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第3話 ひろし、スイーツを頂く

 ルルは新体操の演技を終えると、見学しに来たおじいさんたちのところへやって来て両手いっぱいに箱に入ったシュークリームを出現させた。


「はい、みんなで食べて! エストンレルトに行ってきたから、ついでに爆弾シュークリーム買ってきたわよ」


「ああ、これはありがとうございます」

「やった!」

「あのシュークリーム?」

「美味しかったやつだ!」

「大きなシュークリーム!」


「たっくさんあるから、中でゆっくり食べましょ!」


「「はーい!」」


 みんなは笑顔で返事をすると、ルルを先頭に家の中に入っていった。


 ベンドレはそれを見送ると、少し笑みをこぼしながら黒ちゃんに言った。


「やはり、なんというかルルは……、えっ!?」


 ベンドレが黒ちゃんに視線を移すと、なんと黒ちゃんがモーニングスターを新体操のクラブのようにグルグルと回していた。


「お、おおお、なんとか真似できそうだぞ……。うん、こうか?」


 黒ちゃんは胸の前で両手を近づけながらブンブンとモーニングスターを振り回した。


 ブン……、ブンブン……


「なるほど、そうか片手づつ8の字にすれば……、うん、おお、そうか! それで交差すれば……」


 ブンブンブンブンブン!


 なんと黒ちゃんは凶悪なモーニングスターを新体操の技のように超高速回転で振り回し始めた。


「おお! これは良いぞ! ……ん? という事は……」


 すると突然、黒ちゃんは体を横に回転させはじめた。


「もしや、この遠心力で……」


 ブンブンブンブンブン!

 ブンブンブンブンブン!


「おおりゃぁあぁあ!」


 黒ちゃんは急に気合もろともリングのコーナーに向かってモーニングスターを投げつけた。


 ブンブンブンブンブン!

 ドゴォォオオオ!!


 すると2本のモーニングスターは絡み合うようにリングのコーナーに飛んでゆき、なんとリングのコーナーを破裂させるように破壊してしまった。


「し、しまった! やりすぎたか!」


 黒ちゃんが慌てコーナーに走っていくと、それを見たベンドレは思わず小さく呟いた。


「なっ……、なんという破壊力だ……。あれを食らったら私も危ないかもしれない……」


 家の中からその様子を見ていたルルは、少しだけニヤリと笑って呟いた。


「黒ちゃん、化けるかもしれないわね……。うふふ」


 ー エストンレルト ー


 エストンレルトの街は大聖堂のある中世のような町並みで人気のエリアだが、その街以外は山ばかりの土地だった。


 その山ばかりの土地の一番外れは溶岩地帯の近くにあり、一本道を通ってレググリに繋がっていた。


 その場所からはエストンレルトの街に入るルートは無いが、無数の洞窟が存在し、強いモンスターが待ち構えてた。


 通常は一攫千金を狙って強いモンスターに挑むプレイヤーが洞窟に入るが、その洞窟の1つの最深部をタケチがグレートリセットの拠点として改装していた。


 そしてそこで、タケチはアーボンの有力情報を持っているという4人組をモービルで招待して話を聞いていた。


「それは、本当ですか!?」


「はい、たぶんアーボンさんです」

「ほんとっす。溶岩地帯に居ました」

「間違いないです」

「仲間にベヒーモスを一撃でやられました」


 なんとその4人組はレググリで溶岩ねずみを捕まえようとしていた4人組だった。


 タケチは身を乗り出すと、4人に尋ねた。


「そ、それで、アーボンさんはなぜレググリの溶岩地帯に?」


 すると4人のうちの1人が答えた。


「えっと、遠目だったので確実じゃないんですけど、溶岩キノコを探してるみたいでした」


「溶岩キノコだって?」


「はい。溶岩の裏とかを見て回って、キノコを収穫したところは見ました」


「……なんてことだ。きっと強制労働させられているに違いない……」


 タケチは突然頭を抱えると、小さい声でブツブツと呟きだした。


「やっぱりグレートリセットだ……。やらなきゃだめだ、やらなきゃだめだ、やらなきゃだめだ……」


 その様子を見ていた4人は少し気味悪がると、タケチは突然頭をあげた。


 バッ!


「「うわっ」」


 4人は一斉に怯えると、タケチは少し視点の合わない目で4人に言った。


「き、君たち、強くなりたくないかい?」


「え?」

「できれば」

「見返してやりたいし」

「すごいの召喚できたら……」


 それを聞いたタケチは怪しい笑みを浮かべると4人に提案した。


「じゃあ、僕と契約しようよ。君たちを強くしてあげるから」


「……契約」

「え、ええと」

「……いや、ちょっと……」


「はい、お願いします!」


 なんと召喚魔道士だけが頭を下げてタケチの提案を飲んだ。


「「ええっ!」」


 残りの3人は驚いて召喚魔道士に近づき、小声で召喚魔道士に言った。


「せ、先輩、やばいっすよ」

「あの人、目イッちゃってるし」

「やめたほうがイイっすよ」


 しかし召喚魔道士は3人に言った。


「なぁ。おれら、もうどれくらいレググリでくすぶってる? 自分たちが、ろくにメインクエストもサブクエストも進められねぇ下手くそだって気づいてるだろ?」


「……」

「……はい」

「……そうっすね」


「手伝ってくれる仲間も居ねぇことも」


「「……」」


「実はな……、おれのベヒーモスは、現実世界の闇業者に30万払って不正チートして手に入れたんだ……。けど、ベヒーモスより強いモンスターはいくら金かけてチートしたって勝てやしねぇよ……」


 すると召喚魔道士は目に涙を浮かべながら呟いた。


「おれだってさ……、おれだって強くなりてぇよ」


「先輩……」


 すると、それを聞いていたタケチは突然大粒の涙を流しながら召喚魔道士の前にやってきて言った。


「わかるよ! 僕も弱かったから分かる! アーボンさんは弱かった僕を強くしてくれたんだ! だから僕も君を強くしたいんだ!」


 タケチの言葉を聞いた召喚魔道士は膝をつくと深く頭を下げて言った。


「おれはマラツン。契約でも何でもする。タケチさんに付いていきます」


 タケチはマラツンの言葉に感動すると、マラツンの腕を引き上げながら言った。


「ありがとうマラツンくん。契約は大したことじゃないんだ。僕が君を強くしたら、毎日お願いしたプレイヤーを倒してくれればいいんだ」


「プレイヤーを……。……わ、わかった。約束する。何でもする」


 するとタケチは再び視点の合わない目で少し笑いながらマラツンに言った。


「ふふ。うれしいよ、マラツンくん。でも絶対に負けないでね。弱いと思われたら運営にナメられちゃうからさ……」


 タケチはそう言いながらマラツンの両肩に手を乗せると、マラツンは怯えながら答えた。


「あ、ああ。も、もちろんだ」


 するとその時、残りの3人が突然逃げ出した。


「に、にげろ!」

「ああ!」

「やべぇぞ!」


 しかしタケチは逃げてゆく3人に忠告した。


「ここはレググリから来られるけどエストンレルトだよ? 外のモンスターは強いよ? 僕なしでモービルが乗れる所まで帰れるのかい?」


 それを聞いた3人はタケチの言葉に立ち止まった。


「や、やべぇ」

「そうだった……」

「……」


 するとタケチは立ち止まった3人を突き放すように言った。


「それでも帰るならVRグラスを外してログアウトすれば早いんじゃないかな。ステータスポイントはもらうけど」


「おいおい、やめてあげなよタケチ」


 するとその時、立ち止まった3人の奥から誰かの声がした。

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