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サッカー部のミーティングルームにやって来た駒野場高校の養護教諭、静石の発言に、マスク姿で集まっていた駒野場サッカー部員たちは注目する。
全員のマスク姿を見た静石は、一瞬目を見開いた後、手を叩いて爆笑し始める。
「なにみんなご丁寧にマスクなんてしちゃって! 可愛いんだけどー!」
大人の女性らしい余裕さを醸し出す彼女を前に、神楽坂がややムッとした表情を浮かべる。
「静石先生。事態は深刻です。一刻も早くこの状況を食い止めなければいけません……」
「わかってるよ。良い知らせと悪い知らせがあるんだ」
映画とかで聞いたことあるようなセリフを言いつつ、静石が胸元のポケットに手を入れ、なんとタバコを口に咥えだす。
すかさず神楽坂が「ここは禁煙です」と彼女の行為を制し、静石もハッと思い直し、バツが悪そうな顔をしてポケットから手を放す。
「いい知らせからでお願いします」
「まず今回高熱を出したサッカー部員のみんなは、命に別状はない。そしてこれは祟りでもなんでもなく、医学的根拠のある病状ってこと」
それを聞いたマスク姿のサッカー部員たちは安堵の表情を浮かべる。お守りも盛り塩も、必要なくなったらしい。
「で、次に悪い知らせだけど、週末の試合には回復は間に合わないだろう。どんなに早くても5日は安静にしなくちゃだめだ」
「そんな……」
つまり、今週末の扇大高校との試合はこの場に残ったメンバーで臨むしかなくなってしまった。
「医学的根拠のある病状って……? 何だったんですか?」
達樹が尋ねる。
「病者は漏れなく高熱を出した後、腹痛と頭痛を発症してる。喉の痛みや呼吸器系に問題ない事から、胃腸炎の典型的な病状だね」
「胃腸炎……」
「そ。そしてサッカー部員たち限定で発症している胃腸炎って事は、ウイルス性よりかは、細菌性だろうね。そこは病院の検査結果次第だけど、大方そっちだって目星は付いてる」
「ウイルス性と細菌性って、なにが違うんだ……?」
透の隣に座る翔が首を傾げる。
「ノロウイルスとかがウイルス性で、感染者から未感染者に感染しやすいやつ。一方で細菌性が、例えば鶏肉を生で食べたときとか、食事由来の菌で感染しちゃうやつだ」
そこら辺の知識に造詣がある透が、翔に説明してやっていた。
「食事起因……サッカー部で食事って……」
達樹が何かピンと来たように、目を見開く。
静石は一介の養護教諭という身分ながら、すでに確証は得ている様子で、はっきりと告げる。
「寮の食堂。そこで食った飯が、どうやら当たったみたいだね」
「なるほど……。スタメン組に病状が多かったのも、普段食堂を利用する人がそっちの方が多いからか……」
あごに手を添えて、透は呟く。
練習後の食堂利用は、1年生やベンチメンバー組はあまり利用することはなく、先輩たちが優先に使用することが多い。必然的にそこで、食事経由の感染症ならあたってしまう可能性が高くなるのだ。
「というわけで、ぶっちゃけ私の憶測の段階ではあるんだけど、消毒と検査とか諸々終わるまで、サッカー部は利用禁止ね。今それが残ったアンタたちが出来る最良の策ってわけ。いいわね?」
静石の言葉にサッカー部一同は頷いていた。




