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翌日の駒野場高校サッカー部の平日最後の合同練習。今日と明日の練習を以って、いよいよ二回戦の扇大高校との決戦に臨む。フィールド上で今日も今日とて練習を行っている。
「ぱ、パス!」
「あれ!?」
「どんまいどんまいー」
「しまっていこう―」
チーム立て直し当初よりは形にはなってきている連携面。個々の差は当然あれど、当初よりは戦えるチームはできつつある。
だが、問題はそこではない。そこでは、ないのだ……。
じっと生徒たちを見ていた鷲田は、いよいよ、ぼそりと、口を開く。
「いや、なんか、増えてね? 人、増えてね?」
明らかに自分が記憶していた人数より一人増えてる気がする。
鷲田が慌てて隣に立つ神楽坂に聞いてみると、彼女は眼鏡をそっと、指で押し。
「この時期、部員が自然と生まれがちです。大切に育てて、花を開かせましょう」
「部員ってそんなピ〇ミン的な概念だったっけ!?」
当然でしょう、と言わんばかりの神楽坂に鷲田は盛大に突っ込んでいた。
「遅れましたが、こちら、新入部員の入部届です」
「逆じゃない!? 普通順番逆だよね!?」
「日曜日までになんとしてもメンバーを補充する必要があったので、急いでユニフォームと練習着も準備いたしました」
「そこは……相変わらず優秀だよね」
鷲田はやれやれと肩を竦めつつ、入部届の紙を見る。きちんと、親のサイン入りだ。
「雪乃遥人くんか。クラスは1-A。……この子は確か、体育の授業のサッカーで涼宮くんにラストパスを出していた子か……」
面白い、とでも言いたげに含み笑いを零し、フィールド上を見る。
その視線の先にはSBの位置につき、激しいトランジションに喰らいつき、芝生の上を走る新入部員遥人と、彼からパスを受け、ボールをさらに繋げる動きを見せる透の姿があった。
「……君の周りには面白い人材が良く集まっているね……」
「何か言いました?」
「いやなにも。さぁて、日曜の試合に向けてまた戦術も考え直さないとな」
一転して鷲田はどこか上機嫌となり、楽しそうに考え事をする仕草を見せているのであった。
一方、フィールドの上で遥人は駒野場サッカー部の練習着を着、SBとしてチームの全体練習に加わっていた。
「ハアハア……。鍛えてるつもりだったけど、やっぱり本物のサッカー部は凄いな……」
汗を流し、ピッチを掛ける敵味方双方を見つつ、遥人は小さくない感動を味わっていた。
「僕がサッカー部の一員として、みんなと一緒に戦っている……!」
その視線の先には、MFとしてトップ下ポジションに就く涼宮透の姿があった。
昨日放課後、サッカー部に入っていた事にされた遥人。もちろんあの直後の帰り道、透から詳細な説明は受けた。人手が足りなく、2回戦出場自体が、危うかったこと。だがそれを聞いても、遥人は実感がわいていなかった。
――僕なんかが入っても、球技も苦手だし、きっとみんなの足手まといになる。
だから言ったのだ、数合わせだったら、協力すると。
だが、透はその提案に対し、首を横に振っていた。
――数合わせじゃなく、チームメイトとして、なんだと。
初めての感覚だった。誰か他人に、自分が必要とされているこの感覚は。茜空の下、差し込んだ夕日に照らされ、こちらを真剣な表情で見つめてきた透の顔は、今も色濃く残っている。
そして彼の表情は、フィールドの上でも同じだった。サッカーと真剣に向き合っている、あの表情だ――。
「――雪乃?」
「わぁあああああ!?」
気が付けば、透が真横に立って声を掛けてきていて、遥人はびっくり仰天する。
「もう、驚かすのはやめてって!」
「え……。普通に声かけながら近づいたんだけど……」
「それが気付けないんだ!」
「やっぱ存在感ないのか、俺……」
ただチームとして戦術の話をしたかったのに、と切ない表情をする透であった。




