第22話 アーボン、本物の奥義を見せる
アーボンは、ロック・ゴーレムという力は強いが動きが遅いモンスターが居る洞窟へ向かいながら気になることをマラツンたちに尋ねた。
「そういやぁ、君たちは現実世界では何の仕事してるの? ちなみに、おれは今就活中だけど。ははは」
するとそれを聞いたマラツンは笑顔で答えた。
「あ、おれプロ・ニートっす。株で食ってるんっす」
マラツンがそう言うと後輩の3人も続いた。
「ぼくは、飼ってる猫の動画で広告収入を貰っています」
「自分はFXの投資支援アプリを作ったら売れ続けてて……」
「あ、おれは特許もってて。ははは」
それを聞いたアーボンは驚きを隠せずに声を上げた
「ま! まじか! 君たち現実世界じゃ超ハイスペックじゃんか!」
するとそれを横で聞いていたタケチが落ち込んだ様子で声を漏らした。
「なんて羨ましい……。僕なんか在宅勤務とはいえ毎晩何時間もパソコンに向かってコードと、にらめっこ……」
タケチがそう漏らすと、それを聞いていたFX投資支援アプリを作ったツックンがタケチに尋ねた。
「あ、あの……、コードって、プログラム関係のお仕事ですか?」
「え? あ、ああ。僕の仕事はAIの裏方でさ。ユーザーがAIを使って生成したコードが稀に正確じゃ無いことがあって、そのクレームが来たらAIがなんで間違えたかを検証して報告する仕事なんだよ」
「あ、なるほど、そうなんですね……」
「僕はAIの補助をする人間……。なんだか、シュールで残念だよね……。はは」
「タケチさん。もしかしたらその仕事、アプリで自動化できるかもしれないのですが、詳しく聞かせてもらっても良いですか?」
「き、君、ほんとうかい!? 本当にそんな事ができるのかい!?」
「え、あ、ええと、やってみないと分からないのですが、たぶん……」
ツックンがそう言うとタケチは目をキラキラと輝かせてツックンの両手を掴んだ。
「おねがいします! ぜひ、おねがいします!!」
「は、はい! やってみます! おれもタケチさんの役に立ちたいです!」
するとその時、ハデスが大声でみんなに警告した。
「みなさん、ファイア・イーグルです! 上空から狙っています!」
それを聞いたアーボンとタケチは前に出ると、マラツンたちはアーボンたちの後ろへ下がった。
ファイア・イーグルは中型犬くらいの大きさの胴に大きな翼を持つ鷲型モンスターで、口から強烈な炎を吐き、遠距離攻撃も当たりづらい厄介なモンスターだった。
アーボンはマラツンたちを守るように立ちはだかると、自信満々に言った。
「さぁて、ステータス上げの始まりだ! まずはおれらが華麗にファイア・イーグルを捕獲して弱らせるから、君たちは全員でトドメを刺すんだ。そうすれば、かなりのステータスポイントが手に入るぞ」
「はい!」
「わかりました!」
「ありがとうございます!」
「やります!」
マラツンたちの返事を聞いたアーボンは最近購入した大盾を装備するとハデスとタケチに言った。
「ハデスは強すぎちゃうから待機で、何かあったらマラツンたちを守ってな! タケチはいつも通りで!」
「はい」
「はい!」
ハデスとタケチが返事をすると、アーボンは大盾を大剣でガンガンと叩きながら叫んだ。
「挑発の大盾、発動!! ファイア・イーグル!! お前の敵は、このおれだ!!」
するとアーボンの「挑発の大盾」に挑発されたファイア・イーグルは雄叫びをあげながらアーボンに急降下してきた。
キィィャァァアアアアア!!
ガオォォォオオン!!!
アーボンは急降下してきたファイア・イーグルを大盾で受け切ると、アーボンの肩を踏み台に、タケチが華麗なジャンプで飛び出した。
そしてタケチは空中でひねりを加えると、回転しながら落下して、ファイア・イーグルの羽を勢いよく斬りつけた。
「でやぁぁあああ!」
ズバァァアア!!!
キィィャァァアアアアア!
ファイア・イーグルは驚いて飛び上がろうとしたが、そこへアーボンが大盾を前にしながら突進した。
「とりゃぁああああ!!」
ガオォォォオオン!!!
ファイア・イーグルは思わず後ろに倒れると、アーボンとタケチの戦いを見ていたマラツンたちが感動しながら声をあげた。
「や! やべぇ! かっけーー!!」
「タケチさん、めっちゃ強いっす!」
「アーボンさん、タンクすげぇっ!」
「この後は、必殺技が出るんじゃ?」
「必殺技が出るんじゃ?」という言葉を聞いたアーボンはニヤリと笑って振り返りながらマラツンたちに言った。
「待たせたな、みんな。トドメの時間だ。これから、おれの奥義を見せる。よく見ておけよ」
「「「はいっ!!」」」
するとアーボンは突然大盾と大剣を投げ捨てた。
そしてファイア・イーグルに走り込むと、それに同調するかのようにタケチがアイテム欄を開いて操作を始めた。
その様子を見ていたマラツンたちは驚きを隠せずに声を漏らした。
「アーボンさん、丸腰で必殺技を……?」
「いやタケチさんが呼応するように……」
「うん、何かのコンビネーションだ!!」
「間違いなく、凄い必殺技が見れるよ!」
ガシッ!!!!
なんとその時、アーボンは丸腰のまま両手でファイア・イーグルに抱きついた。
「「「ええっ!?!?」」」
アーボンは必死の形相で両手両足をファイア・イーグルに巻き付けて動きを封じると、マラツンたちに大声で言った。
「今だーー!!! トドメーー!!!!!」
しかしその瞬間、パニックになったファイア・イーグルは全力でアーボンの顔に炎を吐いた。
ブォォォァァアアアアアアア!!!
「あちちちちちちちち!! はやくトドメをーー!!」
それを見たマラツンたちはドン引きしてパニックになりながら声を漏らした。
「え、ええと……、必殺……、技……??」
「ちょ、ちょっと怖い……、アーボンさん」
「え、ちょっ、めっちゃ燃やされてるけど」
「って、大丈夫……、なの……、かな……」
ドン引きしているマラツンたちに気づいたアーボンはファイア・イーグルの首元を右手で掴んで固定すると、マラツンたちに言った。
「おれは大丈夫だから! HPやばそうだったらタケチが全回復薬投げるから! でも熱いから早くやっちゃって!!」
それを聞いたタケチはマラツンたちに笑顔で親指を立てると、マラツンたちは全てを理解してファイア・イーグルに走り込んだ。




