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おーちゃんのはなし

 知らないフリをしていた。

 運命の番だなんて馬鹿げてると思ってた。

 おれにとってはたっちゃんが運命だと思っていた、から。


 あっくんに告白された時はひどく戸惑った。

 目が合うと心拍数は上がり話しかけられるだけでぞわぞわと体が疼き出す。


 Ωの体は単純で嫌になる。


 ……本当は、本能でαを求めていたのかもしれない。それをきっと、おれよりもたっちゃんが理解していたのだろう。



 *



 今更だ。

 たっちゃんを責めるつもりはない。

結局のところおれとあっくんはとても上手くいっていた。

 初めの方こそほぼ無理やり番にされて癇癪起こしてあっくんに当たってばかりでいたがそれも全部彼の包容力で宥められていって。いつのまにか、気づいたら。

 あっくんにしか目がいかなくなっていた。これが運命の番? 強く惹かれ合ってるから? おれがΩだから?

 あんなに。あんなにおれはαのことが嫌いでたっちゃんだけのはずだったのに。


 運がいいのか悪いのか周りの人間はおれら2人以外はみんなβだった。Ωだからこんな単純なのか、おれがただ単に単純なのかを相談する相手もいなかった。


 一度たっちゃんと話したことがある。「こんなあっさりあっくんを好きになるとは思わなかった」と。


「ずっとたっちゃんのことしか考えられないと思ってた。……だからあっくんと番になっても最初は泣き喚いて上手くいかなかったけど……今はもう、おれの相手はあっくんしか」

「……」

「……おれ何言ってるんだろ、たっちゃんに……何、言って……おれ今、たっちゃんのこと友人としか思って……!」


 自分で信じられなかった。無意識に好きな人ではなく友人として話していた。だけど今更。意識を変えようと思っても今のおれにはもうあっくんしかいなかった。


「おーちゃんどうしたの? 泣いてるの? ……悩みがあるなら聞くよ? ……あっくんと喧嘩でもしたの?」

「え……?」


 全くの見当違いな言葉。

 そうか。たっちゃんはもう、おれがたっちゃんを好きだったことを忘れさせようとしてるんだ。たっちゃんから一切そんな仕草がなくなればおれはきっと今後全て彼と過ごした記憶が抜け落ちていくのが目に見えてしまった。


「ああ、あ……」

「おーちゃん?」

「ごめんなさい……! たつやごめん……! こんな、こんなおれをずっと好きでいてくれて……っ」

「……。……」

「……あの時の『嫌い』って言葉、撤回する、から……っ」

「……」

「おれ、ずっと、たつやのこと、ずっと」

「おーちゃんはあっくんのこと大好きだもんねえ〜」

「……、」


 ああ、もう。言わせてもくれないのか。

 おれはお前に何も返してやれないのに。


『あっくんと番になって』

『幸せになって』


 唯一出来るのはあっくんと幸せになる過程を見せていくことか。


「……。あっくんと喧嘩したらたっちゃんに相談する」

「うん。わかったぁ」


 たっちゃんは優しく笑った。

 おれの大好きな笑みだった。




『大好きだったよ、おーちゃん』




おれも大好きだった。

優しすぎた、おれのβ。

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