βは凡人のβ
『運命の人が現れたらどうする?』
『何言ってるの。お前のことだろ』
『え! めっちゃ嬉しいこと言ってくれる……!』
『……αになんか屈しない』
ほら、とこちらに伸ばされる手。握れば嬉しそうに微笑んで2人一緒に歩いてく。デートして、家に送ってバイバイする前にキスをして。
「おーちゃん、好き!」
「……おれ、も」
顔を真っ赤にしながらそう伝えてくれるおーちゃん。本当に可愛くて、綺麗で。ずっと一緒にいようって心に決めていた。明日も明後日も、ずっとずっと、
「……夢、か……」
目覚まし時計の音で現実に引き戻される。
あれから半年は経っただろうか。
おーちゃんはあっくんと上手くいっている。もう僕のことなんか思い出すことなんかないだろう。
その分、夢に出てくるなんて。キミは最後まで優しくないね。
*
「……たっちゃん?」
「ん?」
「……最近元気ないな。……何か悩みでもある?」
学園祭の準備。ぼーっとしてたらあーちゃんに声をかけられた。わずかな変化に気づくなんて、さすが頼れる幼馴染だ。でも今は少し厄介かなあ。
「あー、ちょうどいいところに! たっちゃん。ちょっとこっち来て手伝って〜」
「はーい」
たまたま側を通りかかったあっくんに助けられた。なんでもお見通しなんだな。やっぱ敵わないや。
「おーちゃんには適当に言っておくから。……ほんとに顔色悪い。今日はもう帰りな」
「……うん」
背を向けて歩き始めて。回れ右してもう一度あっくんに声をかける。
「あっくん」
「ん?」
「おーちゃんはもう僕のことなんとも思ってないだろうけど。僕はまだまだ、未練がましく、忘れられそうになんてなくて」
「……うん」
「でもおーちゃんが幸せになるなら僕はなんだってするし、我慢出来ると思う。……でも」
「……」
「……あっくんがおーちゃんを不幸にしたら許さない」
「……」
「絶対、絶対ぜったい、許さない、んだからぁ…!」
目の前のあっくんがボヤける。誰もいなくてよかった。こんなところおーちゃんには見せられないから。信じられないくらい大声で泣いた。僕の気持ちを理解出来るのはあっくんくらいしかいなかったから。
絶対に叶わない恋のライバル。
「わかってる」
「……」
「たつやの大事な人を俺は奪った。生半可なつもりで番にしたわけじゃない」
「……」
「約束する。何があってもおーちゃんと一緒にいる。おーちゃんを守る。幸せにする」
「約束、だよ」
「うん。約束だ」
あっくんはどこまでもカッコ良かった。純粋に彼になら任せられると思った。
『運命の人が現れたらどうする?』
『何言ってるの。お前のことだろ』
『え! めっちゃ嬉しいこと言ってくれる……!』
『……αになんか屈しない』
おーちゃんと手を繋いだ。キスした。喧嘩した。仲直りした。恋人繋ぎになった。夜を共に過ごした。朝を一緒に迎えた。好きだと伝えた。何度も伝えた。おーちゃんも好きだと言ってくれて、笑った顔が大好きで、もう一度キスをして、
「……またゆめ、か……」
一般人βの憂鬱
おわり




