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静石の指示のもと、サッカー部の食堂は利用禁止となった。
病院での診察の結果がまとまっていない中、まだ断定はできないが、やはり状況的にも食堂で出されたメニューからの集団食中毒が原因と見てほぼ間違いないだろう。
「しっかし、最悪のタイミングだな……。試合まであと5日しかないってのに……」
サッカー部寮の通路を歩きながら、達樹が嘆いている。
「ていうか俺、めっちゃ食堂の飯食ってたけどなんで平気なんだ……?」
両手を頭の後ろに交差させながら歩く翔は、確かに昨日一昨日と、サッカー部の食堂で飯をたらふく食べていたのだが。
透がぼそりと、
「蓮見はやっぱり――」
「馬鹿って言いたいのか!? 今、馬鹿って言おうとしたよな!?」
「い、言ってない言っていない……まだ」
「まだってなんだよー!?」
喉の下で押し留めたはずの言葉が出てしまい、透は翔によってがしがしと身体を揺すられていた。め、目が回る……。
「遊んでる場合か? 度會キャプテンも三國先輩も間に合わないんだぞ。残ってるメンバーも、俺たち含めて補欠だらけだ」
5日後の試合を前にして、達樹がやれやれと肩を竦めていた。
そんな3人が歩いていると、通路の角から見慣れたジャージ姿の眼鏡の男がやってくる。
「――お、お疲れー。あれ、もう静石先生行っちゃったって感じ?」
「「「鷲田監督!」」」
そういえばいつもは必ずミーティングルームに集まる際はいたはずの監督の姿がなかった。どこかに行っていたのだろうか。
「てっきり、監督も胃腸炎かと思いました」
達樹が言うと、鷲田は笑っていた。
「俺は大人だから、君たちと違って稼いでるんだよ? もっといいもん食ってるって」
「「「じとー……」」」
「うん、わ、悪かった。だからそのジト目はやめてくれ……」
1年生トリオに揃ってジト目を向けられ、鷲田はぎょっとなっていた。
「何処かに行っていたのですか?」
透が尋ねる。
「ああ。ちょっと調べ物をね。それよりも静石先生からは聞いたかい?」
「はい。食堂のご飯で、食中毒が発生してる可能性が高いと」
「全く参ったねぇ……。度會キャプテンと三國副キャプテンまでやられちゃうなんて。それ以外の大切な部員も、せっかく北平高校を突破したというのに、スタメン組がほぼ壊滅状態とは」
鷲田はやれやれと肩を竦める。
「でも俺、諦めてませんよ! 日曜の試合、俺たちは戦います!」
翔が意気揚々と言えば、透と達樹も揃って頷いていた。
そんな1年生トリオをじっと見た鷲田は、うんうんと頷いていた。
「無論、俺も諦めてないよ。日曜日に向けて、戦術も組み直さないとね」
そう言って鷲田は、今いちど1年生トリオ一人一人を見つめ、
「君たちが健康なのは不幸中の幸いだった。日曜の試合、頼りにするよ」
「「「はい!」」」
じゃあ、俺は静石先生と話さなくちゃいけなから――。
鷲田はそう言って、その場を後にした。
「鷲田監督もまだ諦めてねぇ。明日から練習、また頑張らないとな」
「だな! 変なもん食うなよ御子柴ー?」
「お前にだけは言われたくねーよ!?」
(俺たちは……風邪ひかないんだろうな……)
やんややんやと言い合う二人を前に、透も同じ穴のムジナであったことを思い出し、それが良い事なのか悪い事なのか、しばし悩み考え、取り留めのない思いでいたのだった。




