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第12話 ひろし、一旦休憩

 ー ピンデチ ー


 G区画とH区画を警戒しているおじいさんたちの所へ、野球のテスト試合でキャッチャーをしていたマサが仲間を連れてやってきた。


 マサはおじいさんを見つけると、嬉しそうに話しかけた。


「ひろしさん! 先日はどうも」


 おじいさんはマサに気づくと笑顔で答えた。


「あぁ、これはマサさん! 先日はありがとうございました!」


「いやぁ。ひろしさんベスト・ピッチャー賞だもんな。まじでカッコ良かったよ」


「いえいえ、そんな。マサさんのリードのお陰です。ははは」


 おじいさんが嬉しそうに答えているとアカネがマサに尋ねた。


「みんなどうしたの?」


 するとマサは後ろの仲間を親指で指しながら答えた。


「こいつらは黒のメンバーの精鋭(せいえい)でさ。おれらは翠さんの指示で、みんなのメシの時間を交代して回ってるんだよ。みんな腹減ってるだろ?」


「まじで!? そうそう、お腹すいてたんだよ」


 アカネがそう言うと、マサはおじいさんに言った。


「ひろしさん、ここはおれらが守ってるんでログアウトしてメシ食ってください」


 それを聞いたおじいさんは頭を下げながら答えた。


「これは助かります。ありがとうございます、マサさん」


「いえいえ、夜はおれらも加勢するんで」


 するとマサは大熊笹やアーボンたち周りの仲間たちにも言った。


「みなさん! この後もお願いしたいんでログアウトしてメシ食ってきてください! ここはおれらが守るんで!」


 こうして、おじいさんたちは一旦ログアウトして夕飯をとることにした。


 ◆


 その頃、タケチはおばあさんたちに土下座をして謝っていた。


「本当に申し訳けありません! 僕がグレートリセットなんて言わなければ!」


 しかし、おばあさんたちは困ったように答えた。


「いいえ、悪いのはさっきの人ですものね」

「そうだよ」

「タケチさん悪くなくない?」

「ぅん」


 すると哲夫がタケチの腕を引き上げながら言った。


「先程の敵たちはタケチさんを倒そうとしました。それはタケチさんも被害者だという事です」


 哲夫の言葉に和代も続いた。


「そうですよ。タケチさんは1人で勇敢に敵と戦ったんですから。格好良かったですよ」


 タケチはおばあさんたちの言葉に言葉を詰まらせた。


「み……、みなさん……。うっ……、ううっ……」


 ブゥー……ン


 するとその時、1人の大司教がタケチの近くに転移してきた。


 それを見たおばあさんたちは即座に戦闘態勢を整えると、その大司教は両手を広げて敵意がないことをジェスチャーし、頭を下げた。


 しかし、おばあさんたちは警戒を解かずに武器を構えていると、転移してきた大司教が自己紹介を始めた。


「こんばんは。私はマガイルーを拠点とするゴースト。友人の黒ちゃんさんからの紹介で参りました」


 おばあさんたちは「黒ちゃん」という言葉に安心して武器を下ろすと、ゴーストは少し笑顔を見せて話し始めた。


「先程、黒ちゃんさんから大司教の敵が現れたと聞き、加勢に参りました。もしまた現れたらお任せください。風の最高魔法で倒しましょう」


 ゴーストは片手を胸に当てて会釈すると、ゴーストの話を聞いていたメイがゴーストに尋ねた。


「あ、えっと、ゴーストさん、聞いていい?」


「はい」


「わたしも大司教なんだけど……」


「おお、なんと。そうでしたか」


「あの……、風の攻撃魔法ってどうやって出すの?」


「ファッ!?!?」


 ゴーストは思いもよらない質問に思わず甲高(かんだか)い変な声を出すと、メイは「?」な表情でゴーストを見つめた。


 ゴーストはハッとして冷静さを取り戻すと、メイにわかりやすく説明を始めた。


「ええと、大司教さん……」


「あ、わたしメイ。よろしくね」


「あ、はい、すみません。ええと、メイさん」


「うん」


「おそらく大司教の杖を持っていると思うのですが、その杖に風の魔法をセットしてみてください」


「杖?」


 メイはアイテム欄を見て即答した。


「わたし、僧侶の杖しか持ってないかも」


「ファァァッ!?!?」


 ゴーストは予想を遥かに超える答えに、マイケ◯ジャクソン並のハイトーンで驚いた。


 しかし、ゴーストは冷静さを取り戻すと、メイに尋ねた。


「メイさん。大司教の杖はお持ちではないと……」


「うん、そうみたい。でもモーニングセットは持ってるよ」


「ええと……、モーニングスターですね」


「あ、そう! それ」


「申し訳ないのですが、モーニングスターでは防御魔法陣しか発動できないのです」


「あ、そうだったんだ。どーりで攻撃魔法ができないワケだ。はは」


「そ、そうですね……」


「っていうか、ゴーストさんは攻撃魔法できるんだよね?」


「え? あ、ええ」


「そしたら、教えてもらえたり……、する?」


「あ、ええと、はい。もしご希望なら」


「ほんとに!? やった! 教えてほしい!」


 メイはゴーストに走っていくと、ゴーストの両手を掴んで喜んだ。


「ゴーストさん、ほんとお願い! わたしもみんなの役に立ちたいんだ! 一番強いやつ教えて!」


 それを聞いたゴーストは感心しながらメイに言った。


「メイさん、素晴らしいお考えですね。ではこのゴーストが全力で授業をしましよう」


「え? 授業?」


「はい。大司教の最高魔法『ウィンド・ブッチャー』を獲得するにはマガイルーの魔法学校で筆記試験を受け、100問中90問正解しなければなりません」


「……えっ?」


「さあ、今から始めましょう!」


 ゴーストはそう言うと、アイテム欄からホワイトボードを出現させた。


 そして目をキラリと輝かせると、ホワイトボードに数式を書き始めた。


 スラスラスラスラ……


 そして笑顔で振り返ると、メイに説明を始めた。


「メイさん、まずは空気が移動する時に起こる物理法則の数式がこちらです」


 メイは暗号のような数式を見ながらポカンとしていると、ゴーストはそれを察して分かりやすく説明を始めた。


「ではメイさん。もし、メイさんが長さ1mくらいの大きなウチワを振るとしたら、軽いですか? 重いですか?」


「え、1mのうちわ? ええと、ちょっと重いかな」


「はい、正解です。メイさん、素晴らしい!」


「え、素晴らしいの? やば! はじめて勉強で褒められたかも!」


 ゴーストは現実世界では有名な塾講師で、説明する事と褒める事が上手だった。


「ではメイさん、空気中で1mの長さの棒を振るのと、1mのウチワ振るのを比べるとどちらが軽いですか?」


「え? 棒を振る方がめっちゃ楽じゃない?」


「正解! さすがメイさん。それが空気の抵抗です」


「え、ほんとに!? やば、わたし勉強できるかも!」


 メイが嬉しそうにすると、おばあさんたちもゴーストの授業に釘付けになっていた。

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