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第247章 村の拡大と、新たな食材との出会い

第247章 村の拡大と、新たな食材との出会い


グレン村は、もはや「村」という言葉では収まりきらない規模へと成長していた。

人口は五万人を突破し、街道には人と馬車――いや、今では偽装バスが行き交い、

モノレールの車両が静かに村の中心部を滑るように走り抜けていく。


すすむは、村長からの依頼を受け、

従業員宿舎Dの増設、店舗街Aの一部を住宅に転用する工事、

新たな住宅区画の整備など、毎日のように能力を使って建物を生成していた。


「……これ、もう都市計画だよな。」


すすむは、村役場の12階建て庁舎の屋上から、広がる街並みを見下ろしながらつぶやいた。

高層ホテル群、海軍学校、ダンジョン直結の巨大リゾート、

そして新たに建てた住宅棟が整然と並ぶ。


マリーが隣で心配そうに見つめる。


「すすむさん、最近ずっと忙しいですよね……。

 あまり無理をしないでください。」


「大丈夫だよ。むしろ、こういう時こそ僕の能力が役に立つんだから。」


そう言って笑うが、マリーは気づいていた。

すすむの目の下に、少しだけ疲れの影があることを。


そんなある日の夕方。

グレンインの前で、すすむとマリーが買い物袋を抱えて帰ってくると、

玄関前に、腕を組んで仁王立ちしている男がいた。


赤茶色の髭、筋骨隆々の体格。

鍛冶屋であり、現グレン冒険者ギルドギルマスター――ギルバートだ。


「おう、すすむ。忙しいところ悪いな。」


「ギルマス? どうしたんですか?」


「ちょっと話があってな。家に上がってもいいか?」


マリーが慌てて玄関を開ける。


「ギルバートさん、どうぞ。お茶を淹れますね。」


ギルバートは遠慮なく靴を脱ぎ、どっかりとソファに座った。


「最近忙しいという話を聞いたが、大丈夫か?」


「まあ、いろいろとありましたが、大丈夫です。」


「そうか。ならいいが……今日は提案があってきたんだ。」


「ギルマスが提案? 珍しいですね。」


「おう。最近ギルドに入荷するモンスター量が増えてきていてな。

 中には美味い食材もあるんだよ。」


すすむは首をかしげた。


「モンスター食材……ですか?」


「そうだ。ギルド産の食材、すすむのホテルで出してみないか?」


マリーが驚いたように目を丸くする。


「ギルバートさん、モンスターのお肉って……食べられるんですか?」


「食えるどころか、うまいぞ。

 ほら、オーク肉とか、スライムゼリーとか、サハギン肉とかだな。」


すすむは思わず固まった。


(スライム……ゼリー……?)


ギルバートは続ける。


「最近、冒険者が増えたからな。

 ダンジョン産の食材が安定して入ってくるようになった。

 ホテルで使えば、客も喜ぶし、ギルドの収入にもなる。

 悪い話じゃないだろ?」


すすむは腕を組んで考えた。


確かに、ホテルの食材はほとんど自分が生成している。

品質は安定しているが、この世界特有の食材を使う機会は少ない。

冒険者ギルドの食材が安定供給されるなら、

ホテルのメニューに“異世界らしさ”を加えることもできる。


「……わかりました。

 ギルマス、冒険者ギルドに直接行って、食材を見せてもらえますか?」


「おう、いつでも案内するぞ。」


★★★★★


数日後。

すすむはマリーと共に、グレン冒険者ギルドを訪れた。


受付に入ると、ミーナがぱっと顔を上げた。


「すすむさん! ギルマスから聞いてます。すぐ呼んできますね!」


ほどなくして、ギルバートが現れた。


「よし、案内するぞ。ついてこい。」


ギルドの奥へ進むと、解体班の作業場に出た。

ここは、すすむが提供した冷凍・冷蔵設備が整備されている場所だ。


巨大な冷蔵庫の扉を開けると、冷気がふわりと流れ出た。


「ここが、モンスター食材の保管庫だ。」


中には、見慣れない肉の塊や、透明なゼリー状の物体、

青い魚のようなものまで並んでいる。


ギルバートが一つずつ説明していく。


「これがオーク肉だ。豚肉に近いが、旨味が強い。

 こっちはサハギン肉。海産物だな。刺身でもいける。

 アースバード肉は鶏肉に似てるが、脂が少なくてヘルシーだ。

 グレイパイソン肉は、煮込みにすると絶品だぞ。」


マリーは興味津々で見つめている。


「すごい……こんなに種類があるんですね。」


ギルバートはさらに続けた。


「スライムゼリーは、甘味料にも使える。

 ダークツリーの実は、酒のつまみに最高だ。

 ウォークバンブーの根は、煮物にすると香りがいい。」


すすむは、冷蔵庫の中を見渡しながら言った。


「……これは、試してみる価値がありますね。」


ギルバートが満足そうに笑う。


「だろ? ホテルで出せば、客も喜ぶぞ。」


すすむは、食材をいくつか受け取り、調理学校へ向かった。


キッチンスタジオでは、学生たちが実習中だったが、

すすむが入ると、皆が驚いたように姿勢を正した。


「すすむさん!? 今日はどうされたんですか?」


「ちょっと、新しい食材を試したくてね。

 ギルド産のモンスター食材だよ。」


学生たちの目が一斉に輝いた。


「モンスター食材!? すごい!」

「調理してみたいです!」

「どんな味なんだろう……!」


ミーシャ副校長も駆けつけてきた。


「すすむさん、これは……新しい実習ですか?」


「ええ。ホテルのメニューに使えるかどうか、試してみたいんです。」


すすむは包丁を握り、オーク肉をまな板に置いた。


「じゃあ、まずはオーク肉からいこうか。」


キッチンスタジオは、一気に熱気に包まれた。


オーク肉を焼くと、香ばしい匂いが広がる。


「……これは、豚肉よりも旨味が強いな。」


サハギン肉を茹でてみると、魚肉のような味わいと弾力があった。


「刺身はやめておこう……加熱した方が良さそうだ。」


アースバード肉は、ハーブと塩でローストすると、

鶏肉よりも軽く、上品な味わいになった。


スライムゼリーは、砂糖と果汁を混ぜて冷やすと、

ぷるぷるとした透明なデザートに変わった。


「これ……普通に売れますね。」


ミーシャ副校長が感心したように言う。


すすむは、完成した料理を見ながら静かに頷いた。


「これなら、ホテルの新メニューとして十分使える。

 ギルマスにも報告しないと。」


マリーは嬉しそうに微笑んだ。


「すすむさん、新しい料理が増えますね。」


「うん。グレンの発展に、また一つ新しい要素が加わるよ。」


こうして、グレン村の食文化に新たな革命が始まろうとしていた。

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