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小雨の木曜日、インターハイ地区予選トーナメント第二回戦まで、残り4日。とりあえず朗報としては、昨日以降新たな発症者は出ていない。通常胃腸炎は潜伏期間があって発症するのだが、サッカー部の食堂が臨時閉鎖された以上、潜伏期間も一通りすぎ、新規感染者のスパイラルは終わったと言えるだろう。ちなみに今回の件が通常生徒の学食にも影響を及ぼしており、学校自体の食堂、売店も臨時閉鎖されている。その原因となった駒野場サッカー部の集団感染も、校内で小さくないニュースとなっていた。皮肉なことにそれが、地区予選トーナメントを戦う駒野場サッカー部の知名度が一時的に上がる要因ともなっていた。
「できれば活躍で有名になりたかったんだけどなー……」
渦中の人の一員となった翔も、面白くなさそうにしている。いつも明るく前向きな彼であるが、やはりサッカープレイヤーとしてのプライドはある。こんな形では有名になりたくなかったようだ。
そんな翔に、透はそっとペットボトルに入った水と食料品を差しだす。
「え、どしたの涼宮?」
「いつも購買の菓子パンとか、食堂でご飯食べてたから。食堂のご飯ならともかく、菓子パンはあまり身体によくないから」
透は翔に昼ご飯を買ってきてあげていた。タンパク質多めの、健康的なメニューだ。
「涼宮……いいのかよ、これ」
「うん。逆にてっぺん目指すなら、今からでもちゃんとした物を食べてだな……」
「お金……」
「友達に飯を奢るぐらいのお金はある。どんだけ貧乏だと思ってるんだ……」
……まあ、余裕があるわけではないが。しかし今は状況が状況だ。
「ありがとう! 俺これ、一生大事にする!」
「一生って……気持ちは嬉しいけどできればその日のうちに食べてくれ。腐るから」
机の上で食べ物を抱きかかえる翔に、透は冷静に突っ込んでいた。
「涼宮くんと蓮見くんは元気そうでよかった」
クラスメイトの雪乃遥人が声を掛けてくる。
「でもサッカー部、大変そうだね。学校中のニュースになってるね……」
日々話題に飢えている学生たちの間で、今やサッカー部の集団食中毒事件はいい話題のタネとなってしまっているのだ。
「なんだか、全然悪くないはずなのに、俺たちが申し訳なくなってくるな……」
透も気まずそうな表情をしていた。
「スタメンがいないからみんな負けるだろうとか言ってるけどさ、次の試合も絶対に勝って、実力で有名サッカー選手になってやる!」
翔は拳を突き上げて、クラス中に聞こえるほどの声量で宣言していた。
クラスメイト達はそんな翔を見て、笑い声をあげているのだが。
「駒野場高校サッカー部の次の対戦相手って、扇大高校だよね? 扇大市にある、私立校の……」
急に、小声で透の耳元に顔を寄せて雪乃が声を掛けてくる。
「? そうだよ」
「……」
透が返事をすると、雪乃は何か思うことがあるかのように、あごに手を添えて考え事をしていた。




