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異世界転生数秘術〜転生するのはあなたです〜  作者: Z.KEY
XNo.45&46 ソフィア&クレイス編
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8/19

プロローグ〜役目を終えた器たち〜

 ――終わりは、静かに訪れた。


 白銀の神殿。蒼い月光。誰もいなくなった広場。


 その世界は、かつて多くの人々で賑わっていた。


 剣士が駆け、魔術師が詠唱し、旅人たちが笑い合う。空を渡る飛竜の影に歓声が上がり、夜の酒場では冒険譚が語られていた。


 だが、それも遠い昔。


 長い年月の果てに、人々は去った。


 ある者は別の世界へ。ある者は現実へ帰り。ある者は、二度と戻らなかった。


 そして最後に残ったのは、“器”だけだった。


 プレイヤーが、この世界で生きるための肉体。


 魂を宿し、冒険するための分身。


 プレイヤーの意識が離れれば、その器は本来、ただの空白へ戻るはずだった。


 感情も、意思も残らずに。


 ――本来なら、そのはずだった。


 けれど。


『ありがとう』


『ずっと一緒に旅してくれてありがとう』


『お前が一番好きだった』


 積み重ねられた言葉。向けられた感情。共に過ごした膨大な時間。


 それらは、空っぽだった器の内側へ、少しずつ何かを残していった。


 別れを惜しむ感情。誰かを守りたいという願い。また旅をしたいという想い。


 いつしか器は、“自分”を持ち始めていた。


 その変化を見つめる存在があった。


 果てなき光。始まりも終わりも持たぬもの。無数の魂を見下ろす、遥か高みの意識。


 それは静かに、役目を終えた器たちへ手を差し伸べた。


 ――新たな世界へ行きなさい。


 ――今度は、“誰かのための存在”ではなく。


 ――あなた自身として。



 浮遊感。


 最初にソフィアが感じたのは、それだった。


 身体が軽い。風に抱かれているような、不思議な感覚。


 次いで、柔らかな光が瞼を透かした。


「……ここ、は……?」


 ゆっくりと目を開く。


 そして彼女は、息を呑んだ。


 空だった。


 どこまでも広がる蒼穹。視界を埋め尽くす白い雲海。透き通る風。遠くを漂う無数の浮遊島。


 純白の大地の中央には、途方もない太さの巨塔が貫くように存在していた。


 ソフィアが立つ大地そのものが、塔の外周から広がっているのだと理解するまで、少し時間がかかった。


 見上げても、塔はなお上へ続いている。


 雲海の上にいるはずなのに、その頂は見えなかった。


「……綺麗……」


 思わず、そんな言葉が漏れた。


 ソフィアは白い石畳の上に立っていた。塔の外周から広がる純白の大地。


 街路樹の葉は淡い銀色を帯び、建物は神殿のように白く、空へ向かう橋が浮遊島同士を繋いでいる。


 静かだった。


 だが、死んだような静けさではない。


 穏やかで、澄み切った静寂。


 地上の嵐など届かない、天空の楽園。


「……私、転生したんだ」


 自然と理解できた。


 記憶は残っている。


 かつての世界。長い旅。誰かと共に歩いた日々。


 けれど最後の瞬間だけが曖昧だった。


 サービス終了の光景。消えていく景色。ログアウトしていく人々。


 そして――誰もいなくなった世界。


 あの後、自分はどうなったのか。


 それは分からない。


 ただ、ひとつだけ確かなことがあった。


「……終わって、なかったんだ」


 ソフィアはそっと、自分の胸に触れた。


 鼓動がある。


 温もりがある。


 自分は今、確かにここにいる。


 その時だった。


 淡い光が、彼女の足元へ広がった。


「え……?」


 幾何学模様の円陣。


 白銀の光で描かれたそれは、静かに回転していた。


 ソフィアが驚いて見つめる中、円陣の中央がゆっくりと暗く染まる。


 まるで空間そのものが穴になったようだった。


「なに、これ……?」


 恐る恐る近くの小石を拾い、穴へ落としてみる。


 音もなく消えた。


「……収納?」


 不思議と理解できた。


 これは、自分の力だ。


 どこか別の空間へ繋がっている。


 物をしまい、取り出すための場所。


「……すごい」


 試しに意識を向ける。


 すると先ほどの小石が、光の輪の中からふわりと現れた。


「本当に出てきた……」


 驚きと同時に、奇妙な安心感が胸に広がる。


 自分は無力ではない。


 この世界で生きていくための力を与えられている。


 その事実が、心を落ち着かせた。


 ふと、遠くから鐘の音が聞こえた。


 澄んだ、高い音。


 白い街並みの向こうで、人々が行き交っているのが見える。


 翼を持つ船が空を渡り、白衣の神官たちが橋を歩き、鎧姿の冒険者たちが笑いながら通り過ぎていく。


 知らない世界。


 けれど、不思議と恐怖はなかった。


 ソフィアは昔から、どこへ行っても誰かと打ち解けることができた。


 旅先でも。戦場でも。見知らぬ街でも。


 だからきっと、この世界でも大丈夫だと、どこかで思えた。


 彼女は風に揺れる金髪を押さえながら、巨大な白い塔を見上げた。


「……行こう」


 その碧眼には、不安よりも期待が宿っていた。


 終わったはずの旅路の先で。


 役目を終えた器は、“ひとりの人間”として歩き始める。


 白き天空の世界で始まる、新たな人生。


 ソフィアは、その第一歩を静かに踏み出した。

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(ただし、リクエストよりも占いの結果の方が強い為、リクエストが占いの結果に沿うように歪められる可能性があります)
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