿を離してしまい、釣り竿は海の中へ消えていった。
その様子を見ていたナミは、電撃を食らって浮いてきた本マグロに船を近づけると、ウインチで本マグロを船の上へと引き上げた。
◆
アーボンの船とナミの船は一緒にG区画の海岸へと戻ると、ナミはアーボンたちに言った。
「マラツンのマグロ、とりぁぇず、アーボンの家にはこべばぃい? 冷蔵庫ぁる?」
それを聞いたマラツンは驚きながらナミに言った。
「え? あ……、ええっ!? ナミさんが釣ってくれたのに、おれのマグロって……」
「ぅうん。ゎたしが釣ったのはマラツン。けどマグロを倒したのはマラツン。だからマラツンのマグロ。ぁとから来て横取りするのは漁師の恥」
「ナ……、ナミさん……」
するとアーボンがマラツンの肩を叩きながらナミに言った。
「実はナミさん。このマグロはマラツンたちがナミさんから装備をもらったお返しに釣ろうと頑張ってたんだ。……結局、格好悪い結末になっちゃったけど、このマグロ貰ってやってくれないかなぁ」
アーボンがそう言うとマラツンは直角に頭を下げて言った。
「カッコよくマグロ渡せなくてすみません! でも貰ってくれると嬉しいっす!!」
それを聞いたナミは一瞬驚いたが、柔らかい笑顔を見せるとマラツンに言った。
「ぅうん。マラツンは頑張っててカッコょかった、ベヒーモスの雷撃もすごかった」
「あっ! ありがとうございますナミさん!!」
「だから、マラツンを手下にしてぁげてもぃい」
「まっ、まじすか!! ぜひ、ぜひ手下にしてください!!」
「ぅん。じゃあ、今から手下」
「ありがとうございます! ……あの、……ちなみに、おれの後輩たちも手下にしてもらうことは……」
「ぃぃよ。みんな頑張ってた。みんな手下」
「あっ! ありがとうございます!! 手下になります!!」
「ぅん」
ちなみに、ナミが言う手下とは、親分のナミが全ての面倒を見ると言う意味で、支配するつもりは毛頭なかった。
こうしてマラツンたちはナミの手下(という名の仲間)になると、アーボンとハデスもその様子を見て嬉しそうに笑った。
◆
翌日、マラツンたちはナミから連絡を受けてG区画の家にやって来ると、家の前でナミが待っていた。
マラツンたちとは一斉にナミに挨拶をすると、ナミがマラツンたちに言った。
「きょうゎ、白蛇ちゃんのダンジョンを攻略して、みんなのクエストすすめて、ベイリゲンの鍛冶屋をかいほぅしたい。時間ぁる?」
それを聞いたマラツンたちは満面の笑顔になると、一斉に答えた。
「はい! 時間は無限にありますんで!」
「もちろん大丈夫です!」
「ありがとうございます!」
「た、助かります……」
こうしてマラツンたちは過去の恥ずかしい映像を見せてくる白蛇の居るダンジョンへと向った。
◆
白蛇へと向かうダンジョンは、ナミの弓と召喚したララガのお陰で無傷で白蛇の元へとたどり着いた。
しかし、マラツンたちは白蛇のボス部屋に入ると、全身を震わせながら下を向いた。
すると、ボスの白蛇は高笑いをしてマラツンたちを威圧しようとしたが、ナミに気づいて話しかけた。
「うん? あなたのID……。前のボスをテイムしたテイマーのナミさんね?」
「ぅん。きょうゎ手下のつきそぃで来た」
「手下……、ねぇ……。ナミさんは驚くくらい記憶がきれいだけれど……」
白蛇はマラツンたちをスキャンすると、少し不安そうにナミに言った。
「ナミさん……。ええと、この人たちが手下なのよね?」
「ぅん」
「……この人たち悪事が多すぎて、……ええと何と言って良いのか……」
しかしナミは笑顔で答えた。
「でも、ぜんぶ手下のため。ちゃんと言ってくれると、ぅれしぃ」
「ナミさん……」
すると白蛇の顔色が変わった。
「はぁーっ、はっはっは! では遠慮なくやらせてもうわよ! マラツンはお前か!」
「はっ、はいっ!!!」
「おまえは初心者パーティが溶岩エリアに来て案内した時に、カワイイ女子たちが溶岩キノコを集めていたのをジーーっと見つめていたな!」
「あぁぁああああー!!! すみません、すみません!! どうしても止められなくて!!」
「お前は邪念の塊だな!」
しかしそこまで白蛇が言うと、なんとナミがマラツンに言った。
「オスはメスが気になるのはしかたなぃ。それは生まれ持っての本能。恥ずかしくなぃ」
それを聞いたマラツンはナミに絶大な勇気をもらって叫んだ。
「はいっ!! おれはあの娘を美しくてカワイイと思って、思わずジーーっと見てしてしまいました! ほんとあの娘は天使で、素敵だなって思って! ……あぁあぁ! おれは、どうしようも無かったんっす!!」
「ほぅ」
「しょ、正直言うと! あなたも綺麗で素敵だなって!! おれ……、そんな事ばっかり……。く、くそう!!」
マラツンは頭を両手で抱えて床に伏せると、白蛇は笑ってマラツンに言った。
「素敵だわ。あなたは、ちゃんと人間のオスをしているわね。今まで何度もくだらない言い訳を聞かされてウンザリしていたのよ。今日は気分がいいわ」
白蛇はそう言って指輪を出現させると、マラツンの前に指輪を置いた。




