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神楽坂の依頼により、涼宮透は二回戦出場の為の残り一人のチームメンバーをスカウトしに、着替えをして鞄を持ち、制服姿で放課後の廊下をやや小走りで歩く。向かったのは、1-Aの教室だ。放課後であったが、何名かの生徒は残って何かをしており、しかしその生徒たちに透が求める人物の姿はなかった。
「涼宮じゃん。もうサッカー部の練習終わったのか?」
こちらに気づいてくれたクラスメイトの男子が声を掛けてきてくれた。
「そんな慌てた様子でどうしたんだ?」
「雪乃遥人を探してて。もう帰っちゃった?」
「雪乃か? アイツ確か部活入ってないし、もうさすがに帰ったんじゃないか? ここにはいないぞ」
「そうか、ありがとう!」
透は礼をして、教室を後にした。
透は続けてその足で、急いで下駄箱のある場所まで向かう。雪乃の上履きはまだ下駄箱になく、校舎内にいることを物語っている。
「まだ校舎の中にいる……。ここで待っていてもいいけど、なんか気まずいな……」
今まさに下校中の生徒が上履きと靴を入れ替えている最中、この場にずっと立って待ち、そんな人々の邪魔になるのも忍びない……。
透は後ろに下がりつつ、周囲をきょろきょろと見渡す。
(あれは……)
廊下の奥の方。ちょうど、駐車場へ続く一階の連絡通路とつながる吹き抜けの場所に、見覚えのある後ろ姿があった。
間違いない、雪乃だ。思いのほかすぐに見つかってツイてたと内心で思う一方、あんなところにこそこそ隠れるようにして立って何をしているのか、という疑問も沸く。
透はすぐに彼の元に駆け寄り、後ろから肩に手を添えつつ、声をかけた。
「雪乃、何を見ているんだ?」
「――わぁあああああ!?」
慌てて振り向いた雪乃は、透の顔に向かって両手を掲げ、首を絞めてくるんじゃないかと思うほどの勢いで迫ってくる。
「お、落ち着いてくれ、俺だ、涼宮だ」
「す、涼宮くん!? あ、相変わらず気配を消すの上手だね……」
(それは普段影が薄いという事か……)
内心でショックを受ける透と、なぜかホッとしている様子の雪乃であった。
「よ、よかった、涼宮くんで……」
「雪乃に用があって……。こんなところで何してたんだ?」
「あ、えっと、その……!」
慌てて呼吸を整えるように、雪乃は一呼吸入れて、しかし腹から声を出すように、振り絞って、
「今は上手く説明できないんだけど、駒野場サッカー部の集団食中毒事件に関係することで、知ってるかもしれないことがあって!」
「……っ」
雪乃の背中の方、駒野場高校の駐車場から車が出ていくエンジン音が聞こえる。公立校の駐車場にはおおよそ不釣り合いな、高級車のような野太いエンジン音を轟かせて。




