第28話 マラツン、飛ぶ
その後、ナミは砂漠キノコを集め終わると、お母さんとララ助をG区画の家へと戻し、突然転移魔法で転移していった。
「「「あっ!!!」」」
マラツンたちは転移していったナミに驚いたが、マラツンは肩をガックリと落として後輩たちに言った。
「はぁ。やっぱ、そうなるよな。おれらも転移魔法を手に入れねぇとな」
「はい……」
「ですよね」
「ええ……」
こうしてナミを見失ったマラツンたちはアーボンの家へと帰っていった。
◆
マラツンたちがアーボンの家に帰ってくると、アーボンが笑顔でマラツンたちを迎えた。
「おおー! お帰り、みんな!」
「あ、アーボンさん」
「どうしたんすか?」
「何か良いことでも」
「あったんですか?」
「もちろんよ!! なんと、おれの就職先が決まったんだ!! 大手スマホゲーム企業のお客様相談室係だぜ!!」
「「「おおーーーー!!!」」」
「ってか、君たちどこか行ってたの? ハデスが、心配してたけど」
「あ、ええと……」
「ナミさんの……」
「観察というのか」
「お返ししたくて」
「ナミさんにお返し?」
するとマラツンが代表するように答えた。
「あ、はい、おれら、ナミさんから大量のアイテムとレアなハヤブサ武器を貰ったんす。だからお返しをしないとって思って」
「あぁー、なるほどなるほど。けど、ナミさんが喜ぶモノを選ぶのは難しいぞ。なにしろ、おれだって未だにナミさんは良く理解できない」
「「ですよねー」」
マラツンたちが肩を落として答えると、アーボンは腕を組んでマラツンたちに言った。
「しかし! おれは1つだけナミさんが喜ぶものを知っている!!」
「「ええっっ!!!」」
◆
1時間後、マラツンたちとアーボン、そしてハデスも、なぜかフンドシ姿で船に乗り、海の上にいた。
アーボンは両腕を組むと、マラツンたちとハデスに言った。
「いいかー!! ここは座標442.90から451.27のエリアだ!! この場所は本マグロが最も目撃されるとネットで話題になっている!!」
「「「押忍!!!!」」」
「ナミさんはララガ親子のため、本マグロをいつでも追い求めている!!」
「「「押忍!!!!」」」
「だが油断をするな!! 我らには1本釣りの装備しか無い!! というか、電動リールとか、使い方が分からない!!」
「「「押忍!!!!」」」
「要するに1本釣りの力勝負だ!! 本マグロは半端な力じゃ海に引きずり込まれる!! 気をつけろ!!」
「「「押忍!!!!」」」
「覚悟を決めろぉぉ!!!」
「「「押忍!!!!」」」
「いくぞ! 本マグロとの戦いだ!!」
「「「押忍!!!!」」」
こうしてアーボンたちは、フンドシ姿で本マグロを釣り上げようと気合を入れた。
◆
その頃ナミはヴァルキリーの島へやって来ていたが、ヴァルキリーは外のベンチに眠ったまま動かなかった。
ナミはしばらくヴァルキリーの横に座ってボーっとしていたが、小さく頷いてヴァルキリーに声をかけた。
「バルキリちゃん疲れてる。ゆっくり休んで」
ナミはそう言うとヴァルキリーの横に溶岩ようかんを置き、転移魔法で転移していった。
◆
その頃、本マグロを狙っていたアーボンたちの竿に、なんと本マグロがかかっていた。
しかし、本マグロの異常なまでの力に恐れおののきながらも必死に全員で竿を握っていた。
アーボンは竿のリールを巻き取ろうとしたが、本マグロの力が強すぎて巻けず、思わすハデスに言った。
「ハデスー! このリールを巻いてくれー!」
「も、申し訳ございません! 私はそのようなスキルは持ち合わせておりません!」
「う! うぐぐ! じゃ、じゃあ、どうしたら!?」
「では、私の毒の雨で……」
「おいおいおい! 駄目だって! マグロが毒で汚染されるだろ!!」
「は、はっ! 申し訳ございません!!」
するとその時、一緒に竿を持っていたサソリが意を決したようにアーボンに言った。
「ぼくが行きます! 海にもぐって本マグロに一撃くらわせます!!」
サソリはそう言って海に飛び込むと、アーボンは慌ててサソリに言った。
「待て待て待て!! お前の防具は岩シリーズだぞ!! 沈むぞ!!」
「あっ!!」
サソリは海に飛び込むなり、速攻海底に沈んでいった。
「……うぶぶぶぶぶ! いたたたた!!!」
チーン
サソリはレググリにリスポーンした。
その様子を見たアーボンは慌ててハデスに言った。
「ハデス! 何かいい策略はないか!?」
するとハデスは無理やりAIの思考領域を拡張してアーボンに答えた。
「本マグロの筋肉は電気信号で操作されます。マラツン様のベヒーモスを船上で召喚し、落雷させるのが良いかと」
「なるほど、わかった! なにしろ、マラツンのベヒーモスで落雷させればいいんだろ?」
「はい。広義の意味ですが!」
「マラツン! ベヒーモスでマグロに落雷させろ!!」
「すみません! 目に見えない敵は攻撃対象として選択できないんす! 一度でも目で見ないと戦わせることができないっす!!」
「なっ! なにぃぃいい!!」
するとマラツンは意を決したようにアーボンに言った。
「なら、おれが海に飛び込んでマグロを確認するっす! んで、ベヒーモスと戦うっす!!」
「まじか! 大丈夫かマラツン!?」
「とにかく、やってみるっす!」
マラツンは岩シリーズの防具を解除して海へ飛び込むと、海中に潜って即座に本マグロを補足した。
マラツンはニヤリと笑うと、ブクブクと泡を吐きながら詠唱を唱えてベヒーモスを召喚した。
「みつけた!!! マグロを制するのは、このおれだ!!」
しかしベヒーモスは海の中に召喚され、息ができずにベヒーモスは苦悶の表情を浮かべながら静かに海底へと沈んでいった。
「あ、ぁあ、しまった!! ベヒーモス、ごめん!!」
マラツンは慌てて詠唱を唱えてベヒーモスを戻したが呼吸が限界になって海面へと上がった。
マラツンは海から顔を出すと力を振り絞って船のほうへ泳いで行ったが、だんだんとHPが減ってゆき、悔し涙を浮かべた。
「く……、くっそ……、せっかくマグロ……、みつけたのによぉ……」
するとその瞬間、マラツンの襟に何かが刺さった。
ツプッ!
「えっ、なに?」
そして次の瞬間、マラツンの体は空へ向って飛び上がった。
「うわぁぁあああああ! なんだ! 何が起こってるんだぁぁああああ!!」
マラツンは空を飛ぶと、そのまま誰かの船の上に落ちた。
ドサッ!!
「ぎゃっ!」
マラツンはギリギリHP2で助かると、優しい声が聞こえてきた。
「助かってょかった。はぃ、回復薬」
その声の主はナミだった。
「あっ! ナ、ナミさん!!」
なんとナミは釣り針でマラツンを引っ掛け、自分の船の上まで引き上げたのだった。
ナミはマラツンに回復薬を手渡すと、最新の大型電動リールを優しく撫でながら呟いた。
「ぅん。最新の24Vマグロスペシャル電動リール、ゎるくなぃ。人間もひとっ飛び」
マラツンは何が起きたか分からずにパニックになっていたが、ハッと正気に戻ると急いでベヒーモスを召喚した。




