22 駒野場高校 0:0 扇大高校
ロッカールームを出て試合会場である扇大高校の屋内グラウンドへ。そこは、初戦の北平高校との決戦の舞台とは何もかもが真逆の光景が広がっていた。観客席、なんてものはそもそも存在しておらず、あるのはピッチとタッチライン下のベンチのみ。観客や部外者は一切おらず、無観客試合のフィールドとなっていた。
「異様な雰囲気だな……。誰も観客がいないはずなのに、なんだか、ずっと誰かに見られているような気がする」
ベンチに座る透が無機質なはずのドーム状の壁を見つめて言う。
「こ、怖い事言わないでよ涼宮くん……」
ベンチメンバーとして隣に座る遥人が怯えている。
試合前になってようやく、相手のオーダー表とベンチメンバーが発表された。相手のキャプテンはボランチの桜井と言う3年生で、ホイッスル直前の布陣を見る限り、4-3-3のフォーメーションを敷いてくるようだ。
「攻撃的な布陣だ。前半から攻勢を仕掛けてくる可能性が高い……」
鷲田はそう呟き、センターサークルを挟んで隣にある敵陣のベンチを見やる。
「おとなしく試合放棄をしていれば、無様を晒すこともなかったというのに」
こちらには聞こえないような声量で、扇大高校の監督である毒島は呟いていた。
前半開始のホイッスルが、吹かれた。キックオフは駒野場イレブンからで、前半は鷲田の指示通り、相手の出方を伺うように守備的なフォーメーションで挑む。
「パスを回せ! 簡単にとらせるなよ!」
チームのキャプテンをするGK、亘の指示を受け、主にDFとMFを中心にパスを回し、扇大高校の選手を躱そうとする。練習でも行っていたパス回しだが。
「――貰った!」
「ああ!?」
相手選手が駆け寄ってきたところに不用意な速度のパスを出してしまい、それをカットされ、ボールを奪われてしまう。やはり急造チームかつ、普段試合に出ていない、1年生を中心とした控えメンバーが中心。それに比べれば、相手チームは2,3年生を中心とした、熟練の連携が取れた動きを見せるチーム。こちらもそれを踏まえて連携面の強化を図った練習を続けてきたが、いかんせん時間が足りていなかった。
「駄目だ! 早すぎる!」
「今のはお前のマークだ!」
「早く戻れ!」
駒野場イレブンのDF陣はあっという間にラインを崩され、難なく扇大高校のオフェンスメンバーに突破を許してしまう。
「亘先輩!」
「……っ!」
最終ラインを瞬く間に突破され、相手FWが亘の前でパスを行い、亘の姿勢を崩す。
「なっ!?」
「弱すぎる!」
走り込んできたもう一人のFWによるシュート。亘が崩され、DF陣もほとんど戻っておらず、がら空きのゴールにボールが蹴り込まれる。ゴール。あっという間に、扇大高校に先制を許してしまった。




