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第15話 アカネ、師匠を思う

 こちらへ歩いてくるドラガに、おじいさんたちとおばあさんたちは武器を構えると、マユは少し焦りの表情を見せながらナミに言った。


「あれ、やばいよね」

「ぅん。お母さんの爆発でも倒せない」


 するとその時、なんとゴーストとメイが海岸に走ってやって来た。


 それを見たマユは驚きながら声を上げた。


「メイ! それにゴーストさん!」


 驚いているマユにメイは笑顔で答えた。


「マユ、ナミ! もう大丈夫だよ。わたしとゴーストさんがダメージ与えるから、あとは宜しくね!」


「えっ!?」

「ぅん」


 するとメイは大司教の杖を出現させて、バッターボックスに立つバッターのように杖を構えると、笑顔でゴーストに尋ねた。


「この杖って、遠心力がけっこう強く出るから、地面スレスレのほうがいい感じ?」


「ははは、そうですね。さすがです。あとはリリースの角度です」


「おっけー! 敵に飛んでくようにリリースすればいいんだよね?」


 メイはそう言うと、手に持った杖をバットのように突き出して構えた。


「おっし! いくよ!」


 そして左利きのメイは杖を大谷翔平のように構えると、右利きのゴーストと並び立ってニヤリと笑った。


「記念の大司教、一発目の攻撃!」


 そして大司教の杖を大きく振りかぶると、下からえぐるように振り上げて一気に杖を振り抜いた。


「いっけぇぇぇえ! ウィンド・ブッチャー!!」


 メイが杖を振り抜くと、無数の刃がドラガたちを襲った。


 ズバババババババババ!!


 ゴーストもそれに合わせるように大司教の杖を振り抜くと、メイよりも大きなウィンド・ブッチャーを繰り出した。


「ふんっ!!」

 ズバババババババババ!!


 2人が生み出した無数の刃は一瞬にしてドラガたちを切り裂くと、なんと空に無数の光の魔法陣が現れた。


 それを見た大熊笹たちは、それがルルのものだと分かると、一斉にドラガたちから距離をとった。


 その瞬間、


 ズドドドドドドドドドド!


 光の魔法陣から無数の光の矢が放たれると、ドラガたちは翼を使って逃げ始めた。


 しかしドラガたちの殆どはルルの光の魔法で撃ち落とされ、3体のドラガだけが光の矢から逃げ延びた。


 それを見たおじいさんは、火薬玉を投げつけてドラガに攻撃した。


 シャァァアアア……ドガン!

 シャァァアアア……ドゴォ!


 そしてメイも再びウィンド・ブッチャーを繰り出そうとしたが、視界に「ウィンド・ブッチャー、リキャスト中」の文字が現れて杖を振ることができなかった。


 それを見たメイはゴーストに尋ねた。


「ゴーストさん、なんかリキャスト中って!」


「メイさん。ウィンド・ブッチャーは強力な魔法ゆえ、一度使うとMPに関係なく、しばらく使えないのです」


「えっ! まじで!?」


 メイが驚いていると、逃げ延びたドラガ3体がみんなと少し離れていたアカネと大熊笹の前に降り立った。


 それを見たアカネと大熊笹は急いで「目潰しの砂」を用意して備えた。


 しかし大熊笹は攻撃力があるアーボンが走ってくるのが見えていたものの間に合わないと悟り、アカネに言った。


「アカネさん、敵は3人。アーボンさんは間に合いそうにありませんな」


「だね、熊じぃ」


「では、ここは師匠のわたしが盾に……。あっ! アカネさん!?」


 大熊笹は捨て身の攻撃に出ようと構えた瞬間、なんとアカネが目潰しの粉を投げつけながらドラガたちに走り込んだ。


 ブワッ!


 アカネはドラガは目潰しの粉を食らわせると、ドラガの(ふところ)へ素早く飛び込んで大熊笹に言った。


「熊じぃ! こういうのは弟子の仕事だよ! あとはお願い!」


「あっ! アカネさん!」


 大熊笹は慌ててアカネを助けに走ったが、他のドラガが大熊笹の行く手を(はば)んだ。


 その瞬間、大熊笹の目の色が変わった。


「道を開けなさい!!」


 大熊笹は大声で叫ぶと、行く手を阻むドラガに肩でタックルを食らわせて宙に浮かせた。


 ドガン!!


 そして恐ろしい速さで右腕を掴んで巻き込むと、見たこともないような荒々しい一本背負いを放った。


「いやぁあぁああ!」


 ブワッ!

 ドガン!!


 大熊笹はドラガの頭を砂浜に打ち付けると、なんとドラガの右肩を踏み(おさ)えて体ごと回転させ、力づくでドラガの右腕を引きちぎった。


「でやぁぁ!」

 バキョッ!!


 グゥォォオオオ!!


