2
ミーティング終了直後から早速、決勝戦の陽光白崎を想定したトレーニングを開始する駒野場高校。得てしてターンオーバーとなった一昨日の扇大高校との闘いを制し、スタメン組は前節出場できなかった無念を晴らそうと、気合を入れて練習に取り組む。そこには北平と戦う前のような、どうせ練習しても意味がない、と言ったような空気は少数派になるほど、県大会出場を前にして駒野場サッカー部の意識も変わりつつあった。
「はぇー。初戦シードで、2回戦目に出場した中心選手が1年生? 主力温存しておいてそれで5-0かぁ」
選手たちの練習を見守っていた鷲田は、神楽坂の調べた情報を見て、驚嘆している。諸事情有れど初戦1-0、2回戦を2-1で、試合内容もギリギリと言うものを辛くも突破してきた駒野場にとって、5-0で勝利と言う記録自体が雲の上の様な存在だと感じるのも少々に、まるで新1年生を試す練習試合のような感覚で地区予選に臨んでいる事からも、強者の余裕が窺える。
「試合に出場していた1年生の中でも、FWのワントップについていた、神宮司奏多くんと言う男の子は、前半でハットトリックを決めています。今大会の現状の得点王ですね」
「ワントップでハットトリックか……。普通ワントップって言うのは複数得点した時点でマークが厳しくなって、得点は難しくなるのが常だけど、それでも前半で3得点。相手のマークやDFをもろともしない、本物のエースストライカーってやつだね」
鷲田はあごに手を添えて、驚いていた。
続いて神楽坂は、自身のタブレットを細い指先で操作し、ある動画投稿サイトを開く。
「昨年の県大会出場校だというのもありまして、陽光白崎高校の試合の動画は動画投稿サイト、GoTubeにもアップされています」
青いアイコンに白い矢印のようなマークがモチーフの動画投稿サイトは、今やそのサイトに投稿された動画につく広告費で稼ぐGoTuberと呼ばれる人もいるほどの、人気サイトだ。
そこでは再生回数もそこそこの、観客席から見た試合の様子がタイトル『圧倒的! 陽光白崎高校5-0で勝利!』と言う物凄く大きな字幕のサムネイルで投稿されていた。
その動画は試合がハイライト風に編集され、陽光白崎高校が得点するシーンが切り取られてあげられている。
「本当に1年生だらけだな……。そして彼が、神宮司奏多くんか……」
得点シーンはセットプレイのフリーキック、流れからのパス回しでの得点、相手DF陣をずたずたにするドリブル突破での得点、まさに3点セット盛りだくさんのレパートリーでのハットトリックだ。
コメント欄でも『この1年やば』『普通に日本代表行ける』『埼玉レベル高ぇ』『俺のが上手いやろ』と言ったコメントが付いている。最後の謎の関西弁に小首を傾げたものだが。
「相手も主力を温存してたんじゃ、俺たちと環境は互角ってわけか。それに神宮司くん以外にも化け物揃いだな、こりゃあ」
「中学校の時にもU-15日本代表に選ばれていたそうです。出身中学は、柳瀬川第七中」
「あ、そこって確か、御子柴達樹くんと同じとこじゃない?」
「そうですね」
神楽坂も今気が付いたように、ハッとなって顔を上げた。
「動画見てても凄すぎて逆にわからないから、ここは歴史の生き証人に直接聞こうじゃありませんか」
鷲田はどこか楽し気に、練習中の達樹を呼んでいた。




