第14話 ひろし、最強と再び
その頃、司教になるためのクエストに使われるヤームの街で禍々しいオーラを放つ「教区長エミリー」が動き始めた。
教区長エミリーとは絶大な力をもつサブクエストのボスキャラで、その強さはイークラトのプレイヤーでも討伐は容易ではないほどだった。
そして、それを操っていたのはメイとララガと戦って敗れた大司教だった。
なんとその人物は、イグラァ社内でピンデチの非戦闘区域を4kmずらした張本人で、再びメインサーバーに入り込み教区長エミリーを不正にハッキングしたのだった。
その人物は教区長エミリーの動きを確認するように手足を動かすと、ニヤリと笑って呟いた。
「おお、これほどのものだったのか……。ゲームでは強すぎるがゆえに、力を出せないように制限をしていたんだな……」
するとその人物はエミリーの出現位置の教会を出て、教会の前の階段にいる大柄なゾンビに向かって歩いていった。
ゾンビはエミリーに驚いて振り向くと、その人物は制限されていた攻撃力を解除するコマンドを入力してソンビに攻撃を仕掛けた。
指示を受けたエミリーは素早くゾンビの頭を右手で掴むと、そのまま地面に叩きつけた。
そして、転がったゾンビを両手で叩きつけると、ゾンビは静かに消滅していった。
「おおお! 制限を外したら強いぞ! ははは!」
その人物はエミリーの強さに笑うと、夜空に向かって狂気の咆哮をした。
キィャァァァアアアア!!
「はは! ははは! 凄いじゃないかエミリー!」
その人物はエミリーと共に狂気の笑いを浮かべた。
◆
その頃、イグラァの社内では、清掃員の男性が大谷に報告をしていた。
大谷は清掃員の報告を受けると驚いて聞き返した。
「それは本当なのか?」
「あ、は、はい。誰も居ない営業部の掃除していたら、急にパソコンの電気がついて……。もう、お化けかと思いましたよ」
「その時、君以外はだれも居なかったんだな?」
「ええ、はい」
「わかった。報告、感謝する!」
大谷はそう言うと、営業部へと走っていった。
ー 営業部 ー
大谷は全員退社して誰も居ないはずの営業部のドアを開けると、部屋の奥がぼんやりと明るくなっているのが見えた。
「部長のパソコンか!」
大谷は急いで部長のデスクへ行くと、パソコンが起動していてモニターには複雑なプログラムが表示されていた。
それを見た大谷はキーボードを操作し始めた。
「営業部長……。権限を利用してリモートで侵入したか。まぁ、最初は彼のプログラミング技術を評価して雇ったからな。これくらいの事はできるだろう。……しかし、やってくれたな」
大谷はそう呟くと、席に座ってニヤリと笑みを浮かべた。
「ほぉぉ……。エミリーを乗っ取ったか……。さらにドラゴンまでも……。面白い。おまえを特定するために少しは泳がせてやる。だが、このプログラムを作り上げた私に喧嘩を売った事は後悔させてやろう」
大谷はそう言うと、凄まじい速さでキーボードを打ち始めた。
◆
その頃、ピンデチの村の裏口でおばあさんたちの夕飯と交代していたマサは目を疑っていた。
「あれ……、ホワイトドラゴンだよな?」
マサに言われて空を見上げた黒の精鋭部隊たちもホワイトドラゴンを確認した。
「そのようですね」
「戦闘準備をしましょう」
「おい見ろ、誰か乗っている」
マサは目を凝らしてホワイトドラゴンを見ると、ホワイトドラゴンの上に教区長エミリーが乗っているのが見えた。
「おいおいおい。やべぇのが来たぞ。最強が最強を乗せて来てんじゃんか」
マサは手足に岩を纏わせて戦闘態勢を整えると、黒の精鋭部隊たちも武器を構えた。
ー 現実世界 ー
その頃、おばあさんは台所でインスタントラーメンを食べていた。
ズルズルズル……
「今日は大変な日ね……。でも、こんなに楽しませてくださるゲームには少しでも貢献しないと」
おばあさんがラーメンを急いで食べていると、おばあさんのスマホが鳴った。
♪ピロリロリン♫
おばあさんは慌ててスマホを開くと、メッセージが来ていた。
ーーーーー
マサ:ごめんなさい。マサ隊全滅。誰か来れる人は裏口に来てください
ーーーーー
「えっ!!」
ズルズルズル!
