第26話 ハデス、黒猫と
それからしばらくの間、心を入れ替えたマラツンと後輩たちはレググリの溶岩地帯で、初めて溶岩地帯に来たプレイヤーたちを助けていた。
「あ、その装備だと溶岩の熱ダメージ受けちゃいますよ。良かったら、この防具を使ってください。今から捨てるんで」
マラツンは耐熱効果のある防具一式を何個か選択すると「捨てる」を選んで所有権を放棄し、地面に置いた。
「えっ!? これは耐熱効果のある防具ですよね? いいんですか?」
「はい! でも、攻略が終わったら返してくれると助かります」
「そ、それはもちろんです! ありがとうございます!」
するとプレイヤーたちは耐熱効果のある装備を拾い上げると、その様子を見ていたマラツンが笑顔でプレイヤーたちに言った。
「たぶん岩キノコか、溶岩石を探しているんですよね? 良かったら道案内します! おれら、この辺りは詳しいんで!」
「ほ、ほんとうですか!?」
こうしてマラツンと後輩たちは溶岩地帯でたくさんのプレイヤーたちを助けていった。
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それからさらに数日、マラツンたちの活動は運営の目に止まり、なんと「レググリの守護神マラツンさんファミリー」として運営から取材を受けることになったのだった。
運営としてもプレイヤーを殺すPKよりも、プレイヤーを助けるプレイヤーは助かるので大きく宣伝したいという思惑もあり、利害が一致する結果だった。
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その頃、現実世界では、おじいさんが軽トラで町へと買い出しに来ていた。
おじいさんは、いつもの流れで行きつけの家電量販店に来ていた。
そして家電量販店の大画面の前にやって来ると、インタビューを受けているマラツンたちが映し出されていることに気づいて笑顔で声を漏らした。
「あぁ、マラツンさんたちですね。それにしても特集されているなんて凄いなぁ。しかし……、ははは、緊張していますね」
おじいさんの言う通り、マラツンはガチガチの表情でインタビュアーの質問に答えていた。
「最近では、レググリの守護神と呼ばれているようですね! マラツンさんファミリーのお陰で、たくさんのプレイヤー様たちがレググリのアイテムをゲットできるとの噂です!」
しかし、質問に困ったマラツンは下を向きながら恥ずかしそうに答えた。
「い、いえ……。おれらなんか底辺なんで……。でも、出来ることをしようと思って……。はは」
「いえいえいえ! マラツンさんのやってる事はなかなかできる事じゃありません! それにみなさんの強いのですね! 岩シリーズが物語っています!」
「え!? いや……。ええと……。正直に言うと、おれらだけじゃゲット出来なくて……。おれら弱かったから……」
するとその時突然、その取材を見ていて承認欲求が抑えられなかったプレイヤーたちがレググリに現れた。
そして取材している所へやって来ると、我先にと取材クルーへと力を誇示し始めた。
「はっはー! おれはイークラトでチームを持ってるエビンだ! おれならレググリなんて楽勝だぜ! こんな雑魚じゃなくて、おれに頼んでくれよ!」
「あたしもイークラトから来たエップ。精密射撃ができるわ。マラ……、ツン? こんなやつらに頼むより、あたしに頼んでよ。で、SNSで一緒にバズらない?」
「おいおい! レググリあたりのプレイヤーなんて雑魚でしかねぇだろ? いいか? お前らたちがイークラトに来れねぇなら、おれのチーム、ベベイだけは知っておけよ!?」
こうして格上のプレイヤーたちの勧誘や宣伝が渦巻くと、取材チームはイークラトから来たプレイヤーたちを取材し始め、マラツンは悔しさを滲ませながらも後輩たちに言った。
「おまえら、恥かかせてごめんな。今日は取材っていうからヒーローになれるかと思ってたんだけどな……。ホントごめん、今日も恥かきながら消えようぜ……」
マラツンがそう言ってピンデチに戻ろうとした瞬間、なんとその場は恐怖に縛り付けられ、イークラトから来たプレイヤーたちを恐怖に陥れた。
「う……、ううっ!!」
「何? 恐怖の魔法?」
「馬鹿な! そんな!」
イークラトから来たプレイヤーたちとマラツンたちが恐怖に慄くと、上空から声がした。
「終末魔法、ゲイブリエルズ・ホーン。殲滅まで、あと10秒」
その声にイークラトから来たプレイヤーたちが空を見上げると、なんとハデスと黒猫がペアスキルを発動していた。
「ぎゃぁぁ!! おれらじゃ受けきれない!」
「なんでなの!? こんなの聞いてないわ!」
「……。冥界族のペアスキルとか、終わった」
ハデスは魔法を発動しながら黒猫に言った。
「アーボン様に護衛を頼まれて来てみれば……、まさか、このような事になろうとはな……」
「ふっ。お主も同じ考えであろうハデス。ご主人とそのお仲間を守るのならば手段を選ばない。あの弱気な4人のプレイヤーたちは我が主の夫、ひろし殿によって導かれた者たちでもある。我は彼らを死守する」
「ふっ、利害は一致しているようだな。私はアーボン様たちが悲しまず幸せに生きて頂きたいだけだ」
それを聞いた黒猫は少し優しい声色で答えた。
「そうだな。ご主人の幸せは我らの生きがい……。さて、脅かすのもこの辺にしておく事としよう」
「うむ」
フッ……!
黒猫とハデスはゲイブリエルズ・ホーンをキャンセルすると、その場にいたプレイヤーたちは次々に転移して逃げていった。
「「「うわーーーー!!!」」」
その様子を見ていたマラツンたちは驚愕の表情でアゴを落としていると、取材クルーが手を震わせながらマラツンに質問した。
「あ……、あの……。今のゲイブリエルズ・ホーン……、もしかして、マラツンさんの……、お仲間が……?」
「あ、いえいえいえ! お世話になっている方たちのご眷属さんたちで、おれみたいな底辺があんな凄いご眷属さんなんか従えないっすよ……。はは」
「な……、なるほど……」
するとその時、溶岩地帯に溶岩キノコを採りに来たメイとナミが転移してきた。
ブゥゥンン……
メイはマラツンたちを見つけると笑顔で手を振ってマラツンたちに声をかけた。
「おーい! マラツンさん、ツックンさん、サソリさん、マムシさーん!」
その声を聞いたマラツンたちはメイとナミに気づいて頭を下げながら答えた。
「メイさん、ナミさん、こんにちはっす!!」
「こんにちは、お世話になってます!」
「お2人とも、こんにちは!」
「こ、こんにちは!!」
すると取材クルーは再び驚いてマラツンに質問した。
「あの方々は認定英雄のメイさんとナミさんですよね!? ご友人なんですか!?」
「あ、いやいやいや! フレンド登録はさせて頂いているんすけど、めっちゃ強い大先輩方なんす。おれらは幸運にもあの方たちのお店をお手伝いさせて頂いているんすよ」
こうしてマラツンたちのバックには最強レベルのプレイヤーと冥界族がいることが知れ渡り、イークラトから宣伝しに来たプレイヤーたちもマラツンたちの邪魔はしないと心に決めたのだった。




