第21話 ひろし、お願いする
翌日、家の用事を終わらせたおじいさんとおばあさんが時計台の前に現れると、なんと孫のつむぎがおじいさんとおばあさんを待っていた。
「ひろじいちゃん! ようこおばあちゃん!」
「あ、つむぎちゃん」
「あらあら、つむぎちゃんじゃない!」
すると、つむぎは少し表情を曇らせながらおじいさんとおばあさんに言った。
「ひろじいちゃん、ようこおばあちゃん、実はね……、助けてほしい事があって待っていたの」
「ええっ!? な、なにかあったのかい?」
「遠慮しないで、つむぎちゃん。出来る事なら何でも助けるわ!」
その言葉を聞いたつむぎは少し笑みを漏らすと、嬉しそうに言った。
「実はね、エストンレルトの洞窟にあるアパタイト鉱石がほしいの。植物の成長を促す肥料の原料でね、今、みんなで頑張ってる野菜を育てる実験に不可欠でなの。でも、わたしたち弱いから行けなくて……。でもイリューシュさんたちには頼みづらくて……」
すると、おじいさんとおばあさんは笑顔になって答えた。
「わかった、つむぎちゃん。わたしたちが採ってくるから安心して待っていてなさい」
「ええ大丈夫よ、つむぎちゃん。うふふ」
こうして、おじいさんとおばあさんはエストンレルトの洞窟に向かう事になったのだった。
◆
おじいさんとおばあさんは、エストンレルトの事をよく知らなかったので、イリューシュに聞いてみようと、一緒にGに区画の家に一緒にやって来ていた。
「なるほど、アパタイトですね。ふふふ」
イリューシュはG区画の大広間でおじいさんとおばあさんの話を聞くと、笑顔を見せながら説明を始めた。
「つむぎさんの言うように、アパタイトがあれば植物の成長を促すリン酸肥料が作れます。それにしても、つむぎさんはVR世界で野菜を作ろうとしているのですね」
それを聞いたおじいさんとおばあさんは笑顔で答えた。
「ええ、そのようで。ははは」
「つむぎちゃんがたちが頑張ってるみたいだから、手伝ってあげたくて」
「ふふふ、お気持ちお察しします。……ですが、エストンレルトの洞窟群は構造がとても複雑でモンスターも強いです。私たちイークラトで戦えるプレイヤーでも嫌がる方が居るほどで……」
するとその時、イリューシュはハッと思いついておじいさんとおばあさんに言った。
「あっ! もしかしたら、とっても詳しい方が居るかもしれません」
イリューシュは笑顔になると、その人物へメッセージを送った。
―― アーボンたちのチームの家 ――
アーボンとハデスとタケチ、そしてマラツンと後輩たちがチームの家でくつろいでいると、家のチャイムが鳴った。
「ピン・ポーン」
それを聞いたアーボンはウンウンと頷きながら玄関へ向かい、仲間たちに言った。
「さっき言ったイリューシュさんからの頼まれ事が始まるぞ。おれがメッチャお世話になった方たちだから、みんな、粗相のないようにな!」
アーボンがそう言うと、家にいたみんなは一斉に拳を挙げて答えた。
「もちろんっす!」
「アーボンさんが世話になったなら」
「僕らも世話になったも同然!」
「やりましょう!!」
アーボンはみんなに向けて親指を立てると、玄関を開けた。
するとそこには、おじいさんとおばあさんが居た。
「こんにちは、アーボンさん。本当に宜しいのでしょうか……。案内してくださるなんて……」
「本当にごめんなさいね、私たちのワガママを聞いて頂いて」
しかしアーボンは満面の笑顔で答えた。
「いえいえいえ!! エストンレルトの洞窟は、おれもタケチもステータス上げしてた庭みたいなもんですし、なによりご迷惑をおかけした方々に恩返しがしたいんです」
アーボンがそう言うと、居間からタケチとマラツンたちも駆け寄ってきておじいさんとおばあさんに言った。
「ここは是非おまかせてください」
「おれたちもお手伝いしますんで」
「ぼ、僕も力不足かもだけど……」
「お手伝い、……頑張ります!!」
その言葉におじいさんとおばあさんは深々と頭を下げた。
◆
こうしてアーボンたちはおじいさんとおばあさんを助けるとこになったが、おばあさんがスマイル道具店の仕事があるため、エストンレルトへは翌日行くことになった。
おじいさんとおばあさんは何度も頭を下げながらアーボンたちの家から去ると、アーボンたちは居間へと戻った。
するとマラツンたちは口々に言った。
「すっごく感謝してくれてたな……」
「ああ。おれらが感謝されるなんて」
「いいのかな。期待に答えられるか」
「うん。でも助けたいよね、本気で」
その言葉を聞いたアーボンは格好をつけながらみんなに言った。
「なぁ、みんな……。もし明日、ひろしさんと洋子さんがエストンレルトへ行くためにこの家に来た時……、おれらが、すでにアパタイトを用意してたら……、カッコ良くね?」
「えっ! それまじ仕事できるやつ!」
「やば! それカッコイイっすね!!」
「じゃあ、今から採りに行くんすね!」
「行きましょう、すぐ行きましょう!」
すると一際気合が入り、オーラを放っていたタケチがアーボンに言った。
「アーボンさん、それ本当にカッコイイです。上のG区画の家には我らのアイドル、ルル様も遊びに来られると聞いています。ならば、我らの活躍はルル様の耳にも届くのだと……」
コォォォオオ……
タケチはオーラを大きく膨らませると、マラツンたちもそれに呼応するように気合を入れてオーラを膨らませた。
それを見たアーボンはウンウンと頷きながらタケチとマラツンたちに言った。
「そうだな。まぁエストンレルトの洞窟だったら、君たちのステータスも上げられそうだし一石二鳥だ。……おし! おれらが役に立てるって事を皆さんに見せつけようぜ!!」
「「おぉー!!」」
こうしてアーボンとハデス、タケチとマラツンと後輩たちはモービルでエストンレルトの洞窟へと向かった。
―― エストンレルトの洞窟群 ――
エストンレルトの洞窟群にたどり着いたアーボンたちがモービルから降りると、アーボンはマラツンたちに軽く警告した。
「一応、この辺のモンスターは溶岩地帯あたりのモンスターより10倍くらい強いから気をつけるんだぜ」
「ええっ!? じゅ、10倍ですか!?」
「溶岩モグラとかの10倍って事……?」
「ほ……、本当に大丈夫なのかなぁ……」
「とんでもない所に来ちゃったのかなぁ」
しかしアーボンは笑顔で答えた。
「大丈夫、大丈夫。おれもタケチもココでステータス上げしてたし、ハデスもいるしな。あのベンドレ師匠だってイークラトに行く前はココで修行したという名所だ! 君たちも強くなるぞ!」
その言葉にタケチとハデスもウンウンと頷いたが、マラツンたちは不安しか感じられなかった。