 右腕を引きちぎられたドラガは大ダメージを受けて転がるように逃げたが、HPが無くなって消滅していった。


 大熊笹はアカネを助けに再び走り出したが、なんとその目の前にはドラガの剣に突き刺されたアカネがいた。


「アカネさん!!」


 大熊笹はカッと目を見開くと、アカネを突き刺したドラガに飛び込んでいった。


「アカネさんを離しなさい!!」


 ガッ!


 大熊笹はドラガの首を掴んで腰を入れると、ドラガの右足を掴んで一気に肩の上に担ぎ上げた。


 アカネはその衝撃で剣から逃れたが、すでにHPは無くなっていた。


 アカネは力尽(ちからつ)きて砂浜に転がると、申し訳無さそうに大熊笹に言った。


「熊じぃ。剣、よけられなかった。出来の悪い弟子でごめんね……」


 シュゥゥゥウウ……


 アカネが消滅していくと、大熊笹の顔は鬼の形相へと変わった。


「うぉぉおおお!!」

 ドガン!!


 大熊笹は担ぎ上げたドラガを力づくで叩きつけると、素早く腕ひしぎ十字固めに持ち込んだ。


「いやぁあぁああ!!」


 そして、大熊笹は大声をあげると体を一気に反らし、ドラガの腕を引きちぎる勢いで反らせていった。


 しかしその時、最後の1体のドラガが剣を振りかぶって大熊笹の頭を狙った。


 大熊笹はそのドラガを鬼の形相で(にら)みつけると、襲いかかるドラガにおじいさんの火薬玉が炸裂した。


 ドゴォ!!


「はっ!」


 その爆発音に大熊笹は我に返ると、素早くステップを踏んでドラガたちから離れた。


 その瞬間、遠距離攻撃ができるおじいさん、おばあさん、ナミとララガが残ったドラガに一斉攻撃を仕掛けた。


 シャァァアアア……、ドガン!

 シャァァアアア……、ドゴォ!


「凍てつく氷の女神たちよ、我に冷血なる力を与えたまえ。凍る六花の結晶をもって嘆願する。あの者に絶対零度の裁きを!」


 キーーン……、ガガガガン!


 そしてさらにナミがララガのお母さんを走らせた。


「お母さん!」


 ガァァアアアア!!


 総攻撃に大きくHPを削られたドラガ2体は、やっと辿り着いたアーボンとマラツンたち、そして茂雄がトドメを刺して、ドラガたちは全滅した。


 その様子を見ていた大熊笹はガックリと両膝をついて、頭を項垂(うなだ)れて呟いた。


「やってしまった……。みなさんは遠距離攻撃の(すき)を伺っていたはず……。怒りに任せて、みなさんの邪魔を……。なんと間抜けな事をしてしまったのか……」


 大熊笹はそのまま砂浜にうずくまってしまうと、大熊笹の周りにみんなが集まってきた。


 そして、おじいさんんは優しく大熊笹に話しかけた。


「大熊笹さん、とっても格好良かったですよ。アカネさんを想う気持ちが伝わってきました」


 すると、茂雄も笑顔で大熊笹に言った。


「大熊笹さん、とても勇気をもらいました。最高のお師匠さんですね」


 しかし大熊笹は下を向いたまま答えた。


「申し訳ございません。わたしの修練が足りませんでした。わたしは冷静さを失い、みなさまにご迷惑をおかけいたしました」


 するとその時、ルルとメイとナミが感動しながら大熊笹に言った。


「大熊笹さん、ほんとに泣けたわよ!」

「ほんと、それ! まじで感動!」

「ぅん!」


 するとゴーストも号泣しながら大熊笹に言った。


「かっ、感動しました。弟子を想って格上(かくうえ)の敵と必死に戦う姿……、うっ、ううっ。素晴らしい! 私の力不足、お許しください!」


 ゴーストも大熊笹の前に(ひざまず)くと、アーボンとマラツンたちも走って大熊笹のところへやってきた。


「「大熊笹さん!」」


 アーボンたちが申し訳無さそうに膝をつくと、大熊笹は大粒の涙を流しながら、ゆっくりと顔を上げた。


 そして、しばらく何も言えずに涙を流すと、深々と一礼をして、みんなに言った。


「弟子の危機(きき)(われ)(わす)れ、みなさんにご迷惑をおかけするなど、師匠として()骨頂(こっちょう)。みなさん、申し訳ございませんでした」


 するとその時、誰かが大熊笹の右腕を掴んで持ち上げた。


 大熊笹は右腕を持ち上げた人物を見ると、なんとリスポーンして急いで戻ってきたアカネだった。


 アカネは満面の笑顔で大熊笹に言った。


「なに泣いてんだよ熊じい。あたしは大丈夫だよ。でも熊じいが助けに来てくれたとき、めっちゃカッコよかったよ! ありがとね熊じい」


「アカネさん……」


 アカネは笑顔のまま涙が流れたが、それを見られないように大熊笹に抱きついた。

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