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第245章 庶民のための宿を

第245章 庶民のための宿を


帝国軍の侵攻を退け、王都での報告とホテル建設を終えた翌日。

すすむは久しぶりにグレンの空気を吸い込みながら、湖のほとりに立っていた。


戦いの緊張が解けたせいか、湖面を渡る風が心地よい。

しかし、すすむの頭の中には、次にやりたいことがすでに浮かんでいた。


(……そろそろ、やってみたいな)


これまで、すすむが建ててきた宿泊施設は、

高級旅館、リゾートホテル、クラシックホテル、ビジネスホテル――

どれも質の高いサービスを提供するものばかりだった。


だが、ふと気づいたことがある。


(この国の人たち……もっと気軽に旅行したいんじゃないか?)


帝国の侵略騒ぎはあったものの、王国全体の経済はむしろ活性化していた。

グレンの発展に伴い、観光客は増え、商業も活気づいている。


しかし、一般市民が気軽に泊まれる宿はまだ少ない。


(高級ホテルもいいけど……庶民が気軽に泊まれる“低価格ホテル”も必要だよな)


すすむは湖の水面を見つめながら、静かに決意した。


「よし……ここに建てよう」


湖のほとり。

リゾートホテルの近くでありながら、少し離れた静かな場所。

家族連れや学生、庶民の旅行者が気軽に訪れられる立地だ。


すすむは地面に手を触れ、念じた。


――低価格ホテルA、出現。


柔らかな光が広がり、10階建てのホテルが姿を現した。


外観はビジネスホテルに近いが、どこか温かみのあるデザイン。

湖畔の景色に溶け込むように、落ち着いた色合いでまとめられている。


すすむはゆっくりと中へ入った。


「……おお、これは」


中に入った瞬間、すすむは思わず声を漏らした。


ロビーは広く、天井も高い。

低価格ホテルとは思えないほど、照明や家具が豪華だ。


(……これ、元は高級ホテルだったやつだな)


すすむは苦笑した。


このホテルAは、元々別世界で業績不振だった高級ホテルを買い取り、

低価格ホテルとして改修したものだ(と言う設定)。

そのため、設備は豪華なまま残っている。


フロントの奥には、売店やゲームコーナー、カラオケルーム、卓球室まである。


「これ……子どもたち喜ぶだろうな」


すすむは微笑んだ。


さらに奥へ進むと、温泉エリアがあった。


大浴場のほかに、家族で1時間借りられる“家族風呂温泉”もある。

プライベート空間で温泉を楽しめるため、家族連れには嬉しい設備だ。


(低価格なのに、ここまで豪華でいいのかな……まあ、いいか)


すすむは次にレストランへ向かった。


レストランはバイキング形式。

80分交代制で、広いホールにはテーブルが整然と並んでいる。


(アルコール一杯無料……これは嬉しいサービスだな)


すすむはメニュー表を見ながら考えた。


「価格は抑えつつ、ちょっと贅沢な料理……」


寿司、カレー、餃子、揚げ物フェア。

子どもから大人まで楽しめるメニューを揃えることにした。


(こういう“ちょっといい食事”が、旅行の楽しさなんだよな)


客室は洋室が中心で、ベッドが並ぶシンプルな作り。

しかし、和室も選択できるようにしてある。


すすむはホテル全体を見渡し、満足げに頷いた。


(よし……これなら、庶民でも気軽に泊まれる)


すすむはホテルのロビーに戻り、ダレス、アゼリー、グラントを呼び出した。


三人はすぐに駆けつけ、ホテルを見上げて驚いた表情を浮かべた。


「すすむさん、これは……新しいホテルですか?」


アゼリーが目を丸くする。


「そうだよ。低価格で、庶民が気軽に泊まれるホテルを作りたかったんだ」


すすむはホテルのコンセプトを説明した。


「この国は今、観光需要が増えている。でも、高級ホテルばかりじゃ、一般の人は泊まりにくい。

だから、こういう“気軽な旅行”を楽しめる場所が必要だと思ったんだ」


アゼリーは感心したように頷いた。


「なるほど……確かに、こういうホテルなら家族連れも来やすいですね」


グラントも腕を組みながら言った。


「俺も家族を連れて泊まりたいっすね。

温泉もあるし、ゲームコーナーもあるし……子どもが喜びそうだ」


「そういうコンセプトだからね」


すすむは笑った。


「いずれはガストンやエレニアにも建てたいと思ってる。

この国全体が、もっと旅行しやすくなるように」


ダレスは真剣な表情で頷いた。


「すすむさん……このホテル、必ず成功しますよ。

私たちも全力で協力します」


「ありがとう。頼りにしてるよ」


三人は力強く頷いた。


ホテルの運営準備はすぐに始まった。


ダレスは設備管理のチェックを行い、

アゼリーはレストランのメニュー構成を考え、

グラントは警備体制の整備を進めた。


すすむはその様子を見守りながら、湖畔の風を感じていた。


(……これでまた、グレンが一歩前に進む)


帝国の侵略を退けた後でも、すすむの仕事は終わらない。

むしろ、平和だからこそ必要なものがある。


人々が笑い、楽しみ、安心して暮らせる場所。

そのためのホテル。


すすむは静かに湖を見つめた。


(次は……どんなものを作ろうかな)


湖面に映る空は、どこまでも澄んでいた。

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