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第2話 ひろし、美しい技を見る

 その頃、G区画の家ではみんなが集まって楽しく過ごしていた。


 おじいさんは和室でタッちゃんに溶岩ようかんをあげ、めぐとイリューシュは新曲を作っていた。


 アカネは難しい顔をしながら大熊笹から柔道の物理学を聞いていて、白タンは寝ているララガたちの横でボーッとしていた。


 そして、外では茂雄がロッキングチェアでウトウトしていて、黒ちゃんとベンドレはリングで稽古をしていた。


 ガンッ! キンッ!


 ブンッ!!


 黒ちゃんは手に入れた最強の打撃武器「モーニングスター」でベンドレと対等に渡り合うほどになっていた。


 キン! ドガッ!


 しかし、ベンドレはモーニングスターは弾き返した隙に回し蹴りを繰り出すと、黒ちゃんにクリーンヒットして消滅させ、コーナーにリスポーンさせた。


 黒ちゃんは少し悔しそうにしながらも笑顔で言った。


「ベンドレさん、さすがです……」


 するとベンドレは少し息を荒くしながら答えた。


「いえ、黒ちゃんさん。今は私もギリギリでした。強くなりましたね」


 それを聞いた黒ちゃんは頭を下げながら言った。


「いえ、これも全てベンドレさんのおかげです。それにしてもベンドレさんの多彩な蹴り、いつも感服します」


「いえ、そんな。私は現実世界でフルコンタクトの空手をやっていたので少し慣れているだけです」


「おお、なるほど。それがベンドレさんの強さの秘訣でしたか!」


「黒ちゃんさんは柔道ができますよね。柔道を攻撃に組み込んでみたらどうでしょうか」


「柔道を……?」


 黒ちゃんは、まじまじと自分の武器のモーニングスターを見ながらブツブツと呟き始めた。


「モーニングスターと柔道……。モーニングスターは棒の先にトゲのついた鉄球がある武器……。これに柔道が活かせるのだろうか……」


 その時、黒ちゃんは電光を走るかのように閃いた。


「そうか! この長さとトゲなら!」


 すると黒ちゃんは深々と頭を下げながらベンドレに言った。


「ベンドレさん、ありがとうございます! 閃きました! もし宜しければ、もう1戦お願いできないでしょうか!」


 頭を下げる黒ちゃんにベンドレは笑顔になると、剣を構えながら答えた。


「わかりました。やりましょう」


 ベンドレがそう言うと黒ちゃんはモーニングスターをギリギリまで短く持って構えた。


 それを見たベンドレはいつもと様子が違う黒ちゃんを警戒しながら剣を下段に構えた。


 すると黒ちゃんは腰を低くして慎重にベンドレに近づき、間合いに入った瞬間に一気に飛び込んだ。


「おぉぉおお!」


 そして左手のモーニングスターで叩き上げるようにベンドレの腹を狙うと、下段に構えていたベンドレは剣でモーニングスターを上へ弾き飛ばした。


 キン!


 するとその瞬間、黒ちゃんは左手のモーニングスターを意図的に空へ投げ上げてベンドレの腕を掴むと、なんと右手のモーニングスターのトゲででベンドレの腰の甲冑を引っ掛けた。


「なにっ!」

「でぇぇい!!」


 黒ちゃんは左手でベンドレの腕を引き上げながら右手のモーニングスターも持ち上げてベンドレの体を一気に抱えあげた。


 そしてそのまま肩の上までベンドレを持ち上げると、そのまま一気にリングへと叩きつけた。


 バンッ!!


「くっ!」


 黒ちゃんのモーニングスターを使った肩車が見事に決まると、黒ちゃんは空に投げ上げていた左手のモーニングスターを華麗にキャッチした。


 バシッ


 そして両手にモーニングスターを持つと、倒れているベンドレの腹に向かって両手に持ったモーニングスターを叩きつけた。


「でやっ!!」

 ドゴン!!!


 ベンドレは両手剣でモーニングスターを受け止めたが、黒ちゃんは素早くモーニングスターを投げ捨てて、腕ひしぎ十字固めに持ち込んだ。


 バッ!

「でぇえい!」


 グググググッッ!!


 腕を固められたベンドレは笑みを浮かべて思わず声を漏らした。


「ふっ。これは素晴らしいコンボだ……」


 シュゥゥウウ……


 ベンドレはそう言い残して消滅すると、コーナーにリスポーンした。


 黒ちゃんは突然消滅したベンドレに驚きながらも立ち上がり、コーナーにリスポーンしたベンドレに頭を下げた。


「ベンドレさん! ベンドレさんのお陰で自分の戦い方がわかったような気がします! ありがとうございます!」


 黒ちゃんが頭を下げると、ベンドレは少し嬉しそうにしながら答えた。


「黒ちゃんさん、いまのコンビネーションは素晴らしかったです。まさか投げられるとは……」


「はい。実は以前からずっと思っていたのですが、鎧を着た騎士は(えり)(そで)が無いので一本背負いや大外刈りなど限られた技でしか投げられなかったのです」


「ほう、なるほど」


「ですが、モーニングスターのトゲを使えば鎧に引っ掛けて投げられることが分かりました」


「おお、それは素晴らしいです!」


 ベンドレは嬉しそうに笑うと剣を構えながら黒ちゃんに言った。


「もう一戦おねがいしても良いでしょうか。次は本気で行かせていただきますので」


 するとその時、リングの下からルルの声がした。


「あら、黒ちゃん新体操でもやってるのかと思ったわ」


 それを聞いた黒ちゃんは思わず聞き返した。


「あ、ルルさん、こんにちは。……え、ええと、新体操ですか?」


「そうそう、黒ちゃんの持ってる武器、ちょっと凶悪な新体操のクラブみたいだし、上に投げてたからさ」


「クラブ……? おお、英語で棍棒という意味ですね。新体操も棍棒を?」


「そうよ、こういうの」


 ルルはそう言うと、新体操で使うクラブを出現させた。


 新体操のクラブは2本一組の短い棒で、先が膨らんだ形をしていた。


 それを見た黒ちゃんは驚きながらルルに尋ねた。


「なんと! 新体操でもそのような武器のようなものを?」


「そうよ。……もう、しょうがないわねぇ。ちょっと見せてあげるわ 」


 ルルはそう言うと、美しく走り出し、華麗にクラブを振って新体操を始めた。


 クルッ……、スタッ、ブン!


「おお! 美しい!」


 黒ちゃんが驚いていると、ベンドレが黒ちゃんに話した。 


「ルルはアイドルになる前は新体操をやっていたのです」


「なるほど、そういうことでしたか」


 ルルが新体操を始めると、家の中に居たみんながそれに気づき、自動ドアからワラワラと出てきた。


「ルルさんすごい!」

「素敵ですね!」

「おお〜」

「うわ、すげぇ!」


 ルルはそれに気づくと気分を良くして、大技を連発した。


 シュッ、タタタタ……、クルン!


「「「おおおおお!」」」


 みんなの歓声が巻き起こると、ルルは高速にクラブを回転させならがポーズを決め、クラブを二本同時に空へ投げ上げた。


 バッ!


 そして美しく片足立ちで体を縦に二回転させると、正確にクラブをキャッチしてフェニッシュを決めた。


「「「おおおおおおお!!」」」

 パチパチパチパチ!!


 みんなはルルの演技に思わず拍手すると、ルルは美しくお辞儀をした。

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