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扇大高校との決戦を翌日に控えた土曜日。
ミーティングルームに集まった16名の駒野場高校サッカー部員たち。正面モニターの画面が起動すると、そこには自宅のベッドらしき場所で座っている、駒野場高校のジャージ姿の度會の姿が映されていた。
ひとまずは元気そうなキャプテンの姿に、駒野場サッカー部員たちは安堵の表情をしていた。
モニターに映る度會は、申し訳なさそうな表情をしながら、声を出す。
『悪いなみんな……。こんな大事な時に、胃腸炎なんてなってしまって……』
しかし、と度會は顔を上げる。
『日曜の試合は、ここからでも応援している。行けないのは悔しいが、必ず勝ってくれ。頼むぞみんな』
「「「はい!」」」
何よりも悔しいのは、絶対に出たいはずなのに出ることができない度會たち上級生のスタメン組の方である。彼らの無念を胸に、16名の駒野場サッカー部員たちは団結力を高めていった。
「……今更だけど、今回の集団食中毒が扇大高校の仕業かもしれないって、みんなに言っておいた方がいいのかな……」
ロッカールームでみんなには聞こえないようにぽつりと呟く遥人に、透は首を横に振る。
「まだそうと決まったわけじゃないし、言わないでおいた方が良いと思う」
それに、と透は練習着に着替えながら、
「俺たちに大事なのは次の試合に確実に勝つことだから。変な動揺を広げて、バタバタするつもりはない」
「簡単そうに言うんだね……。それに、あんな罠を仕掛けておいて」
「あれは、もしかしたら今後の捜査に協力できるかもしれないって考えたから。それに俺の第一目標は、雪乃を何としてもサッカー部に入れることだったから」
「僕はそれにまんまと引っかかった、と」
遥人は苦笑しつつ、自身も練習着に着替えようと、上半身のジャージを脱いだ時だった。
「……」
「あ、あまり見ないでよ……恥ずかしいじゃないか……!」
透が上半身裸となったこちらをじっと見つめているのに気が付き、遥人は慌てて自分の身体を隠すようにぎゅっと腕を寄せる。見られて自慢できるような身体ではない、はずだが。
「いや、すまない。でも、痩せてきたよね?」
「え……」
「筋肉もついてきてると思う。駒野場市の裏道をよく知ってるみたいだったし、早朝の工場の前の事もよく知っていたし、大方、ランニングでもしているのか?」
「……涼宮くんには、まるで全てを見透かされているみたいだ」
ずばずばと指摘され……あと、さりげなく痩せていると言ってくれたことが、嬉しかった照れ隠しもあるが、遥人はこそばゆい気持ちを感じて、言っていた。
「その通りだよ。僕も、普段からサッカー部員として頑張っている涼宮くんたち三人を見てて、何かに頑張らなくちゃって思ってたんだ。サッカー部に入ったのも、今思えば、最初の一歩が出なかったんだ。勇気がなかったと言うべきなのかな」
遥人はうっすら筋肉が出てきた上半身をもう隠すことなく、着替えをしつつ答え始めた。
「でも、あの時は口では嫌だって言ってたけど、本当は涼宮くんが誘ってくれてとても嬉しかったんだ。自分から進めない僕の背中を押してくれたみたいで」
「雪乃……」
「結果論だけど、サッカー部に入れて良かったよ。涼宮くんのおかげだ、ありがとう」
そして、と遥人は自分のロッカーを閉め、透の元まで歩み寄り、右手を掲げた。
「次の試合、絶対に勝とうね? 僕に出番があるかはわからないけど、真剣勝負のはずのサッカーに、あんな汚い真似をするなんて、僕は許せない」
「……俺もだ。一緒に頑張ろう」
透と遥人は、お互いの右手でタッチを交わしていた。
いよいよ明日は決戦の日。地区予選2回戦だ。サッカーを守るためにも、絶対に勝たなければならない。