おばあさんは慌ててラーメンをすすると、急いで居間に行ってVRグラスをかけた。
◆
おばあさんが時計台の前に現れると、遠くでイリューシュたちが戦っているのが見えた。
「あっ! イリューシュさん!」
おばあさんは急いでイリューシュたちが戦っている裏口へ向かうと、イリューシュはそれに気づいて、手で来ないようにジェスチャーした。
「えっ!?」
すると、おばあさんにイリューシュからボイスチャットが入った。
「洋子さん、G区画の海岸に向かってください。ひろしさんたちが苦戦しています」
「え、あ、はい! わかりました! すぐに行きます!」
おばあさんはイリューシュの指示に急いでG区画の海岸へと走った。
ー G区画の海岸 ー
G区画の海岸では、突然砂浜に現れた数体のドラガにおじいさんたちは苦戦を強いられていた。
ドラガはホワイトドラゴンの最終形態で異常な攻撃力を持っていた。
アーボンはマラツンたちと一緒にドラガの気を引きながら逃げ回り、おじいさんと大熊笹と茂雄は攻撃のチャンスを伺っていた。
そして一度やられてリスポーンしたマラツンの後輩たちは、激減したステータスで逃げ回りながらマラツンに言った。
「マ、マラツンさん!」
「おれら、一度リスポーンしたんで」
「もう、限界……、っす……」
それを聞いたマラツンは満面の笑顔で答えた。
「みんなアーボンさんの教えを忘れたか!? 必ず強い人が助けに来てくれる! 走れ! 頑張るんだ!! そして強い人が倒してくれたら、おれらの勝利だ!!」
「はい!」
「そうですね!」
「っすよね!」
するとその時、アカネが1体のドラガの隙をついて背負投げを繰り出した。
「やぁぁぁ!」
ズバン!
それを見逃さなかったアーボンは、アカネが投げて動けなくなったドラガを斬りつけた。
「いまだ! お前ら全力で攻撃だ!」
「「「はい!!」」」
アーボンとマラツンたちは一番攻撃力が高い武器で一斉にドラガを攻撃した。
ズバズバズバ!
さらにアーボンはドラガに抱きついて動きを封じると、大声で叫んだ。
「おれはHP大丈夫だから、みんな攻撃してーー!!」
それを聞いたおじいさんは、火薬玉を立て続けに投げつけ、アカネと大熊笹は出現させられるだけの豪炎の壺を爆発させた。
ドゴォォオオオオ!!
さらにアーボンもメチャクチャに剣で攻撃すると、とうとうドラガは消滅していった。
シュゥゥゥウウ……
それを見たアカネは親指を立てると、うれしそうにアーボンに言った。
「アーボン、ナイス! やるじゃん!」
「お、おう!」
すると大熊笹もドラガの一体を投げて、なんと袈裟固めで動きを封じた。
大熊笹はドラガの動きを封じると、アーボンに言った。
「アーボンさん、お願いします!」
「はい! 今行きます!」
アーボンは全回復薬を一気に飲み干すと、両手剣に水晶の粉をふりかけて雷属性を付与した。
バチバチバチッ!
そしてドラガの急所の一つを何度も突き刺した。
ドスッ! ドスドスドス!
バリバリバリバリ!
「6万超えの攻撃力をくらえ!」
ドスドスドスドスドスドス!
バリバリバリバリバリバリ!
シュゥゥゥウウ……
アーボンがドラガの急所を何度も突くと、ドラガは静かに消滅していった。
アカネと大熊笹がドラガたちと距離を取ると、今度はおじいさんがドラガたちに火薬玉を投げつけた。
シャァァァアアア……ドガン!
シャァァアアアア……ドゴン!
グォォオオオ!!
ドラガたちは、おじいさんの攻撃で少し後ろへ下がると、そこへおばあさんたち、スマイル道具店のメンバーがやってきた。
ナミは即座にララガのお母さんを召喚して走らせると、おばあさんが氷の魔法で牽制した。
キィー……ン
ズガガガガガガガ!!
そして、そこへララガのお母さんが火の粉を吐くと、ナミはみんなに響き渡る声で言った。
「みんな、ふせて!」
そこに居た全員が伏せると、ララガのお母さんはバク転をしながらドラガたちに着火した。
チュッ……
ドゴォォォオオオ!!
しかしドラガたちはHPを減らしたものの、ゆっくりと歩いてきた。




