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第1話 ひろし、知らないうちに

 ー 翌日 レググリの溶岩地帯 ー


 アーボンとハデスはレググリの溶岩地帯で溶岩キノコを集めていた。


 アーボンはメイが大司教になるのを助けたことで、おばあさんたちのお店のお手伝いとしてむかえられていたのだった。


 そして今日は初仕事として、ハデスと一緒に溶岩キノコを集めにレググリの溶岩地帯に来ていた。


「なぁハデス、これって溶岩キノコ?」


「はい。そのとおりです」


「うっわー、こんな見つけづらいの最低20個も集めるの?」


「はい。しかしメイ様やナミ様は毎日集めているとの事で」


「まじで? ってか、店で売ってないの? 溶岩キノコ」


「レググリの町で売っています」


「なんだ、そんなら町に買いに行こうぜ」


「そうですね」


 アーボンとハデスはモービルに乗るために、溶岩地帯の外へ向かって歩き出すと突然、遠くから声が聞こえてきた。


「おっしゃー! 溶岩ネズミつかまえた!」


「ちゅうちゅうちゅう!」


「あ、おい! 逃げるな!」


 バシッ!


「ちゅぅぅうう!」


 アーボンが声のするほうを見ると、4人の男性プレイヤーが小さなネズミを力ずくで捕まえようとしていた。


 それを見たアーボンは4人のプレイヤーに声をかけた。


「おいおい、そのネズミ嫌がってるじゃん。やめなよ」


 それを聞いたプレイヤーの1人がアーボンをにらみつけながら答えた。


「はぁ? これ高く売れるんだよ。文句があるなら先輩が黙ってないぜ?」


「先輩?」


 すると1人の召喚魔道士が前に出てアーボンに言った。


「おい。おれはベヒーモスを召喚できる召喚魔道士だ。おれを怒らせる前に消えな」


「は? ってか君、ベヒーモスを召喚するくらいで、何でそんなにえらそうなの?」


「はぁ?」


「リバイアサンとかオーディンとか軍神零式・滅とかさぁ、もっと強いのいるじゃん」


「な、なんだと! そんなの召喚できるわけ無いだろ! くそっ、ベヒーモスのいかづちで消し飛ばしてやる!」


 召喚魔道士はそう言うと詠唱を唱えてベヒーモスを召喚した。


 ブモォォオォォオオオオ!


 ベヒーモスは召喚魔道士の前に現れると、鼻息荒くアーボンをにらみつけた。


 召喚魔道士は高笑いをすると、威圧的にアーボンに言った。


「どうだ! 土下座するならゆるしてやってもいいぞ。はっはっは」


「土下座? まぁ、土下座するのは慣れてるけどな……。しょうがないな。ハデス、やっちゃって」


「はい」


 ハデスは紫色に光るかまを手に出現させると、軽くベヒーモスに投げつけた。


 ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン……


 ドッ。


 ブモォォ……


 シュゥゥゥウウ


 ベヒーモスはHPがゼロになって消滅していった。


「なっ! なな、なななんだ! なんなんだお前は!」


 先輩が狼狽うろたええながら尻もちをつくと、その隙を見て溶岩ネズミは逃げ出し、アーボンに向かって走り抜けた。


 テテテテテテテテ……


 そしてネズミはアーボンの体をよじ登ると、アーボンの肩の上に乗った。


「お、おおっ。ネズミが登ってきた。ははっ、かわいいなぁ」


 アーボンはネズミに驚きながらも指先でネズミの頭を撫でると、アーボンはネズミが震えていることに気がついた。


「お前、まえふるえてんじゃんか……。でも、もう大丈夫だ。おれはビビリだから、お前の気持ちはよーく分かる。よしよし」


「ちゅうぅう」


 ネズミは嬉しそうに返事をすると体を丸くした。


「なぁ、ハデス。あいつら全員お仕置きしてやって。ネズミくんのカタキ」


「はい。しかしアーボン様。すでに4人ともおりません」


「え?」


 ハデスの言う通り、4人はすでに逃走していた。


「アーボン様、追いかけて抹殺まっさついたしましょうか」


「あ、いやいや、それはさすがに可哀想かわいそうだわ。ってかネズミくんが無事で良かったよ」


「そうですね」


 アーボンはネズミを優しくつかむと、地面に置いた。


「じゃ、気をつけろよ。また、あんなヤツらに捕まらないようにな」


「ちゅちゅっ」


 テテテテテテテテ……


 ネズミは何度もアーボンに振り返りながら溶岩地帯の奥へと逃げていった。


 ー 1時間後 ー


「ただいまー」


 アーボンはピンデチのお店に戻ると、メイとナミが迎えた。


「おかえり!」

「ぉかえり」


「はい、溶岩キノコ20個」


「お疲れ様!」

「ぉつかれ」


 するとメイがアーボンに気になっていたことを尋ねた。


「ねぇ、アーボンさん。ツイッタグラムでアーボンさんのこと書いてあるの見た?」


「え、そうなの? おれ、なんか炎上するような事やったっけ」


「そうじゃなくてね、アーボンさんの仲間のタケチさんっていたじゃん?」


「あぁ、タケチね。そういえば、あいつメッセージしたのに返信してこないんだよな」


「あの人、ちょっとヤバくなっててさ」


「え? あの真面目まじめなタケチが?」


「うん、これ見て」


 メイはアーボンにツイッタグラムのアドレスを送信した。


 ーーーーーーーーーーーーーー

 が永遠のリーダー、アーボンさんが洗脳されてしまった!


 運営がアーボンさんを洗脳したのだ!


 過去には黒のリーダー、マリさんが消され、あの最強の指導者ベンドレさんも洗脳された証拠をつかんだ!


 運営は、都合の悪いプレイヤーを抹殺まっさつして強制的に穏やかな生活をさせている!


 平穏に暮らすだけがゲームじゃない! 今こそ、立ち上がるべきだ!


 不満のあるプレイヤーたち、特に課金勢かきんぜいよ集まってくれ。このゲームをぶち壊して我らの意見を飲ませるのだ!


 そして、新しいこの世界を建設するグレート・リセット(壮大な初期化)を実現しよう!


 #グレート・リセット

 ーーーーーーーーーーーーー


 タケチのツイッタグラムを読んだアーボンは顔をしかめて呟いた。


「うわ……、タケチ……」


「でしょ。やばくない?」


「うん、やばい。ってか、タケチのほうが洗脳されてるんじゃ……」


「だよね。でもさぁ、フォロワー見てよ」


「えっ! 1万超えてるんだけど!」


「そう。でさぁ、フォロワーさんのページに行くと、みんな『グレート・リセット』って言ってるんだよね」


「うわわ、これ完全にタケチがプレイヤーたちを洗脳してんじゃんか」


 アーボンは驚きながらも少し悲しい表情になった。

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