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セカンドハーフ~夢の後半戦~  作者: ふぉるせ
5章

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96/100

5

 扇大高校サッカー部のキャプテン桜井さくらいが咽び泣く中、度會わたらいたちに見せてきたのは、動画投稿サイトGoTubeで活動するバーチャル配信者、猫芝ねこしばけまりと言う女の子キャラクターの動画だった。

 ()()によりスマホを持たず、ネットサーフィンもあまりしたことがない度會は、見せつけられた画面の右下に映る、猫耳を生やした可愛らしいキャラクター(?)をじっと見つめ、再度桜井を見る。


「なんだこの猫耳つけた女の子は。口がパクパク動いてる」

「猫芝けまりたそも知らないのか……」

「た、たそ……?」


 なぜか桜井が今まで以上に信じられないものを見るような面持ちで、困惑する度會を見ている。


「猫芝けまりたそは登録者10万以上を越える大人気個人勢サッカー配信特化型の現役女子高生バーチャルGoTuberなんだ!」

「わからんわからん。早口すぎてまったくわからん」


 度會からすれば呪文のような事を一気に話され、理解が追いついていない様子だ。


「日本サッカー協会公式アンバサダーでもあり、日本サッカーのみじゃなく、海外サッカーの情報やサッカーのゲーム実況、またそれに伴うサッカー愛と嘘偽りないサッカー知識と視聴者との掛け合いで、サッカーを知ってる人ならだれもが知っている大人気GoTuberなんだぞ!?」

「あー……そういう設定の、アニメのキャラクターなのか……?」

「アニメキャラじゃない! GoTuberだ!」

「お、おう……」


 桜井の怒涛の早口に、度會が引いている。

 続いて度會は助けを求めるように、後ろにいる駒野場サッカー部の味方を見渡す。


「えっと……有名なのか、この娘?」

「え、ああ、まあ。GoTubeでサッカーのハイライトとか見てると、結構出てくるよな」「俺、チャンネル登録してる!」「グッズ持ってるわー」


 などと、意外と有名人(?)なようで、知っている人が多いみたいだ。頼みの綱の三國みくには知らなかったと首を横に振っていたが。


「その、なんだ。けまりたそさんが今回の事件で何か言っていたのか? アニメの声優さんが、台本で?」

「台本とか言うな! ちゃんと実在するから! あと、猫芝けまり、と言う名前!」


 桜井がぐいと迫るようにして言ってきて、度會は「す、すまん……」と謝る。


「生配信の視聴者のスパチャの質問で、扇大高校の毒を盛った件についてどう思いますかって質問が来てて……。選手に非はないけど、サッカー界としては言語道断ですね、って言われちゃったんだ……。もうおしまいだぁ……」


 まるでこの世の終わりの様な表情をして魂が抜けていく桜井に、度會はなぜか自分が悪くないはずなのに物凄く申し訳なさそうな気持ちになりかける。


「そ、そうか。選手に非はないとは言ってくれてるけど、すごい、ショックを受けたんだな……」

「うんうん……。最近引っ越しとかで中々配信出来てなかったみたいで、引っ越しがひと段落したタイミングでの生配信をやるって楽しみにしてた矢先に、これだよ……」

「ええっと……」


 度會が再度後方にいる駒野場サッカー部の面々を、助けを求めるかのようなまなざしで見る。


「ここはキャプテンらしく……味方に指示をですね」

「いつも通り、フィールド上だと思って、大きな声で指示を出しましょう、キャプテン……」

「がんばれ、度會キャプテン」

 

 最終的に三國にも言われ、度會ははぁと深く息をつく。


「じゃあ……駅前のハンバーガーショップにでも一緒に行くか、桜井……? その……いや、話を聞こうじゃないか……」

「あ、ありがとう……キャプテンっ!」

「お前もキャプテンだろ……」


 この後桜井により、今をときめく話題のサッカー特化型GoTuber、猫芝けまりの魅力を散々と聞かされることになる、苦労人キャプテンの度會であった。

 そんな度會たちとは別に、先に帰路についていた涼宮透すずみやとおるは、自宅マンションの前に引っ越し業者のトラックが停まっており、作業員が荷物を台車に乗せて運んでいく様子を見た。


(引っ越し業者の人が女の人なの、珍しいな……。女性専用の引っ越し業者なんて、あるのかな……)


 筋骨隆々の逞しい男の人が引っ越し業者なイメージがあったため、作業している人が軒並み女性なのが珍しく、内心で思っていた。それにしても運んでいる荷物も段ボールに収まりきらない、身長以上はある大きな白い仕切りの板であったり、何か高級そうな機材であったりと、目につくようなものばかりだ。


「ええっと……」


 マンションの入り口でエレベーターの乗り口が分からないでいる様子の引っ越し業者の女性の人に、透は前に進み出てエレベーターを開けてやる。


「あ、ありがとうございます!」

「何階ですか?」

「ありがとうございます、9階です!」

(お、同じだ……。じゃあ隣の人の引っ越し業者か。ちょっと気まずい……)


 わざと階段で行こうかと思ったが、どっちみち玄関先ですれ違うことになるので、そのままエレベーターに乗り込んでいく透であった。何より9階まで階段を足で登るのは、サッカー部の練習帰りの疲労では、とても辛いものがあるのだ……。

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