27 駒野場高校 1:1 扇大高校
前半が終わり、ロッカールームに監督とマネージャーを含めた18人が集まる。
後半戦に向けた、ミーティングを行っていた。
前半のうちに同点に持ち越せたのは大きく、その立役者である達樹は、仲間たちとタッチを交わしていた。
ベンチメンバーはドリンクやタオルを用意し、それをスタメン組に手渡していた。透と遥人も、その役目だ。
「蓮見、スタミナは持つか?」
「おう! 全然ごりごり余ってるぜ!」
「さすがだ」
透が翔に声を掛ければ、翔はガッツポーズをして笑顔を見せる。汗はだらだらとかいているが、肩で息をすることもしていない。
「見事な前半だった。同点に持ち越せているだけでも素晴らしい内容だ」
鷲田が選手全員を見渡し、そう声を掛けている。
「前半で相手の弱点だったサイドは突破出来ましたが、向こうも途中からフォーメーション変更してきましたね」
神楽坂がホワイトボードの敵陣を張り替えつつ言う。
鷲田は頷き、達樹に問いかけた。
「御子柴、マークは厳しくなったか?」
「ええ、まあ。強引に突破も出来るかもですが、奪われるリスクもあります」
「OK。じゃあ、チャンスがあれば仕掛けてくれ」
続いて鷲田は、翔に目を向ける。
「ナイスランだ、蓮見。後半もその調子で頼む」
「はい!」
そして鷲田は、ホワイトボードを睨めっこするかのように見る。後半から5バック気味となった相手をどう崩すか、考えているようだ。
難しい、とは思う。達樹は前半の活躍からマークが厳しくなり、かつDFラインまで下りてきて守備も行わなければDFラインが崩壊する。翔は無尽蔵のスタミナと並外れた脚力で相手の囮となる動きは十二分にこなせているが、パスの出し手がいない。
そして大前提、ビルドアップはまともに機能していないと言っても差し支えないだろう。不安定すぎる守備が、パスを繋いで前線に送るといった基本的な攻め方が行えないのだ。よって、達樹の個人技による得点が唯一のチャンスであった。
「両サイドがダメなら、中央突破でどうです!?」
翔が閃いたと言わんばかりに手を叩いて言うが、鷲田は苦笑する。
「それが簡単に出来たら苦労はしないよ……。相手ボランチのキャプテン、桜井くんが味方に細かく指示を出している。北平とは違って、よく統率されていると思う。中央突破も難しいし、それこそ奪われたら一気にカウンターを喰らう」
北平の時は相手キャプテンのコミュニケーション能力につけ込んで見事に勝利をおさめたが、確かに鷲田の言う通り、扇大はキャプテン桜井を中心に、よく統率が取れている。
――だからこそ、気持ちのいい真剣勝負を臨んでいる相手のはずが、卑怯な真似を使ってまで勝ちに来ると言う失望感も、多少なりともあった。
相手に期待するなと言われてしまえばそれまでだが、翔の純粋でひたむきな情熱を前にすると、顕著のようであり、悔しくもある。
(相手チームの選手だって、こんな戦いを望んでなんか、きっといないはずだ……)
透はうつむき、相手チームの監督である毒島の姿を回想する。きっとこれは、奴の独断専行に違いないと、確かな確信を抱いていた。




