23 駒野場高校 0:1 扇大高校
開始早々の数分で失点を許した駒野場高校。鷲田はすぐにキャプテンの亘と、御子柴達樹を呼んでいた。
「亘、あの失点は気にするな。それよりは声を出して、DF陣をしゃきっとさせろ。お前は2年なんだからもっと自信を持ってプレイしていい。普段ベンチなんだからとか、そういうのは気にするな。今はお前が、駒野場のキャプテンだ」
「は、はい……!」
開始早々の失点という事で自信を失いかける亘に、鷲田は優しくもあり、厳しくも声を掛けていた。
続いて鷲田は、戦術的なアドバイスを、達樹にする。
「御子柴、中盤付近まで下りてきて、ボランチまではいかないけど、オフェンシブハーフの役割を任せたい。相手はこの後も攻撃を続けてくるだろう。ボールを出来るだけ循環させ、サイドに流してプレイしてくれ。中央が厚い分、サイドは緩みが目立っている。あわよくばサイドから突破を仕掛け、どうにかチャンスを生かしてほしい」
「はい!」
「試合はまだ始まったばかりだ。行けるぞ!」
「「はい!」」
一方、そんな鷲田の指示をすぐそばで聞いていた雪乃遥人が、隣に座る涼宮透に声をかける。
「鷲田先生、こう言っちゃなんだけど、体育の授業の時はいつも適当そうなのに、あれを見るとやっぱりサッカー部の監督なんだなって」
「サッカー部の時も結構適当だけど」
「……そ、そうなんだ……」
「でも、監督としては本当に尊敬している」
「涼宮くんがそう言うなら、間違いないね!」
「そこ、聞こえているぞー?」
気づけば、ニコニコと食えない笑顔を見せている鷲田が目の前で立っており、透と遥人は慌てて姿勢を正していた。
試合は駒野場高校のボールから再開される。
FWにつく達樹と翔は、小声で会話をしていた。キックオフを除き、この試合でお互い一度もボールに触っていない。
「蓮見。監督からの指示だ」
「お、なになに?」
達樹がそっと、翔の耳元に顔を寄せて、
「とにかく思いっきりボールを追いかけろ。得意だろ?」
「犬か俺はっ! 俺もDF手伝った方がよくねーか?」
「まあプレスは掛けられるだけ掛けてくれ。でもお前の本領はCFで点取りだ。その分のスタミナは残しておけよ?」
「ふふふ……。俺、スタミナには自信あるんで!」
翔は自分を指さして、得意げに笑っていた。
それを見た達樹も、幾らか緊張がほぐれたように、思わずふっと笑っていた。
「お前はそうだったな。まだ1失点だ。これから逆転するぞ!」
「当たり前だ! 2戦敗退なんて、ありえねーからな!」
「相変わらずの謎の自信だな……」
主審の笛が吹かれ、翔のキックオフで試合は再開される。




