第23話 ハデス、恐怖に陥れる
マラツンたちは無事にファイア・イーグルにトドメを刺すと、全員土下座をしてアーボンとタケチにお礼をした。
「アーボンさん、捨て身の攻撃!」
「本当にありがとうございました」
「最初は正直、ドン引きでしたが」
「ぼくたちのために、感謝です!」
すると全回復薬で回復したアーボンは笑顔で答えた。
「いやいや、おれみたいなゲームが下手なやつは、共闘したってこんな事しかできないからな。名付けて『タケチと一緒に無理やり捕獲』だ」
アーボンがそう言うと、タケチが嬉しそうに言った。
「アーボンさんはこの方法で何度も強いモンスターを捕獲してくれて僕を強くしてくれたんです。だから、恩が絶えなくて」
しかしアーボンは少し申し訳なさそうに言った。
「いやぁ……、ベンドレ師匠は何倍も格上のモンスターでも軽量な防具だけで技量で倒しちゃうからなぁ。本当はおれもベンドレ師匠みたいにカッコよく倒したいけどな。はは」
アーボンがそう言うと、マラツンたちは口々にアーボンを称賛した。
「アーボンさんの泥臭い戦い最高です」
「ぼくもそう思います! 最高です!」
「アーボンさんとタケチさん、最高!」
「こ、これが本当の師弟関係ですね!」
マラツンたちに称賛されたアーボンは気分を良くすると、格好をつけて髪をかきあげながらマラツンたちに言った。
「ふっ、そんなに褒めるなよ。ただ……、1つ言えるとすれば、おれの奥義はゴリ押しだ。それはゲームが下手なやつが最後に手に入れる奥義。プレイスキルが無いのなら硬くなってゴリ押せ。やがてそれは伝説となる……」
しかしその瞬間、
ドゴォォォオオオ!!
「へぶぅぅぅうう!!」
なんと洞窟に居るはずのロック・ゴーレムが、アーボンの顔にロケットパンチを命中させ、アーボンは顔を歪ませながら吹き飛んでいった。
「「「アーボンさん!!!」」」
ロック・ゴーレムのロケットパンチはロック・ゴーレムの元へ戻ると、アーボンはプンスカしながら立ち上がってロック・ゴーレムに叫んだ。
「おいおいおい!! せっかく、おれがキメてたのに邪魔したな!? お前は許さないぞ!!!」
アーボンはそう叫ぶと丸腰のままロック・ゴーレムへと走り込んだ。
◆
こうしてアーボンの捨て身の戦いでステータスポイントを稼ぎながらロック・ゴーレムの居る洞窟の奥までやって来ると、アパタイト鉱石がゴロゴロと転がっている場所へと辿り着いた。
道中でたくさんのロック・ゴーレムを倒したマラツンたちは大量のステータスポイントが貯まったので、すべて攻撃力と防御力に割り振った。
さらにロック・ゴーレムがドロップする岩の剣や岩の槍、そして岩の防具などの「岩シリーズ」で身を固めると、自分たちが強くなったように感じて嬉しそうに声を漏らした。
「お、おい……。おれらが岩シリーズを……」
「はい……。まさか岩シリーズをコンプ……」
「鍛冶屋解放前の最強装備だって噂だよ……」
「うん、ぼくたち間違いなく強くなってるよ」
マラツンたちは嬉しそうに笑い合いながらアパタイト鉱石を集め始めた。
するとその時、少し遠くからプレイヤーの声がした。
「あれぇ? あいつ、マラツンじゃねぇの?」
「あ、ほんとだ。インチキ・マラツンじゃん」
そのプレイヤーたちはゆっくりとマラツンたちに近づいてくると、マラツンは大量の汗をかいて目を伏せながら動きが止まった。
その様子を見たアーボンは即座に理解してマラツンに小声で言った。
「マラツン、過去にあいつらにやられたんだな。大丈夫、心配するなって」
アーボンはそう言うと、近づいてくるプレイヤーたちに話しかけた。
「いやぁ、こんにちは。彼はおれのチームのメンバーで、大切な仲間なんだ。何か用かな?」
するとプレイヤーたちはニヤニヤと笑いながら答えた。
「用は無いんだけどな。こいつ目障りでよぉ」
「レググリ辺りでイキがってる雑魚だからな」
しかしアーボンは笑顔で受け流すと頭を下げて言った。
「そうでしたかぁ、それはウチのメンバーがすみません。これからはイキがらないように言っておきますので」
それを聞いたプレイヤーたちはアーボンの言葉に大笑いするとアーボンに言った。
「おれらはコイツのせいで気分悪くなったんだぜ」
「お前リーダーか? じゃあ、土下座しろよな!」
アーボンはプレイヤーたちの言葉を聞いて即座に両膝をつき、土下座をしようと頭を下げようとした。
が、その瞬間、
「させるか!!」
ガキン!!
「ぐわぁっ!!!」
なんと、後輩のサソリが岩の大剣でプレイヤーの1人に斬り込んだ。
敵のプレイヤーはHPを減らしながらも即座に態勢を整えると、岩の大剣を装備して偉そうに言った。
「おい、イキがるなよ。こっちだって岩の装備だ。ならステータスが上のおれの勝ちだぜ」
それを後ろで聞いていた後輩のマムシは岩のナイフをそのプレイヤーに投げつけた。
シュシュシュ!
ドドド!
「ぐわっ!!」
岩のナイフはプレイヤーに全て刺さり、プレイヤーはHPをだいぶ減らされて焦った。
「て、てめぇ!」
その様子を見ていたハデスはマラツンたちを守ろうと手に紫の鎌を出現させると、それを見たアーボンはハデスを止めながら言った。
「待ってハデス。ここはマラツンたちを見守ろう。けど、もう1人は威圧して動きを止めてくれる?」
「はい」
ハデスは返事をすると、プレイヤーのもう1人の目を凝視して紫のオーラを送り込んだ。
「ひっ!!」
もう1人のプレイヤーはハデスの紫のオーラにつつまれると、とてつもない恐怖を覚えて足をガクガクと震わせた。
「あっ……。あ、あ……」
するとハデスは静かに口を開いた。
「運が悪かったですね。我が主人が望んだばかりに……。あなたは未来永劫、ここから動くことはできません。そして、その先にあるのは地獄の絶望。何万年、何億年と苦しむがいい!!」
「い、いやだ! 助けてくれ! いやだーー!!」
ゴンッ!!
息巻くハデスにアーボンがグーパンチをしてハデスに言った。
「ハデス、やりすぎ。ハッタリとはいえ怖すぎだから」
「……は、はい。申し訳ございません」
ハデスはそう言って紫のオーラを解いたが、プレイヤーはすでにログアウトしていた。




