14
鷲田が毒島と面会しているその時、駒野場高校サッカー部は練習メニューをこなし、休憩時間をとっていた。
「えー。じゃああと一人いないと、そもそも試合すら出られないんですか?」
水をごくごくと飲みながら、翔が神楽坂に聞く。
「はい、そうなんです……。大会の規定では、必ずベンチメンバーを含めて16人登録しないといけないようで……」
「神楽坂先輩の友達に、サッカー上手な男子いないんですか?」
翔が何の気なしに聞いていたのだが、神楽坂は硬直していた。
「とも、だち……。男子の、とも、だち……?」
普段、あれほどまでに優秀でてきぱきと動いている神楽坂の思考が全て停止したかのように、うわ言のようなことを復唱してしまっている! 恐るべし、翔の一言!
「ぎ、逆にあなた達の中で、サッカー部に助っ人として来てくれそうな人はいませんか? 1-Aは初戦でベンチメンバー3人も出した、人材の宝庫だと睨んでいますので」
「そ、そんな宝の山みたいなこと言われましてもね……」
すっ、とずれた眼鏡を掛け直しながら聞いてくる神楽坂に、達樹が髪をかきながら苦笑する。
「大方もう部活入ってる人だらけですし、思いつきませんね……」
「……」
一方で、サッカーボールの上に右足を乗せて、じーっとそんなやり取りを聞いていた透は、徐に挙手をする。
「俺、心当たりあります。もしかしたらサッカー部に助っ人で入ってくれそうな人」
「おっ! 涼宮の紹介なら間違いないな!」
翔がガッツポーズをしてる。
達樹もおお、と反応し透を見た。
そして神楽坂も、まるで藁をも縋るような表情と勢いで、透に声を上げた。
「本当ですか、涼宮くん」
「はい、来てくれるかは、まだわかりませんけど」
「ぜひお願いします! これで日曜の試合も安心して臨めます」
「ですから、まだ来てくれるかは、わからなくて――」
「よっしゃあ! これで試合できるな! やったぜ!」
「あ、あの……」
翔が喜んでいる。
「ああ。危うく試合すらできないかと思ったけど、首の皮一枚繋がったな!」
「……」
達樹も喜んでいる。
……どうやら、是が非でもスカウトを成功させなくてはいけなくなってしまった。まあ無論、こちらとて今の緊急事態を打開するためにも、追加招集を何としても成功させるつもりはあった。
「では、早い方がいいですよね? もう試合まで何日もないですし」
透が神楽坂に尋ねると、神楽坂はうんと頷いていた。
「はい。今日の練習は涼宮くんだけ休んでもらって、その人のスカウトをぜひお願いします。鷲田先生には、私がきちんと事情を説明します」
「……はい」
そうして透は今日の練習を一足先に切り上げ、その人物のスカウトに向かうのであった。




