24 駒野場高校 0:1 扇大高校
試合再開直後。最前線からやや下がった位置に移動した達樹が、翔のパスを受け、さらに後方にボールを下げる。先ほどは中盤以下のパス回しで追い込まれ、ボールを奪われてしまった。しかしそこに達樹が加わることにより、彼を中心にパス回しを開始。
「御子柴!」
「こっちだ! パス!」
達樹の、同年代からすれば頭一つ抜けた優れたプレイにより、ようやく駒野場イレブンはボールを保持できるようになる。
「やっぱり御子柴は上手いな。2,3年生が相手でも、ほとんど互角に渡り合えている」
ベンチでその様子を見ていた透が呟く。皮肉なことに周囲が1年生だらけという事もあり、その違いは益々顕著だ。
「蓮見!」
達樹が前線の翔にボールを通そうとスルーパスをするが、それは流石に相手にカットされてしまった。ほぼほぼワントップ気味の翔に向けて、相手DFを掻い潜ってパスを通すのは容易ではなかった。
「相手は殆ど控えメンバーだ! 臆せず攻めろ!」
相手ベンチの監督、毒島がそのようなことを叫ぶ。
「おいおい。控えってわかってるんなら少しは手加減してほしいもんだねぇ……」
鷲田が苦笑していた。
「ま、全力でお前たちには勝たなくちゃいけないんだけどね。……サッカーの為にも」
鷲田の横顔からは、並々ならぬ意思を感じる。
達樹が中盤まで下りてきてフォローをするが、それでも埋められない圧倒的な差。なまじ北平高校と言う強豪校と戦った後では、やはり彼らのレベルは一つ劣るが、それに比例するかのようにこちらの動きもままなっていないのは事実だ。結果として状況的には、1点を追うこの試合の方がはるかに難しい内容となってしまっている。
「っち、どうにかして突破しないと……!」
達樹はサイドにボールを展開し、味方とのワンツーで相手MFを突破。
さらには個人技で、横から向かって来たもう一人のMFをドリブルで躱す。観客がいれば、歓声が上がっていただろう。
「御子柴! こっちだ!」
翔が降りてきて、達樹のフォローに入る。
「蓮見!? 馬鹿お前、こんなところに来てどうする!?」
「ボール追いかけろつったのはお前だぜ!? それに、お前が持ちすぎて全然こっちまでボール来ないんだよ! だったら自分から行くまで!」
「相変わらずフリーダムすぎるんだよお前は!」
でも、と達樹は苦し紛れに微笑む。
「今は助かった!」
翔とパス交換を行い、達樹はさらに扇大のディフェンスラインに侵入。この試合初めての、駒野場のチャンスだ。
「くそっ! さっきからあの19番はちょろちょろと!」
相手DFは翔の動きに気を取られており、ディフェンスラインはかなり乱れている。
「いいぞ御子柴、蓮見!」
達樹の突破を好機と見た駒野場のMFも好機と見て攻撃参加。
「サイドを強引に突破しただと!? マークつけ、みんな!」
相手のキャプテンの桜井は前のめりになっていた味方たちに声を掛けつつ、自身は達樹を食い止めようとブロックに入る。
「っく!」
「やらせるか!」
さすがの達樹でも、3人に囲まれると突破は難しい。ボールを桜井によるスライディングで奪取され、桜井はすぐに態勢を立て直し、前線にロングボールをパスする。
攻勢一転、前に出すぎてしまった駒野場のMF陣をあっという間に飛び越え、相手FWは駒野場のDFとの競り合いにも勝ち、ボールを足元に収めてしまう。
「も、戻れ!」
亘が懸命に指示を出すが、やはりワンテンポ遅れてしまう駒野場のDF陣。
「まずい!」
「貰ったーっ!」
扇大のFWが身体を反転させ、シュートの姿勢をとるが、
「――おらぁっ!」
いつの間にか自陣に戻ってきていた翔が相手の斜め後ろからカットイン。
「はっ!?」
扇大高校のシュートは飛び出した翔の胴に当たって防がれ、ボールは駒野場のMFの足元へ。再び駒野場の攻撃が始まった。
「19番のポジションはいったいどこなんだよ……っ!」
これには扇大高校のキャプテン、桜井も戸惑っているようだった。




