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日曜日に迫る、地区予選トーナメント二回戦に向け、駒野場サッカー部は屋内練習場で練習をしていた。相手校の扇大高校に乗り込んで行うことになるので、向こうも屋内の芝のグラウンド。ピッチの条件でも、駒野場の屋内練習場は合致していた。
条件はイーブン。問題は……。
「ぱ、パス!」
「あれ!?」
「どんまいどんまいー」
度會や三國と言った主力組を失った、駒野場サッカー部は、控え選手中心での試合を余儀なくされている。いわば急造チームであり、その練習期間も一週間未満となってしまっている。当然、公式戦レベルとは言い難い。
「鷲田監督」
慣れない面子との連携面で、ピッチ上にて悪戦苦闘する部員たちを見守る鷲田に、神楽坂が険しい面持ちで声をかける。
「その神楽坂ちゃんの表情は、良い報告じゃなさそうだね」
横目で神楽坂を見た鷲田は、その表情でいろいろと何かを察しているようだ。
「ご明察の通りです。さすがですね」
「いや、できれば良い報告が良かったんだけど……」
鷲田はがっくしと肩を落とす。
神楽坂はタブレットを見つつ、
「大会の規定を確認したのですが、選手のコンディション保護とけが防止の為に、必ずベンチメンバー含めて16人は出場選手を登録する必要があります」
「えっと、今ピッチの上にいる選手は、ひぃ、ふぅ、みぃ――」
「15人です。あと一名、足りません」
「ぐは……」
鷲田は胸を押さえ、倒れ込むようなジェスチャーを見せる。
このままでは試合メンバーが足りず、不戦敗の危機もあった。
「さすがに病床の部員を無理やりベンチに置くわけにもいかないもんな」
度會あたりは這ってでも来そうな勢いであるが、そうはさせるわけにはいかない。彼らは今はゆっくり休んでもらって、身体を治癒してもらうのが最優先事項だ。
「……」
何を思ったのか鷲田は、神楽座をじっと見る。
見られていることに気づき、神楽坂がきょとんと首を傾げるが。
「神楽坂ちゃん。試合出る? 男装して」
「何を馬鹿なこと言ってるんですか」
「先生に馬鹿って言った!? 馬鹿って言った方が馬鹿なんだもん!」
冷静に返され、鷲田は涙目になっていた。
「ま、まぁ登録選手の事は一旦置いておくにしても、今いるメンバーも絶賛苦戦中だなぁ……」
頭痛を感じるような仕草で、鷲田は頭に手を添える。
「……でも、諦めたくはないです。せっかく初戦を突破出来ましたし、不戦敗なんて形で負けてしまうのは、サッカー部のみんなが可哀そうです」
神楽坂が自身のタブレットをぎゅっと抱きしめるように力をこめ、ピッチ上で練習に励む駒野場サッカー部員たちを見渡して言う。
「それは俺もだよ。わざわざ負けるつもりもないからね」
鷲田もまた、最後まで諦めていないように、言っていた。何より、今のところは不確定情報なのもあり選手たちに説明はできないが、どうしても負けられない、負けるわけにはいかない理由が、今の駒野場にはあった。扇大の悪事を、食い止めるためにも。
『鷲田先生、来訪の方がおられます。至急、面談室までお越しください』
少ない人員と残されたわずかな時間で練習を行っていると、急に校内放送で鷲田先生が呼び出されていた。
「ちょっと行ってくる。みんなは引き続き、日曜の試合に向けて練習していてくれ」
鷲田は何事かと、急いで学校の面談室に赴くのであった。




